« ルイヴィトン・パシフィックシリーズ、トーナメント方法・ラウンドロビン1組合せ発表 | トップページ | ルイヴィトン・パシフィックシリーズ 開幕! »

2009年1月29日 (木)

新アメリカスカップクラスはこうなる。トム・シュナッケンバーグへのインタビュー

世界のセーリング関連サイトでは、現在進行中のボルボ・オーシャン・レースと1月30日から始まるルイヴィトン・パシフィック・シリーズの話題で持ちきりですが、忘れてはならないのは、新しいアメリカスカップ・クラスルールが1月31日に発表されることです。

これに関し少し話は前後しますが、1月14・15両日、バレンシアのアリンギ・ベースにおいて、次回アメリカスカップへ正式にエントリーしている19チームの設計担当者が集まり、新ACクラスルールに関する会議を開催しました。

バレンシアをベースとするセーリング情報サイト(本当はブログなのですが、ブログというレベルを遥かに超えた情報量を誇っています)、バレンシア・セーリングが、新クラス制定を取りまとめているトム・シュナッケンバーグにインタビューしているので、その内容をお伝えします。

トム・シュナッケンバーグは長年アメリカスカップの世界に関わってきたニュージーランド人ヨットデザイナーであり、かつてはチーム・ニュージーランドのシンジゲートヘッドを務めていた人物です。

ラッセル・クールやブラッド・バタワースがアリンギに引き抜かれた際、一緒に移籍することを誘われましたが、彼はこれを断りニュージーランドに残ることを選択しました。その後主要メンバーがごっそり抜けたチーム・ニュージーランドのヘッドとして瓦解寸前のチームを建て直し、カップ防衛の為奔走しましたが、防衛に失敗した後、グラント・ダルトンらに半ば追い出されるような形でチームを離れていました。

その彼へ、アリンギが新しいACクラスの構想を立ち上げるに当って、全体の取りまとめ役としての大役が回ってきたのでした。

Valencia Sailing: Valencia Sailing talks to Tom Schnackenberg

---------------------

現地時間の1月15日、第33回アメリカスカップへエントリーしている全19チームのデザイナーたちはバレンシアのアリンギのベースに集まり、2010年に開催される大会(もちろんアリンギがニューヨーク州控訴裁判所で係争中の裁判に勝訴した場合の話だか)に使用される新しいアメリカスカップ・クラスボートに関する残された懸案の詳細を協議した。

Alinghi09cb_26977

そこで、バレンシア・セーリングは新しいクラスルールの策定作業を取りまとめているトム・シュナッケンバーグにインタビューを行った。

バレンシア・セーリング(以下VS): あなたは丁度新しいアメリカスカップ・クラスルールに関するデザイナー会議を終えたところですが、ルールは最終的に決定されましたか?

トム・シュナッケンバーグ(以下TS): いやまだだ。しかし完成には一歩近づいた。恐らく今月末までにあと3~4回協議を行って、最終的にまとめることができるだろう。そして1月31日に発表する予定だ。

VS: あなたは新ルール策定プロセス全体の責任者です。新しいACクラスのコンセプトはどういう方向へ持っていくつもりですか?

TS: よりエキサイティングであると共に、乗り手に対しスキルを要求し、かつスキルのあるものが有利になる方向となるよう考えている。ボートを速く走らすため懸命に闘う者にとっては、その努力が報われるものになるだろう。本当に素晴らしいレースを繰り広げられるようなクラスとするのはもちろんのこと、同時に1年前に発表したAC90よりずっと経済的なクラスにしたいと思っている。AC90はJボートのような大きなオーバーハングを持つ、史上最大のモノハルレーシングクラスになるところだったからね。

VS: あなたは1年前のAC90と比較されていますが、2年前はどうだったでしょう?2007年のアメリカスカップでも、エキサイティングで乗り手にスキルを要求するボートを使っていたのではないでしょうか?アリンギはたびたび2007年のレースは非常にエキサイティングであったと述べています。今回わざわざ新しいクラスルールを制定する理由は何でしょう?

TS: 私も2年前のレースがエキサイティングであったことには同意する。しかしボートは少し時代遅れになりつつある。デザイン的にも行き詰まりつつあり、最初にACクラスを制定したときに思い描いていたものとは少々違うものなってきた。その為、防衛者であるソシエテ・ノーティーク・ドゥ・ジュネーブ(アリンギ)と、挑戦者代表であるクルブ・ナウティコ・エスパニョール・デ・ベラ(デサフィオ・エスパニョール)の間で、新しいクラスボートへ移行する時がきたというアイデアが浮かび、全ての参加チームもそれを熱狂的に支持したというわけだ。

VS: あなたはコスト削減にも言及されていますが、新クラスは現行のACクラス・バージョン5よりも低コストなボートとなりますか?

TS: 確かなことは言えないが、似たようなレベルになるに違いない。

VS: 新しいクラスの詳細を教えていただけませんか?全長、全幅、排水量は?セール・プランはどうなりますか?

TS: だめだめ、今日はだめ。全ては1月31日に発表だ。

VS: 新クラスボートはアメリカスカップ以外でも使用されるでしょうか?

TS: その考えは我々も持っていて、ルールに関して協議するときには、いつも心の中に留めていた。

VS: カップ以外でも使用すると、アメリカスカップのもつ魅力や神秘性が失われるリスクはありませんか?たとえば、もしマジョルカ島で開催される Copa del Rey なんかに出場したら、それはもうただのマキシ・クラスになってしまいます。

TS: 考え方としては、同じクラス同士でしかレースをしないということになる。例えば12メーター級のことを思い出してくれ。12メーター級はISAF制定のインターナショナル・クラスたっだが、カップ以外でレースしても、その威厳や魅力が失われることはなかった。例えば新ACクラスによる世界選手権というものも考えられるだろう。だから、あなたの質問に対する答えはノーだ。新クラスは、例えばIRCといった他のヨットとは一緒にレースすることのない、独立したものとなるだろう。

VS: 新クラスは現行ACクラスとどの程度異なるものとなりますか?

TS: 詳しいことは言えないが、よりレスポンスの良いヨットで設計の自由度も大きくなるだろう。今のところ言えるのは、これだけだね。

VS: 新クラス策定に当たり、何らかの風域条件は考慮に入れましたか?

TS: その質問に対して最終的な回答ができるところまでは来てないな。風域条件に関してはこの2日間も議論続けてきたが、まだまだ議論の余地がある。現段階ではまだ良い回答ができない。

VS: 挑戦者側はルールの決定プロセスにどれだけ関与しましたか?あなたが挑戦者側に提示した原案から修正された箇所はありますか?

TS: 見てごらん。防衛者側1チームと挑戦者側18チームがこのルール策定の場についているんだよ。修正に大きく関与したチームもあれば、そうでないところもあるけれど、元々のコンセプトからは多くの変更箇所があった。いくつかの提案は即座に採用された。「それだ! それでいこう!」ってな具合でね。その他にも随分と議論したアイデアもあった。ルールが発表されたあとなら、もう少し色々と教えてあげられるんだけれどね。

VS: もし次回アメリカスカップを2010年夏に開催するとなると、果たして弱小チームでも12ヶ月で競争力あるボートを建造可能でしょうか?

TS: もちろんだよ。大半のチームは既に新艇の設計・建造計画を立案済みだ。どこのチームにとっても不利なことはないと思うよ。

VS: AC90でも示されていたチームのトレーニングに対する制限条件は、依然有効ですか?

TS: ご承知の通り、AC90ではレースに対し一定の条件がつけられていた。即ち、チーム同士での合同トレーニングはACMが主催するプラクティスレースに限定されていた。詳細は未定だが、同様の考え方を引き続き採用する予定だ。

VS: 新しいボートを収容するため、各チームは既存のベースを改修する必要がありますか?

TS: 本当に詳しいことは言えないけれど、コスト削減を議論している一方で、ベースの改修に金を掛かけるようなことは考えられないだろ。もっと大きくてマストもずっと高かったAC90と新クラスは全く違うんだよ。

VS: 新ルールを策定するのに充分な時間はありましたか?それとも新ルールはスイスチーズのように穴だらけですか?

TS: 昨年中に色々と進めていたことがルールの骨格作りに役立ったよ。1月31日にはルールを発表するわけだが、前回AC90のときと同様、まだルールを見たことのない世界中の人たちにルールを公開し、明らかにおかしかったり、紛らわしかったりしているところはないかチェックしてもらう時間を取りたいと思っている。といっても1月31日以降は基本的なパラメータまで変更するつもりはないがね。

Alinghi09cb_26990

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村 マリンスポーツブログ ヨットへにほんブログ村 マリンスポーツブログへ

|

« ルイヴィトン・パシフィックシリーズ、トーナメント方法・ラウンドロビン1組合せ発表 | トップページ | ルイヴィトン・パシフィックシリーズ 開幕! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 新アメリカスカップクラスはこうなる。トム・シュナッケンバーグへのインタビュー:

« ルイヴィトン・パシフィックシリーズ、トーナメント方法・ラウンドロビン1組合せ発表 | トップページ | ルイヴィトン・パシフィックシリーズ 開幕! »