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2009年5月22日 (金)

第33回アメリカスカップは既に始まっている!

※この記事は2009年5月22日段階の情報であり、アメリカスカップの最新情報に関しては、当ブログのトップページ、或いは左に記載されている最近の記事をご覧ください。(2010年1月追記)

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先週5月11日ニューヨーク州最高裁判所で行われた審問で、次回アメリカスカップの2010年2月開催が確定したことは既にお伝えしたとおりです。

この審問の際、同裁判所のシャーリー・ワーナー・コーンライヒ判事はアリンギの所属母体であるソシエテ・ノーティーク・ドゥ・ジュネーブ(SNG)に対して、これ以上の大会順延を認めないことを通告しました。

また、同時にBMWオラクルの所属母体であるゴールデンゲート・ヨットクラブ(GGYC)に対しても、挑戦艇が建造中であることは認める一方で、その建造が完了し次第速やかに船舶登録証をSNGへ提出すること、またその際挑戦艇の仕様が2007年7月11日にGGYCからSNGへ提出された挑戦状に記された挑戦艇の仕様と少しでも異なれば、GGYCは失格となることも厳しく通告していました。またお互いが一向に歩み寄りを見せない現状に対し、SNG・GGYC双方へ第3者による調停を活用するよう強く求めていました。

2007年7月11日付でGGYCからSNGへ提出された挑戦状に関しては、2007年7月17日付の当ブログでもご紹介しました。その際の挑戦状には下記の通り挑戦艇の仕様が明記されていました。

艇名:USA
所有者:オラクルレーシング Inc.
リグ:シングルマスト、スループリグ
水線長:90フィート
水線幅:90フィート
最大幅:90フィート
船体喫水:3フィート
ボード喫水:20フィート

私たちは、これまでこの挑戦状に基づきGGYC(BMWオラクル)は全長全幅90フィートのモンスタートリマラン「BOR 90」を建造し、来るべき対決へ向けての準備をすすめてきたものと信じていました。唯一気になっていたのは、挑戦状では艇名「USA」となっていたのに対し、BMWオラクルは彼らのモンスタートリマランを「BOR 90」と呼んでいた点でしたが・・・

さて、これに対しBMWオラクルレーシングのCEOラッセル・クーツは、チームのスポークスマン、トム・イーマンと共に現地時間の5月21日バレンシアのベースで記者会見を開き、これまでテストを続けてきた「BOR 90」は次回アメリカスカップへの挑戦艇ではなく、来年2月のアリンギとの対決のため別途「USA」というボートを建造中であるという発表を行いました。

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サンディエゴ沖でテスト中のモンスタートリマラン「BOR 90」 Photo Copyright: Gilles Martin-Raget/BMW ORACLE Racing

Valencia Sailing: Russell Coutts and Tom Ehman press conference

この記者会見の中でクーツは、正式な挑戦艇「USA」に関し既に3月から米国内で建造が始まっていること以外一切の詳細を明らかにせず、サンディエゴでテストを重ねてきたボートは「BOR 90」であり、正式な挑戦艇「USA」ではないと答えるに留まりました。

一方、アリンギとBMWオラクルの対決の場となる次回アメリカスカップの開催地に関し、「開催地の決定権はSNGにあり、これを云々するGGYCのメディア戦略は全く不快である」という5月21日付のSNGステートメントを参照しながら、NY州最高裁判所の裁定は「バレンシアか或いは他の場所」と規定しており、バレンシア以外で開催する場合は贈与証書の規定に準拠しなければならない(即ち2月開催なら南半球開催)という見解を示しました。

また会見でクーツはイタリアのヨットクラブ、チルコロ・ベラ・ガルニャーノ(Circolo Vela Gargnano)が表明したマルチハル艇での次回アメリカスカップ挑戦についても言及しました。その後グリーン・コム・チャレンジ(Green Comm Challenge)と命名されたこのイタリアからの挑戦ですが、メインスポンサーはSIMtoneというスイス企業であることが明らかとなっており、クーツによれば、これはアリンギの時間稼ぎ戦略に過ぎず、挑戦者代表として参加を認めることはとてもできないということです。

なお、GGYCはこの会見に先立つ5月20日SNGに対し書簡を送っています。この中でGGYCは上記開催地に関する見解や、「2本マスト」(註:2本マスト艇の場合、許容最大全長115フィート)と伝えられるアリンギの挑戦艇に対し、贈与証書の規定により防衛艇も挑戦艇と同じ「1本マスト」(註:1本マスト艇の場合、許容最大全長90フィート)でなければならない等々、数々の”いちゃもん”をつけています。

このようにSNG、GGYCとも、NY州最高裁判所の裁定以降も相変わらずウェブを利用したPR合戦を展開しており、そのたびに一喜一憂するのも馬鹿らしいのですが、ともかくこんな状態ですから、今後も開催地の選定、そして防衛艇・挑戦艇双方の仕様に関し、これからも法廷で争い続ける可能性充分です。

この現状を打開する鍵を握るのが、同裁判所の裁定で同じくSNG・GGYCに示された「第3者による調停の活用」でしょう。

これに対しラッセル・クーツは、5月20日付でISAFへ書簡を送ったことを明らかにしました。この中でクーツは、次回アメリカスカップはISAFのルール、及びISAFジュリーの管理下で開催されるべきであり、今後の問題に対してもISAFが調停役として機能することを期待していると伝えたそうです。

まぁ、ともかく今後もメディアを駆使した駆け引きが続きそうです。しかし、そもそもマッチレースというものは駆け引きの応酬ですので、その意味では既にレースは始まっているといえるのかもしれません。

しかし、クーツとラリー・エリソンが現在の事態を予測して、自らのモンスタートリマランを「BOR 90」と呼んでいたとすれば、大した策士です。 我々もすっかり欺かれていたことになります。

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追記: その後、BMWオラクルは2009年8月10日NY州最高裁で開催された口頭弁論において前言を撤回、対戦までに「BOR 90」を「USA」へ改称し、第33回アメリカスカップへの挑戦艇として使用すると述べました。詳しくは、2009年8月12日付の当ブログの記事をご覧下さい。

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