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2009年10月13日 (火)

ブラッド・バタワース、第33回アメリカスカップについて語る。

さて、挑戦艇「BOR 90」の改造に関し、BMWオラクルはエンジンを搭載するための大改造を行っていることを明らかにしました。

BMW Oracle Racing: BMW ORACLE Racing prepares for another round of testing

この挑戦艇の改造に関しては、一度現地を見に行ってから改めてアップしようと思います。

ということで、今日はもう一方の当事者である防衛者アリンギ側のコメントをお伝えしましょう。

少し前になりますが、9月28日にバレンシア・セーリングがアリンギ・スキッパー、ブラッド・バタワースにインタビューを行っていますので、ご紹介します。

Valencia Sailing: Brad Butterworth talks to Valencia Sailing about Alinghi and the 33rd America's Cup

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アリンギ スキッパー、ブラッド・バタワース Photo Copyright Unknown

このインタビューでバタワースは、防衛艇や開催地、計測方法にISAFとの秘密合意に至るまで、広範囲に渡って彼の意見を述べています。

防衛者であるアリンギが昨今の状況についてどう考えているのかを知る上で、非常に興味深い内容となっています。

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バレンシア・セーリング(以下VS): あなた方のカタマラン「アリンギ5」はイタリア、ジェノヴァでの海上テストを終え、今まさにラアス・アル・ハイマ(RAK)へ送られようとしています。海上テストの結果について教えていただけますか?

ブラッド・バタワース(以下BB): テストの結果、「アリンギ5」は全くもってエキサイティングで、とても速くて、走らせるのにワクワクするようなボートだとわかった。でも、オラクルと闘うまでには、まだ改良すべき点が沢山ある。来年2月オラクルに勝つために、これからRAKでボートのレベルアップを行うことにしている。

VS: ジェノヴァでのコンディションは如何でしたか?

BB: 様々なコンディション下でテストをすることが出来た。ときには風が強すぎるときもあったし、もちろん風がないときもあった。でも、全体的に言って良い風に恵まれたね。非常に速いスピードで走れたし、多くのことを学ぶことができた。だが、先も言ったとおり、まだまだやらなければならないことが沢山ある。

VS: "非常に速いスピード"と仰いましたが、どのレベルまで行ったのでしょうか?

BB: そうだな、20ノット台後半くらいは行ったかな。

VS: どこか壊れたことはありませんか?重大な構造的破損とか?

BB: まぁ想定範囲内だったね。もちろん時には壊れることもあったけど、最終的には余りに破損箇所が少なくてビックリしたくらいだ。確かにジェノヴァにいる間に何箇所か壊れたのは事実だし、その内のひとつはバックボーンフレーム近くが破損したものだった。とはいえ、重大な構造欠陥ではなかったけどね。我々は徹夜で修復し、念には念を入れてフレームの反対側にも同じ補修を行ったんだ。その結果、その後のセーリングを通じて、なんら問題は発生しなかったよ。

VS: 何名のクルーを搭乗させるか、決められましたか?

BB: いや、まだ決めてない。そういったことは、ボートを最適化するため出来るだけ多くのテストを行って追い込んで行きたいと思っている。残された時間は少ないが、最適化すべきことは山ほどある。とにかく時間がないから、変更したい部分のパーツも大至急作らなきゃならない。RAKでテストを開始するまで殆ど時間がないからね。

VS: ボートはいつ頃RAKに到着する予定ですか?

BB: はっきりしたことは判らないけど、多分10月初めだと思う。

VS: 直近のアリンギの予定はどうなっているんでしょうか?あなた自身も既にRAKにおられるのですか?

BB: 私はまだジェノヴァにいるが、来週ごろには現地入りするつもりだ。まずボートが着いたら色々とすることがあるが、それからできるだけ早くセーリングを開始したいと思っている。

VS: ということは、現地のインフラが整っていなければなりませんね。現地工事の進捗状況は如何ですか?

BB: 我々はもちろんラアス・アル・ハイマ首長国側も全力を尽くしている。すでに幾つかの建屋は完成しているし、トレーニング海域も決まっている。こういった準備はアリンギに対してだけでなく、両チームに対して行われている。「アメリカスカップ島」への準備が猛スピードで進められている様子をみると、RAK側が両チームをホストするため、如何に大金を注ぎ込んでいるかわかるよ。

VS: BMWオラクルに関しては如何ですか?オラクル側も調査チームを現地へ派遣したと伝えられていますが、現地の印象について何らかの連絡はありましたか?

BB: いや、まだ何の連絡もない。彼らのスタッフは依然現地に残っているが、きっと彼らも我々同様準備に梃子摺るだろう。彼らの本隊がいつ現地入りするのか、或いはどういった計画でいるのか、私にはわからないが、ともかく現地入りを急ぐよう促しているところだ。

VS: ということは、あなたの理解としては、オラクルも現地入りする意向であると?

BB: そうだなぁ、その質問は連中に聞いてくれよ。我々は彼らから何も聞いちゃいないんだ。彼らが来ないとも聞いていない。だから、その答えは彼らに聞くべきだな。開催地が発表されて既に2ヶ月が経つが、それに対する異論は一切届いてきていない(註:9月28日段階。その後10月1日にBMWオラクル側はNY州最高裁へRAKは開催地として不適格との訴えをおこした)。連中も我々の動向を日々追っかけているから、我々のボートが現地へ向かっていることは判っているはずだ。そうやって何もしないことがカップに勝利する手段だと思っているなら、それはただスケジュールを遅らせるだけで、何もいい事なんかありゃしないのにね。

VS: もう少し長い目で見てみるとどうなりますか?すべてうまく運んで再びアリンギが勝利した場合、第34回アメリカスカップはどうなりますか?

BB: 現段階では何も決まっていない。前回きちんとした計画を建てたにも関わらず、連中が仕掛けたゴタゴタの結果、折角19チームと築き上げた良好な関係は全てご破算となってしまった。今回のオラクルとの対決の後、どういうことになるか私にはわからない。次回に関しては完全に宙ぶらりんの状態で、今のところ何も決まっちゃいないんだ。

VS: アメリカスカップが法廷闘争の泥沼に陥っている間に、ルイヴィトンが「ルイヴィトン・ワールドシリーズ」を立ち上げると発表しました。アリンギは去る2月オークランドで開催された大会には参加しましたが、今回は何故不参加なのでしょうか?

BB: 何故なら、我々には他にやらなきゃならないことがあるからだ。防衛艇を完成するという仕事がね。仰るとおり我々は2月の「ルイヴィトン・パシフィックシリーズ」に参加したが、あれはチーム・ニュージーランドに提訴を取り下げさせるという目的があったんだ。あのレースは旧型のボートで行われたわけだが、私個人としてはもっと新しくてエキサイティングなボートでレースをしたいと思っている。あれはルイヴィトンのための大会であって、他の誰のためのものでもない。

VS: さて、第33回アメリカスカップを巡る状況に戻りますが、争点のひとつにBMWオラクルの挑戦艇に対する計測手順が挙げられます。SNGは本件に対する反論書を裁判所へ提出したところですが、オラクルのボートはきちんと計測されると思いますか?

BB: いや、私にはそう思えないね。連中の提出した船舶登録証を見ても、彼ら自身正確な寸法を把握していないか、或いはボートを計測することに興味がないとしか思えない。最終的に我々はきちんと 90 x 90 フィート以内に収まるよう押さえたが、連中のボートは 90 x 90 フィートですらないかもしれないね。彼らには計測ルールを吟味する充分な時間があったし、何をしなければいけなかったか判っているはずだ。とにかく、奴らのやりたいようにやればいいから、後はレースで決着を着けたらいいと思っている。

VS: 満載水線長(LWL)の計測に何故ラダーを含めたのですか?

BB: ボートの一部だからさ。

VS: マルチハルの場合、通常ラダーは水線長に含まれるものなのですか?

BB: いいかい、これはアメリカスカップであり、ラダーはボートの一部なんだ。ニューヨーク州最高裁がそう言ってるんだ。何かあるたびに我々は裁判所へお伺いをたてなきゃならない。しかも、アメリカのニューヨークの裁判所にね。その裁判所がラダーはボートの一部だと言ってるんだ。そのときから解釈が変わったのさ。だから、なんら問題があるとは思えないね。

VS: ニューヨーク州最高裁は、防衛者にはルールを自由に設定できる権利があると認めました。これがフェアかどうかを議論するつもりはありませんが、ISAFとアリンギとの間で交わされた合意について教えてください。何故この合意は秘密にされてきたのですか?

BB: それは、この合意がヨットクラブとISAFとの間で交わされた単なる商取引上の合意に過ぎなかったからさ。ISAFのルールを使うと言う合意であり、レースを誰に対しても公平に行うため、ISAFから人員を派遣してもらうという合意なんだ。この合意が6月に交わされた為「密約」なんて言われたけど、他の大会でもこんな合意書をいちいち公開したりしないだろ。全くナンセンスだね。

VS: それを何故この期に及んで公開することにしたのですか?

BB: 別にたいしたことではないからさ。アメリカ人が鬱陶しく絡んでくるから、公開しただけのことだよ。これであなたも見ることができ、みんなも内容を確認することができるというわけだ。実際過去ISAFと交わされてきた合意書より、ずっとましな内容になっている。ISAFとセーリングスポーツそのものにとっても、ずっと良い内容だよ。だから、この合意書に関しごちゃごちゃ言うのは馬鹿げた話に過ぎないよ。

VS: 公開された合意書は元々の内容ですか?それとも修正を経てあの形に落ち着いたのですか?

BB: あれは元々の内容で、BMWオラクルにとっても心地良くレースに参加できるよう配慮して作ったものだ。もう一度はっきり言っておくが、あの合意書はオリジナルから一度も修正されたことはない。

VS: その他に何か付け加えておくことはありませんか?

BB: いいかい、最終的に防衛艇と挑戦艇は対決しなければならない。そして、どっちが勝つにしろ、カップは勝者の物とならなければならない。もしレースの敗者が裁判所へ駆け込んで、レース結果を蒸し返すようなことをするとしたら、それは本当に馬鹿げたことだ。どっちが勝つにしろ、法廷闘争はこれで終わりにしなければならない。だから、2艇のボートは来年2月ラアス・アル・ハイマで対決しなければならないんだ。

(終わり)

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