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2009年8月18日 (火)

ラッセル・クーツ、BMWオラクルのマルチハルについて語る (2)

さて、一昨日お伝えした CapInfo によるラッセル・クーツへのインタビューの続きです。

このインタビューは8月11日にサンディエゴにて行われたBMWオラクルの記念式典の際、CupInfoがラッセル・クーツに対し行ったものです。

CupInfo: Russell Coutts Talks About BMW Oracle's Giant Multi-hull

また、ハリソン・フォードも参加したその記念式典の模様、および挑戦艇「BOR 90」の帆走シーンは、下記 Youtube にてご覧いただけます。

YouTube: BMW ORACLE Racing Ceremony Highlights, August 11, 2009

YouTube: BMW ORACLE Racing Technology Montage

それでは、続きをどうぞ。

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BMWオラクルは、このトリマランが来年実際にカップへ挑戦するボートであると発表した。しかし、その時の挑戦艇の姿は今日の状態から異なっているかもしれない。

「我々はこのボートを大改造する予定だ。船舶登録証を提出した後の改造が認められたからね。」クーツは最近の法廷闘争における論点のひとつ、船舶登録証に関してこう語った。

「BOR 90」は今年前半の数ヶ月を掛けて、既に大改造を受けていることが知られている。「アマ」或いは「フロート」と呼ばれる外側ハルが全く新しいものと交換されている点が、最も大きな変更点として明らかとなっている。

「フロートも変更点のひとつだ。しかし、その他にも多くの変更点が存在している。あまり教えることはできないけどね。」

「でも、ボートの改造には非常に時間が掛かるから、充分前もって計画を立てなければならない。」

クーツは、「移動式バラスト」を含む、多くの仕掛けを手の内に隠している。(ただし、「移動式バラスト」は必ずしも「ウォーターバラスト」とは限らないのだ。)、しかし、実現される可能性のあるアイデアのひとつ、ハードウィングセイルに関しては、確認が取れなかった。とはいえクーツはウィングに興味があることを認めた。

「このボートにウィングセイルを装備することをずっと検討してきた。ウィングセイルの利点の一つに、揚力効率が優れていて、よりパワーを得られるという点があげられる。もちろん両チームとも、その点は検証したと思うよ。」 しかし、クーツは現状のマストのサイズを考慮すると「このサイズのマストでウィングセールを扱う難しさを考えると、かなり大きな挑戦になる」と続けた。

次にクーツは、動力付ウィンチの搭載を認めた最近の判決について述べた。彼は、この新たな認可に対しチームが不満を感じていることを強調すると共に、過去のアメリカスカップにおいて重要な鍵となっていた要素が失われることを惜しんだ。デザインテクノロジーが進歩した昨今においても、すべてはセーラーたちに掛かっているのである -- セーラーたちがエンジンにとって代わられない限りは。

「これはアメリカスカップにとって本当に好ましくない方向性だ。でも、これがルールなら仕方ない。だから我々も現在エンジンを開発中だ。しかし、伝統的なグラインディングがカップの世界から姿を消すことは残念に思う。知的要素同様、スポーツにおける最も素晴らしい要素のひとつは身体的要素だと、私は考えている。我々は通常8名のグラインダーを乗せているが、エンジンを搭載することによって、この屈強な連中はいらなくなってしまう。」

ルールに関して言うと、次に法廷において争われる可能性があるのが、ボートはエントリーをしたヨットクラブが属する国で建造されたものでなければならないという贈与証書の要件に関してである。現在、双方のチームがこれに準拠している、していないというウワサや告発が飛び交っている。

「贈与証書の求める重要な原則のひとつは、双方のボートはヨットクラブが属する国において建造されなければならないという条項であり、この大原則は決して変えられるものではない。もちろん我々のボートは100%贈与証書の要件を満たしている。”ヨットクラブが属する国において建造されなければならない”ということは、全てのコンポーネントがその国で建造されたものでなければならないという意味だ。多分カーボン繊維のような、どこででも手に入るものは別としてね。」

しかし、実際にボートへ乗り込むセーラーたちにとっては、法廷での駆け引きより新しいボートに慣れることの方が重要課題だ。巨大マルチハルでのセーリング術を習熟するということは、それまで築いてきたセーリングの経験を捨てることに等しい。それを最も端的に表しているのが、見かけの風の違いだ。これは全く異なっている。

「巨大マルチハルの場合、アップウィンド、ダウンウィンドのどちらでもセイルの受ける迎え角が非常に狭くなるんだ。なぜなら艇速が余りにも速いからね。一般的なボートの場合、アップウィンドでの見かけの風向は大体20度だが、巨大マルチハルの場合、ダウンウィンド時の見かけの風向が20度くらいになる。巨大マルチハルのダウンウィンドは、まるで普通のボートのアップウィンドみたいになってしまうんだ。」

「我々は急速に巨大マルチハルに関する理解を深めている。セーリング史上最も先鋭的な手法でテクノロジーを突き詰めているんだ。最新のデザインツールを駆使して、セイル、船体、リグといった全ての分野において、とてつもない進歩を遂げたといえる。さらには実際のセーリングを通して、さらに多くの技術が開発中だ。」

「チームの誰もが、それまで経験したことないような何かをしているよ。」

「我々は来年の対戦に向け、間違いなくベストメンバーをクルーとして選ぶつもりだ。-- これら巨大マルチハルの場合、重量が重要なファクターであり、何人が乗船してレースに臨むか良く考えなければならない。パフォーマンスから考えてメンバーとなり得るのであれば、私自身も乗り込むことになるだろう。」

「フランク・カマスに関しても、同じことがいえる。もしジミー・スピットヒルが体調を崩したり、何かあった場合、フランクが代わってヘルムスを務めることになるだろう。」

クーツは、ボートを(安全に)限界までプッシュする鋭い感覚を持っているスピットヒルの操船を高く買っている。

「我々にとってすばらしいことは、ボートをいつもプッシュできるジミーのような若い連中がいるってことだ。僕らのような年寄りはつい慎重になってしまうからね!」

(終わり)

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このクーツのコメントより、BMWオラクルもエンジンを搭載し、動力ウィンチと移動式バラストの装備を準備していることが確認されます。

また、オラクルは上記の如く、若きジェームス・スピットヒルを挑戦艇のヘルムスに指名しました。確かにブラッド・バタワース&エド・ベアードのコンビと比べると、その若さが光ります。果たしてこの若きヘルムスが老練なバタワース&ベアードにどのような戦いを挑むのかも注目されます。

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