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2009年11月 7日 (土)

Have a nice weekend! - アメリカスカップの未来はこの週末に懸かっている

昨日アップした「BOR 90」のオンボード映像で「まだジブをあげていない」とコメントしましたが、画面を拡大してみたら、ちゃんと上がっていました。ゴメンナサイ。謹んで訂正させていただきます。

さて、米国時間の11月6日(金)ニューヨーク州最高裁判所で開かれたソシエテ・ノーティーク・ドゥ・ジュネーブ(SNG)とゴールデンゲート・ヨットクラブ(GGYC)による口頭弁論は結論を持ち越し、この週末の間当事者同士で協議を行って、その結果を月曜日法廷に報告することとなりました。

MercuryNews.com: America's Cup feud could be nearing end

昨日もお伝えしたように、口頭弁論の様子は傍聴席にいたセーリングアナーキーのメンバーが、下記サイトへ文字情報でライブ中継してくれていました。

Sailing Anarchy: NYSC Hearing GGYC/SNG, 091106

このライブ中継から垣間見る法廷でのやり取りが、結構面白いものだったので、ちょっとご紹介しましょう。

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SNG弁護士 バリー・オストレイガー(以下BO): 開催地問題がどう決着しようが、SNGは来年2月にレースを行う意向だ。

NY州最高裁 コーンライヒ判事(以下JK); オーストラリアを開催地とした場合、今からでも準備が間に合うか?

BO:輸送面に関しては、1週間で解決可能。

GGYC弁護士 デイビッド・ボイズ(以下DB): オーストラリア東海岸は2,500マイルにも及び、現地調査に時間が必要。

JK: オーストラリアなら双方合意可能か?

DB: 単にオーストラリア東海岸では範囲が広すぎる。

BO: 贈与証書はSNGに開催地選択権を認めている。挑戦者には贈与証書に準拠した開催地を拒否する権利はない。贈与証書の認めるSNGの開催地決定権は、6ヶ月前に開催地提示を求めたカーン判事の裁判所命令を超越する。そもそもカーン命令は”SNGが選ぶ如何なる場所”としていた。

JK: 贈与証書に準拠するのが原則。

BO: 贈与証書に準拠するなら開催地は南半球。GGYCもそれは判っていたはず。SNGは多くの時間と金をRAKに注ぎ込んできた。これではSNGがカードゲームの犠牲者。バレンシアは贈与証書に違反するが、もしそれが裁判所の命令であるなら、バレンシアでレースをする。SNGのボートがRAKに到着するのを待って、開催地の件を持ち出してきたGGYCのやり口は汚い。オーストラリアはセーリングに適している。GGYCのボートはサンディエゴにあり、SNGのボートはRAKにある。開催日の迫った今、ボートの輸送が問題となりつつある。

JK: カーン判事が命令を下した段階ではバレンシアは贈与証書に準拠していた。しかし、今は準拠していない。単にGGYCは待っていたわけでなく、SNGも贈与証書の要件を理解した上で、ボートを送るべきと法廷は考える。GGYCが現地に調査員を派遣したことが、RAKでの開催に合意するというサインと見られたのも事実。

DB: 4月7日付の裁判所命令に対し控訴していないということは、SNGはバレンシアか、南半球(ただし6ヶ月前に提示が必要)での開催に合意したということ。

(セーリングアナーキー・レポーターのコメント: デイビッド・ボイズの弁論絶好調!)

JK: なぜGGYCは開催地に対する異議申し立てを待ったのか?なぜRAKと発表された8月6日直後に異議申し立てをしなかったのか?

DB: GGYCは記者会見で一度だけRAKでも良いと述べたが、それ以外は一貫してノーと言い続けてきた。その他の文書等でも、バレンシア以外(の北半球)は受け入れられないと一貫して主張してきた。SNGはそのことを認識していたはず。SNGは6ヶ月前という締め切り直前までRAKの発表を引き延ばした。発表がない限り、解決の方策もない。GGYCはRAKが受け入れ可能か否か誠意を持って検討した。SNGはGGYCの意見に一切耳を傾けず、開催地を決定した。SNGはGGYCが異議を唱えると判っていた。GGYCは偽りを言っていない。今回召集された陪審員の意見を踏まえ、今やSNGは来年2月バレンシアで巨大マルチハル対決を開催しても、安全的に問題ないと言い出している。

(ラッセル・クーツもトム・イーマンと共に出廷。プレス席にも多数の報道陣。ただしブラッド・バタワースは見当たらず。)

JK: 6ヶ月まえに開催地を提示することは重要か?前回のアメリカスカップでは、開催地は主催者(防衛者)により提示されたが、事情が変わったのか?

(コーンライヒ判事とボイズ弁護士とのやり取りは順調。ボイズは開催地問題に関し非常に良い説明をしている。コーンライヒ判事はボイズの受け答えに興味を示し、時間を割き質問するも、的確な回答を得ている。とってもいいカンジ!)

DB: カーン判事の命令を読み解くと、もし6ヶ月前の提示がないなら、開催地はバレンシアでなければならず、それ以外の場所であれば6ヶ月前に提示されなければならない。過去アメリカスカップの歴史において、開催前6ヶ月を過ぎてから開催地が決定されたことはない。ニュージーランドの巨大モノハル「KZ-1」とデニス・コナーのカタマラン版「スターズ&ストライプス」が対決した1988年大会でも10ヶ月前に提示されていた。開催地の提示期間に関する規定は贈与証書にない。従って、理屈から言うと1週間前に提示しても構わない。しかし、そんなことをしたらメチャクチャになる。SNGの行動は、開催地の提示を2ヶ月前、1ヶ月前、2週間前と遅らそうとしている疑いがある。準備期間が如何に重要かは、以前証人が証言したとおり。準備期間が限られている以上、今回SNGが提示した2,500マイルに及ぶオーストラリア東海岸という提案は、もっと範囲を狭めるべき。証人の証言を求める。

BO: 証人を立てることには反対。反論に準備が必要。後日証人を立てる。

JK: 誰がオーストラリアのどの街を開催地として選ぶにせよ、大会開催に問題はないか?GGYCは候補地をどう調査するか?

DB: ベースを建設したり、ワークパーミットを取ったり等に時間が掛かる。設備やサポートスタッフも問題。今日今すぐ設備の建築を始めることは出来ない。資材類やスタッフに対する許認可も必要。オーストラリアでの開催は可能かもしれない。しかし、単にスイッチを入れるのとは訳が違う。残り90日では無理。RAKを調査しなければならなかった理由は、RAKが贈与証書に準拠しておらず、もしRAKで開催するなら我々の合意が必要だったから。2月にレースをすると言っておきながら、期限目一杯まで開催地の発表を引き延ばしたのはSNG。

JK: もし新たな開催地を選ぶなら、SNGには時間が必要だったはず。

DB: 先週の裁判所命令から8日間、開催地に関し何の発表もなかった。今となってはレースまで8/100日。SNGはGGYCに告げるだけでなく、既に南半球の開催地選定作業に入っている。SNGは裁判所の命令を座して待っているわけではない。6ヶ月前の通達義務を遵守するには、その通り6ヶ月前に通達するか、バレンシアとするかしかない。もしSNGが南半球を選択するなら、6ヶ月前に掲示板へ提示していなければならない。よって、今となってはバレンシアしかない。もしバレンシアに異議があるなら、6ヶ月前に通告する必要があった。しかし、これらを規定した裁判所命令に誰も異議申し立てをしていない。SNGはGGYCの意向に関わらずRAKを選んだ。GGYCがRAKの選択に対し異論を表明したのは、開催地提示の翌日である。

(オーストラリア開催の提案は、開催地選定問題にクセ球を投げる結果となった。コーンライヒ判事は、これまでの経緯を無視して、ボイズ弁護士に何故オーストラリアではいけないのか説明させている。判事がどちらの立場に立つのか今のところ全く不明。)

BO: (BMWオラクルの)トム・イーマンは3・4度に渡り「SNGによって選ばれる如何なる場所」というのは正しいと言う認識を示した。そして、RAKへ挑戦艇を出荷すると称して米国沿岸警備隊から船舶証明証を取得。だからSNGも「アリンギ5」をRAKへ出荷した。裁判所命令は贈与証書と矛盾。しかし、もしそれが命令とあらば、バレンシアでレースする。

DB: 今我々が知りたいのは、どこでレースが開催されるかだ。

BO: 贈与証書に準拠し、セーリングが3番目に人気のある場所(オーストラリア)で、国際標準の大会を開催可能だ。GGYCが提出した船舶登録証はRAKへ挑戦艇を出荷することが前提で交付。GGYCも調査隊をRAKへ派遣した。ラリー・エリソンは大富豪。オーストラリアもイベント開催に積極的。何百ものレガッタが当地では開催されている。施設も完備。GGYCにとっても充分すぎるほど準備ができている。贈与証書は防衛者の優位を認めている。

(コーンライヒ判事は再びオストレイガー弁護士と討議。判事は頬杖をつき、薄ら笑いを浮かべ、イライラした様子。オストレイガーの口述を遮り、なぜ挑戦艇を中東へ送ろうとしたか問い詰める。ついに判事は完全に口を塞いでいる!オストレイガーの口述に不快の模様。椅子を前後に揺らし、どこかへ行ってしまいたいかのごとく。)

JK: 私はここで判決を下すことをやめます。両弁護士はこっちへ来なさい。

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文字実況から読み取れる具体的なやり取りはここまでです。ちょっとのつもりが、長文になってしまいました。

しかし、まったくアメリカの弁護士さんって、「ああ言えばこう言う」というタイプの典型です。ま、それが優秀な弁護士ってことですが・・・

さて、議論が平行線で一向に埒が明かないことに業を煮やしたコーンライヒ判事は、なんとか両者を合意に持ち込むため、双方の弁護士を自分の前に呼び、暫く協議します。その後両弁護士は双方の陣営へ戻り、SNG、GGYCの関係者と協議を行います

そして、コーンライヒ判事は、SNG代表としてルシアン・マスメジャン(SNG法務顧問(弁護士))を、GGYC代表としてラッセル・クーツ(BMWオラクルCEO)を自室へ呼び、三者で協議を行います。その結果、この週末を掛けSNGとGGYCはニューヨークで協議を行い、結果を週明け月曜日に改めてコーンライヒ判事へ報告することで合意しました。

というわけで、長々と続いた双方弁護士の不毛な議論の結果、この週末当事者同士が腹を割って話し合い、結果を法廷に報告することになりました。

最初っからそうすればよいのですが、そうは行かないのが世の常です。結局これまで法廷で争うことしかできなかったアリンギとオラクルですが、スケジュール的にのっぴきならない所まで来て、ようやく直接対話の席に着いたといえるでしょう。

また、コーンライヒ判事の求めによって陪審を設置することとなり、SNGはグラハム・マッケンジー(ニュージーランド:ISAF評議員)を、GGYCはブライアン・ウィリス(イギリス:第32回アメリカスカップ審判委員長、元ISAF競技規則委員)を指名したことは以前お伝えしたとおりです。この二人は第三の陪審員として、デイビッド・ティレット(オーストラリア:ISAF競技規則委員長)を指名しました。

この三名による”賢人会議”も同じくこの週末協議を行い、競技艇の計測方法やルールの制定方法に関する意見をコーンライヒ判事に提出することとなっています。

今回のコーンライヒ判事の判断に対し、SNG/アリンギ側、GGYC/BMWオラクル側双方とも、歓迎の意を表しています。

Alinghi: Defender Alinghi open to discussions for 33rd America’s Cup in February 2010

GGYC: Statement on Venue hearing

また、この結果、ラッセル・クーツは今日からニースで始まっているルイヴィトン・トロフィへ遅れて参加することになり、BMWオラクルのヘルムスは、代わってギャビン・ブレディが務めることになりました。

さて、週明けの月曜、一体どんな話が飛び出してくるでしょうか?

両弁護士の言動を見る限り、単にオーストラリア東海岸とした今回のアリンギの提案では、合意に至らないように思います。となると、やはりバレンシアでしょうか?しかし、軽風仕様の防衛艇を建造したアリンギは、バレンシアを頑なに拒否しています。

何れにしろ、コーンライヒ判事が今週末でケリをつけようとしていることだけは確かです。

さぁ、ニューヨークでの会談に期待しましょう!

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