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2009年9月19日 (土)

ISAFとアリンギの密約公開!

現在のアメリカスカップ保持者であり、アリンギの所属母体であるソシエテ・ノーティーク・ドゥ・ジュネーブ(SNG)と、次回対戦の挑戦者として認定されているBMWオラクルの所属母体ゴールデン・ゲート・ヨットクラブ(GGYC)が法廷で争っている争点のひとつに、SNGが国際セーリング連盟(ISAF)と結んだとされる密約の存在がありました。

この密約によりアリンギは、ISAFが制定する国際セーリング競技規則(RRS)を超越して、自身の防衛艇へのエンジン付ウィンチやウォーターバラストの搭載を正当化したと言われていました。

この点をアンフェアとしてGGYCは法廷で指摘、また世界最大級のセーリング情報サイト「スカトロバット」でアメリカスカップを巡る法廷闘争を詳しく解説してきたニューヨークの弁護士、コリー・フリードマンもNY州最高裁に対しSNGへ同密約の公開を促すよう訴えを起こしたことは、9月3日付の当ブログでもお伝えしたとおりです。

これに対し、SNGとISAFは9月16日突如としてこの密約を公開しました。

ISAF: ISAF Statement On The 33rd America's Cup

33ac_sng_isaf_agreement__1

これまで非公開であったこのISAFとSNGの合意書は本年6月5日付で、7ページに渡ります。以下に要点を記します。

背景:

この合意書の背景として、NY州最高裁の判決に従いSNGはGGYCと次回アメリカスカップを争うこととなったこと、また、対戦ルールに関しSNGとGGYCが合意に至らない場合、贈与証書の規定に則り対戦はカップ保有ヨットクラブであるSNGがレガッタを主催する際適用しているルール、即ちISAFの国際セーリング競技規則(RRS)、並びに他のISAFのルールに則って第33回アメリカスカップを開催することを謳っています。その上で、この同意書はこれらISAF規定のどの部分を第33回アメリカスカップに適用するかを定めるものとしています。

目的:

この合意は贈与証書の規定に基づきSNGとGGYCとの間で行われる一騎打ちに対してのみ有効であり、なんらかの理由により第33回アメリカスカップが複数の挑戦者たちによって争われる場合は適用されないとしています。

費用負担:

SNGはISAFへ15万ユーロ(約2000万円)を支払うとしています。これには第33回アメリカスカップにともなうドーピングテストやジュリーの派遣費用等を含みます。

運営組織:

第33回アメリカスカップはカップの保持者たるSNG、或いはSNGに指名されたアメリカスカップ・マネジメント(ACM)によって運営されるとしています。

ISAFルールの適応範囲:

レース公示等、第33回アメリカスカップに関するいかなる指示書類は、運営組織であるSNG、或いはACMが発行します。これらはISAFのRRSやその他関連するルールに準拠するとしています。

ただし(ここからが問題ですが)、SNGとACMは贈与証書の要件に合わせる為、RRS 86条2項に則り ISAF RRS の規定するルールを修正することができるとしています。

ルールの矛盾点:

ISAFのRRSやその他のルールと贈与証書の要件に矛盾がある場合は、贈与証書がカップ保持者に認めた特権として、SNGが全てを決定できるとしています。

レースオフィシャル:

ジュリーとアンパイアはISAFが指名しますが、防衛側、挑戦側双方のヨットクラブで常用されている言語、即ち英・仏語に堪能であること、さらに2名は現役弁護士で、また2名はマルチハルレースでの審判経験があること、またスイス国籍、米国籍を有する者は任命されないとしています。これに先立ち ISAF は候補者を提示し、SNG が最終的に確認します。

またレース委員長には、ハロルド・ベネット(ニュージーランド)を任命することで ISAF とSNG は合意しています。

なお本合意書の最後には、アリンギ・スキッパー ブラッド・バタワースと、ISAF副会長デイビッド・ケレット、事務局長ジェローム・ペルスの署名がなされています。

33ac_sng_isaf_agreement__7

さて、これを根拠にSNG(アリンギ)は ISAF の RRS の例外としてエンジン搭載をしました。この合意書の中で具体的にエンジンについて言及しているわけではありませんが、「ISAF RRSの修正を認める」という一言が、これを正当化したわけです。

最近仕事柄こちら(米国)の弁護士さんと話をしたり、英文契約書を見たりする機会が増えましたが、贈与証書の原文を見たり、今回のような合意書の原文を見たり、はたまたこれら文書に対するアリンギやオラクルの法廷での行動を見ると、欧米での契約とはどうあるべきか、正直とても勉強になりますねぇ(笑)。

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