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2009年10月25日 (日)

ラッセル・クーツ、第33回アメリカスカップについて語る。

先日アリンギ スキッパー、ブラッド・バタワースのインタビューをご紹介したので、今日は対するBMWオラクルCEO、ラッセル・クーツのインタビューをご紹介します。

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BMWオラクルCEO兼スキッパー サー・ラッセル・クーツ Photo Copyright Gilles Martin-Raget

これも少し前のことになりますが、10月2日バレンシア・セーリングがラッセル・クーツに対しインタビューを行っています。

Valencia Sailing: Russell Coutts talks to Valencia Sailing about the latest America's Cup developments

ご存知の通り、クーツとバタワースはかつて3度に渡りカップに勝利してきた盟友です。それが今、各々のチームを率いカップを掛けて対決する立場にあります。今でも個人的には非常に親しいとも言われている二人がカップに対しどのような思いを抱いているのか、前回のバタワースのインタビューと対比しながらご覧ください。

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バレンシア・セーリング(以下VS): BMWオラクルはつい先日挑戦艇の船舶登録証を公表しました。これに関連して、ブラッド・バタワースはバレンシア・セーリングに対し、「挑戦艇はきちんと計測されていない」「BMWオラクルは真剣に計測しようとしていない」と語りました。これは本当でしょうか?

ラッセル・クーツ(以下RC): 全くブラッドには困ったもんだ!実際この計測に関する問題はきちんと説明されなければならない。アリンギは単純な理由から計測に関する議論を長らく避け続けてきた。何故ならその理由が明らかになったとき、自分自身が不利になるとわかっていたからさ。だから彼らは詳細な議論に踏み込もうとせず、「GGYCはレースで決着を着けることを避けようとしている」なんて言い続けているんだ。全く馬鹿げたことをだよ。ウチのチームを見てくれよ。一体どう見たらレースを避けようとしているように見えるんだ?

逆に僕にはこう見える。

まず第一にアリンギは、挑戦艇の船舶登録証の提出が遅いだとか、記載内容が誤っているとかいった抗議を僕らに対し続けてきた。彼らは法廷で僕らを失格にしようとすらした。しかし、コーンライヒ判事は彼らの訴えを退けた。判事は対戦の2週間前まで船舶登録証を提出しなくて良いとまで言ってくれた。それだけじゃなく、アメリカスカップは競技艇の開発競争でもあることを考慮し、挑戦者が自艇を改造するためであれば登録証を改訂しても構わないとすら言ってくれたんだ。

次に、7月の口頭弁論でコーンライヒ判事から「SNGはルールを盾に挑戦者を失格としようとしているのか?」と尋ねられた際、アリンギの弁護士バリー・オストレイガーは「いや、そんなつもりは毛頭ありません」と答えた。このことは公判録にも載っているし、多分バレンシア・セーリングにもアップされてたんじゃないかな?

さて、その後で何が起こったかと言うと、口頭弁論から数日後、アリンギは僕らを失格とするような内容の計測手順書を発表したんだ。これが意図的でないとしたら、一体なんだと言うんだ?

初めに連中は水線長と船幅に対し異なる計測方法を提示してきた。その理由はただひとつ、彼らの企み通りの計測ルールを作るためさ。 僕らを失格とするか、レースをさせないことを狙ったルールをね。或いは、その両方を狙ってるのかもしれないけどさ。

大体アリンギは挑戦艇のサイズをかなり正確に把握しているんだ。挑戦艇を進水して以来、連中は我々に貼り付いて偵察し続けているんだからね。彼らの作戦は、ISAFの艤装ルールとか、他の一般的な計測手順を破棄して、"たまたま"僕らが困るようなルールを採用したように見せかけることなんだ。確かに「アメリカスカップ」を勝ち取ることは容易ではない。けれども、挑戦者が勝ち取ることが不可能であってはならないんだ。

おっと、長いコメントになってしまったね。でもヨット乗りにとって、何が起こっているか深く観察することは重要なことなんだよ。

VS: ラダーをヨットの計測に含むか否かが、なぜそれ程にまで重要なのですか?

RC: これは単に満載水線長の解釈を巡る学術的な議論じゃないんだ。これが僕らにレースをさせないで失格にしようとするあくどい企みなのを問題視しているんだ。

先日僕らが法廷に提出した供述書を見て欲しい。その中には、8度に渡ってカップを防衛した伝説のヨット設計者"キャプテン・ナット"こと、ナサニエル・ハレショフの孫であると同時に、自身もアメリカスカップに出場したことがあり、カップのことは何でも知っているハルゼー・ハレショフの供述書も含まれている。しかし、この彼の供述書に対しアリンギは何の回答もしていない。また過去30年に渡りアメリカスカップで計測員を務めてきたケン・マクアルパインの供述書も含まれているが、その中で彼もアリンギがおかしいと述べている。

アリンギがナンセンスな自身の立場を証明するためトム・シュナッケンバーグに提出させた証拠には水線長にラダーを含める唯一のクラスが紹介されていたが、それは何とラジコンヨットのクラスだったよ。

VS: 2日前、GGYCは「"公平なルール"を実現するため闘い続ける」との声明を発表しましたが、ルールの決定権はアメリカスカップの防衛者に許された特権ではありませんか?

RC: これに対する回答は簡単だよ。贈与証書は、防衛者と挑戦者が合意 - 僕らが散々言い尽くしてきた所謂「相互の合意」ってヤツだ - に達し得なかった場合、防衛者は「自クラブのルール」を適用することになっている。即ちこれはISAFのルールと言うことになる。(註:SNGは通常ISAFのルールを自身のレガッタに適用している為)

ISAFがアリンギにルールを思いのまま改定できる自由を与えたことによって、セーリングの名誉を守る番人としての責務を放棄したとことを人々は認識し始めているところだ。2艇のボートで争われる対決の一方にだけルールを自由に変えることが出来る権限を与えたことを、一体どうやってISAFは正当化しようとしているのか、全く理解に苦しむね。

VS: 開催地に関してはどう思われますか?

RC: ご承知の通り、僕らは裁判所に対しバレンシアを第33回アメリカスカップの開催地として再認定するよう提訴している。これがアリンギと我々の間の合意だったはずだ。少なくとも僕はそう理解している。双方は昨年4月カーン判事に対しバレンシアが最良の選択肢だと答えたんだから。

もう一度アリンギには説明してもらわなければならない。バレンシアでの開催は大成功だったと、エルネスト・ベルタレリ自身何度も何度も明言している。なのに彼はそれまで余り知られていなかった国であるラアス・アル・ハイマ(RAK)へ行き、同国唯一の街からも離れている建設途上のリゾート地を指して、これこそアメリカスカップに最適な場所だと言っている。

これは、南北半球どちらで開催するにしても夏季に開催することを求めており、それ以外の場所で開催する場合は双方の合意が必要と規定している贈与証書からかけ離れたものだ。例外として唯一僕らが合意したのがバレンシアだ。

新聞の一面やテレビニュースを見ている人なら、あの地域での緊張度が高まっていることを誰でも知っていると思う。RAKはイランとソマリアという危険地帯に挟まれた場所であり、世界最大のスポーツイベントのひとつに数えられる大会をそんな危険な地域で開催することを、アメリカチームに対し事前に相談する必要がないとアリンギが思っていたなら、それは驚くほど無責任な話だ。

VS: あなた方が9月2日に起こされた提訴が、来年2月の対戦を延期することになると思われますか?

RC: いや、そうは思わない。我々の弁護団は今年中にケリをつけられると考えている。僕ら自身も出来るだけ早くレースを開催したいと思っている。こっちは準備が出来ているんだ。あっちはまだみたいだけどね。

VS: もしRAKで負けてしまった場合、レース結果に関し再びニューヨーク州最高裁で争われるつもりですか?

RC: 一方の当事者であるアリンギ側がカップを失わないため色々と画策していることに対し、僕らは戦い続ける。 これはスポーツであり、いま起きていることは「親善試合」の為アメリカスカップを寄贈した「アメリカ」号のオーナー達の意図とは明らかに異なっている。率直に言って、エルネスト・ベルタレリの一連の行動が僕には理解できない。アリンギには優秀なスタッフが揃っている。しかも、その大半は僕とブラッドが集めてきたメンバーだ。きっと彼らもベルタレリのやり方を好ましくなく感じていると思うね。

VS: 法廷での争いは別として、挑戦艇の開発は続けられる予定ですか?また、開発はどこまで進んでいるのでしょうか?

RC: 挑戦艇は現在屋内で改造が進められており、今月末には帆走を再開する予定だ。請うご期待だ。

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コメント

『確かに「アメリカスカップ」を勝ち取ることは容易ではない。けれども、挑戦者が勝ち取ることが不可能であってはならないんだ。』・・・クーツ、かっこぇ~~!

投稿: YUTA | 2009年10月26日 (月) 03時15分

いやいや、ほんとクーツの言うことはかっこイイですよね。

やっぱりこの人は非常にフェアな人だと思います。

投稿: とんべえ | 2009年10月26日 (月) 08時53分

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