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2009年4月 6日 (月)

第33回アメリカスカップの行方 (1)

BMWオラクル(ゴールデンゲート・ヨットクラブ:GGYC)の訴えを認めたニューヨーク州控訴裁判所の判決から4日経ちましたが、依然当事者であるGGYC及びアリンギ(ソシエテ・ノーティーク・ドゥ・ジュネーブ:SNG)から次回アメリカスカップへ向けた具体的な交渉の動向は一切伝わってきていません。

GGYCとSNGの交渉は、昨年11月18日にGGYCがSNGに対し提示し12月4日付の当ブログでもご紹介した「公平な競技実現のための10箇条」をベースとして進められるはずです。即ち、

1. ルールの如何なる変更も、防衛者と挑戦者代表の「相互の合意」が必要とされる。

2. ACボートのクラスルール、大会規定、競技規定の合意に関わる挑戦者代表の如何なる決定も、全挑戦チームの多数決(1票/チーム)で決められなければならない。また、一旦合意したプロトコル、大会規定、競技規定の改正には、防衛者を含む全チームの全会一致が要求される。

3. 現在の調停委員は解任し、新たに5名からなる調停委員を任命する。任命に当たっては、防衛者と挑戦者委員会が各々2名を任命し、残る1名は前述の4名が選出する。

4. 防衛艇は挑戦艇決定戦の1次予選、2次予選、ラウンドロビンまでは出場できるが、準決勝以降は出場できない。本件に関するオプション案は、10月17日付のラリー・エリソンからエルネスト・ベルタレリに宛てた書簡に記載されている。

5. 「公平な競技」条項の趣旨はレース・オフィシャル、審判、調停委員にまで拡大適用される。

6. レース委員長は防衛者と挑戦者代表双方の同意の下任命される。レース委員長は前回大会と同様の権限を持ち、プロトコルに則った公平な競技運営を遂行する責任を負う。

7. 前回大会に出場したチームのエントリーは受理されなければならず、調停委員会の裁定なしで失格とすることは出来ない。

8. 第33回大会は継続出場を希望する前回出場チームの参加の下バレンシアで開催される。大会運営方式やスケジュールに関しては、ACM(アメリカスカップ・マネジメント)から事前に発表され、参加チームの同意なしに変更できない。

9. 防衛者、挑戦者とも建造艇は1艇とする。このため防衛艇決定戦は廃止し、防衛艇の挑戦者決定戦への参加を認める。(註:もしスイスからアリンギ以外の新たなチームのエントリーがあった場合、従来なら防衛艇決定戦を行う必要がある。)

10. タバコ等、従来から禁止されている業種を除き、スポンサーの業種に制限を設けない。さらにACMが各チームの既存スポンサーと競合するイベントスポンサーと契約する場合は事前協議が必要であり、その場合各チームはACMのイベントスポンサーのロゴを自艇に表示しないか、或いはイベントスポンサーに協力するかのどちらかとする。

Ggyc_10point_plan

この条項全てにおいてSNGとGGYCが合意に達するには難しいという見方が、チーム・ニュージーランドのケビン・シューブリッジを始めとするアメリカスカップ関係者の間に広がりつつあるのは昨日もお伝えしたとおりです。

これに対し、Sail World.com のリチャード・グラドウェル記者は、これら10箇条の内幾つかは既に修正プロトコルに反映されており、その他の条項についても合意に漕ぎ着けることは決して難しくないはずだという見解を示しています。

Sail World.com: America's Cup - the options going forward.

同時にグラドウェル記者は、SNGとGGYCが贈与証書に基づく一騎打ちの道を選択した場合、新たな法廷闘争に進展する可能性を示唆しています。

というのは、贈与証書に下記条項があるからです

「カップに挑戦するクラブは挑戦の最低10ヶ月前に希望するレース開催日を書面で提出しなければならない。ただし、北半球でレースを開催する場合11月1日~5月1日の間はレース開催不可とし、南半球でレースを開催する場合5月1日~11月1日の間はレース開催不可とする。」

もし双方が一騎打ちの道を選択した場合、「最低10ヶ月前の事前通告」という条項に拠るとGGYCが正式な挑戦者代表として認定された4月2日より10ヶ月、即ちに2010年2~3月にレースを開催することになります。しかし、この場合同じく贈与証書の規定から北半球でレースを開催することはできません。(なお開催地の最終決定権は防衛者側が持っています。)

防衛者と挑戦者の「相互の合意」があれば贈与証書の規定から外れた日程・開催地でのレースも可能となりますが、グラドウェル記者はこれに対し否定的です。既にモンスタートリマラン「BOR90」を進水しテストを重ねているGGYC(BMWオラクル)の開発プログラムは、現段階でもまだボートの進水すら行っていないSNG(アリンギ)より進んでおり、このアドバンテージを生かす為、開催日の延期に応じる可能性が低いからです。

従ってアリンギが北半球での開催に固執する、或いは準備期間を確保するための引き伸ばしに入る等を画策した場合、開催日程・開催地を巡り再び法廷で争う可能性があります。(ちなみに2007年7月11日にGGYCからSNGに提出された挑戦状には、第1レース2008年7月4日、開催地は北半球と記されています。)

また使用されるボートに関しても新たな法廷闘争に進展する可能性があります。贈与証書にはボートの水線長に関する下記条項があるためです。

「1本マストの場合、水線長は最小44フィート最大90フィートであること。2本以上マストがある場合、水線長は最小80フィート最大115フィートであること。」

この規定に則り、BMWオラクルは1本マストで全幅全長90フィートのトリマラン「BOR90」を建造し挑戦準備を進めていますが、これに対抗するためアリンギは複数マスト(ミズン?)を搭載する全長115フィートのボートを準備しているというウワサが流れているのです。グラドウェル記者は、この双方のボート形式の違いがボートの計測方法を巡る新たな法廷闘争の火種となることを指摘しています。

やっとケリがついたと思われたアメリカスカップの行方ですが、これはまだ新たなスタートに過ぎないのかもしれません。

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