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2009年11月 2日 (月)

NY州最高裁、新たな裁判所命令を下す - アメリカスカップは正常化へ前進

この週末はいくつかのハロウィンパーティにご招待されたり、Gaslamp Quarter Fall Festival へ行ったり等々イベント満載で、遊んでいる間にブログのアップが遅れてしまいました

さて、米国時間の10月30日、ニューヨーク州最高裁判所のシャーリー・コーンライヒ判事は、去る10月27日同裁判所で開かれたソシエテ・ノーティーク・ドゥ・ジュネーブとゴールデンゲート・ヨットクラブの口頭弁論の結果を受け、新たな裁判所命令を下しました。

この新たな命令書は、GGYC、スカトロバットのコリー・フリードマン弁護士、並びにラアス・アル・ハイマ(RAK)から提出された夫々の申し立て(Motion)に対し下されています。

判決は以下の通りです。

  • Motion 11 (GGYCによる艇の計測方法に対する申し立て): 継続審議
  • Motion 12 (コリー・E・フリードマンによる第三者意見書): 却下
  • Motion 13 (GGYCによる開催地に対する申し立て): 受理
  • Motion 14 (RAK当局による第三者意見書): 受理

各判決文(原文)は以下の通りです。

Justice Kornreich Decision/Order on Motion 11, 30 October 2009

Justice Kornreich Order on Motion 12, 27 October 2009

Justice Kornreich Order on Motion 13, 27 October 2009

Justice Kornreich Order on Motion 14, 27 October 2009

この内、Motion 13 が認められたことにより、来年2月RAKでアメリカスカップを開催することは正式に不可能となりました。ただし、SNG/RAK側に控訴の余地を残しすため、Motion 14 も受理されました。

最も注目されるのは、Motion 11 に対する命令です。

この中でコーンライヒ判事は、ラダーを満載水線長に含めるべきではないと言うGGYCの訴えを認めました。アリンギの新たな敗北です。

さらに、今後の審議には、ヨットに関するより高度な技術的知識、さらにアメリカスカップにおける慣例に関する知識等が必要となるため、コーンライヒ判事はSNG、GGYC双方に対し各々1名の陪審員を指名させ、さらのこの2名の合議によってもう一人の陪審員を選任させるよう命令を下しました。

そして、今週11月4日(水)再び法廷において、この3名の陪審員の意見を元に以下の案件を審議するとしています。

  1. アメリカスカップにおける満載水線長の計測方法について。(SNGによる可動式バラストを計測対象外とする主張を認めるか否か、カタマランとトリマランに対し同様な計測手順を取れるか否かも併せて審議)
  2. 2010年2月にバレンシア沖にてレースを開催する場合の安全性について。
  3. アメリカスカップの慣例上、レース公示やその他のルールはどのタイミングで公示されるべきかについて。(レース公示発表後のルール変更は可能か)
  4. アメリカスカップの慣例上、審査委員会は何時指名されるべきかについて。
  5. ISAFとSNGの契約は、独立し客観的な審査委員会を設置する妨げになるか。また審査委員会は如何なるルールに則り運営されるべきかについて。

これに対し、GGYC/BMWオラクル側はラッセル・クーツのコメントを発表し、今回の裁判所の決定を全面的に支持するとしています。

GGYC: GGYC Statement Dated Oct. 30, 2009

一方のSNG/アリンギ側ですが、SNG副会長(アメリカスカップ担当)であるフレッド・メイヤーのコメントを発表し、今回の決定は贈与証書が防衛者に認めた特権を著しく損なうものであり、大きく失望しているとしています。

Alinghi: SNG's Fred Meyer comments on latest NY court ruling

アリンギが言うように、贈与証書が防衛者に著しい特権を認めていることは事実ですが、まさにクーツが述べた如く、それを盾に挑戦者とって勝利不可能となるようルールで包囲することは認めがたい行為と言わざるを得ません。

実際、アリンギがニュージーランドからカップを奪取した第31回大会、並びに防衛に成功した第32回のアメリカスカップは、比較的公平なルールの下運営されていました。

それが、初防衛に成功するや防衛者の権利を盾に、傀儡ヨットクラブ(CNEV)を挑戦者代表に仕立て上げ、息の掛かったメンバーを審判団に据え、充分な議論もなく新しいACクラスを制定したり等々、やりたい放題の行動を始めようとしていたわけです。

これにはっきりと「ノー」と言い続けてきたのが、BMWオラクルでありラッセル・クーツでした。この2年半以上に渡る法廷闘争は、億万長者同志のエゴの張り合いと揶揄され、実際ファンとして随分と失望されられてきましたが、経緯をきちんと振り返ってみると、BMWオラクルは一貫して公平なルールの下でのアメリカスカップ開催を訴え続けてきたことがわかります。そこには、ラリー・エリソンのエゴと言うよりも、カップの世界にエルネスト・ベルタレリを連れてきてしまったクーツの自責の念から来る使命感が読み取れるように私には思えます。

今回裁判所が防衛者の絶対優位を認めた贈与証書から離れ、第三者による陪審設置を指示したことは、事態の正常化へ向けた大きな前進であると信じたいと思います。

さて、この裁判所の指令に対し、GGYC/BMWオラクル側は陪審員として、ブライアン・ウィリスを指名したと伝えられています(正式発表はまだ)。

Valencia Sailing: BMW Oracle nominates Bryan Willis as expert in Wednesday court hearing

ウィリスは30年に渡りISAF競技規則委員会のメンバーであると共に、過去4度アメリカスカップのジュリーを務めてきた人物です。

一方のSNG/アリンギは、グラハム・マッケンジーを陪審員として指名しました。

Alinghi: Graham McKenzie nominated as SNG expert witness for NY Supreme Court hearing

マッケンジーもISAFの評議員メンバーであると共に、前回アメリカスカップでジュリーを務めていました。

さて、この2人が3人目としてだれを指名するかは明らかとなっていませんが、いずれにしても今週水曜の審議がどうなるか、非常に注目されます。

ところで、サンディエゴでテストが続けられているBMWオラクルの挑戦艇「BOR 90」がセンターボードとラダーを廃止したこと関し、ニッポンチャレンジやマスカルツォーネ・ラティノでAC艇の開発に携わってこられた高橋太郎さんに伺ったところ、「マルチハルの場合、船体を出来るだけ軽くし、相手より先に片ハルを空中に持ち上げたほうが勝ち」とのご意見をいただきました。(高橋さんのブログはこちらです。<帰ってきた>高橋太郎・バレンシア日記・第33回アメリカズカップ

これに関し、チームによってアップされた「BOR 90」の最新映像を見ると、まさに高橋さんが仰るとおりの状態を目指し、開発が進められているように見えます。

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