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2009年11月22日 (日)

ハイテク = ハイリスク&ハイコスト

BMWオラクルの挑戦艇「BOR 90」ですが、セーリング・アナーキーのACフォーラムに寄せられた情報によると、現地時間の11月20日またもや何らかのマイナートラブルが発生し、帆走テストを中断してハーバーへ戻りました。

ちなみにセーリング・アナーキーのメンバーが捕らえた当日の映像はこちらです。なお聞こえるエンジン音は撮影に使用したモーターボートのもので、「BOR 90」のものではありません。

当日はオラクルのオーナー ラリー・エリソンとチームのCEO ラッセル・クーツもサンディエゴ入りし、かつてアメリカスカップの保持者であったサンディエゴ・ヨットクラブのメンバーをチーム・ベースに招待していました。

BMW ORACLE Racing Blog: SDYC Visits the Team

また、エリソンは金髪美女をはべらせ、かつて自らが所有し現在はチャーターボートとなっているスーパーヨット「Zenji」に乗り組み「BOR 90」の帆走テストの様子を見に向かいますが、テスト海域に到着する前に「BOR 90」はテストを中断してしまいました。

ちなみにセーリング・アナーキーのACフォーラムでは、この金髪美女がエリソンにとって4人目の妻である恋愛小説作家メラニー・クラフトか、はたまた別のガールフレンドであるか否かが議論の的となっていました

こうなるとパパラッチ状態ですが、セーリング・アナーキーのメンバーが捕らえたスーパーヨット「Zenji」の姿もオマケでどうぞ。(もうひとつオマケに「Zenji」のチャーター情報もつけときます。)

CharterWorld.com: Sailing Yacht ZENJI

さて、ハーバーへ戻った「BOR 90」は、翌日の11月21日再びウィングセイルを倒しバーバー内で接岸され、導入時と同様2台の大型クレーンがウィングをサポートする中で、本格的なメンテナンスが開始されました。詳細は上記11月21日付のチームブログにアップされていますが、月曜から帆走テストを再開するということです。

BMW ORACLE Racing Blog: Aerial Sailmaking

今回わざわざハーバーへ戻しクレーンまで使ってメンテを行うのは、複数の人間が同時にウィング上に乗って効率良く作業する為と思われますが、セーリング・アナーキーのACフォーラムではマストステップに何らかの改修が必要となったのではないかという指摘がなされていました。

いずれにしても、この手の大型クレーンは時間当たりの作業費を支払うのが普通ですから、本格メンテの度に2台も借り出す必要があるとは、本当に手間もコストも掛かるウィングです。正に「ハイテク = ハイリスク & ハイコスト」と言えます。ただし、今年のフォーブス世界長者番付でビル・ゲイツ、ウォーレン・バフェット、カルロス・スリム・エルという毎年トップ争いをしている3人に続き第4位にランクされたラリー・エリソンにとっては、小さいことかもしれませんが・・・

さて、この手間の掛かるメンテの様子は、11月22日付のチームブログにYouTube動画付きでアップされています。

BMW ORACLE Racing Blog: Wingnuts

この映像で「BOR 90」宿直責任者マグナス・クラークは、ウィングセイルやボートをコントロールする電源を切らさないため、一晩中エンジン(発電機)を回さねばならないとコメントしています。ちなみに"ウィングナッツ"とはCクラスカタマランの世界でウィングセイルを操るセーラーたちを指す通称ということです。

またウィング担当の空力エンジニア、ジョゼフ・オザンヌによると、今回はウィングセイル導入後初めてとなる本格的メンテであると共に、ウィング導入に忙殺されていた為、今まで試すことができなかった"小さな試み"を新たに付与する計画になっているということです。

最後に登場するウィングのトリマー、ディルク・デ・リダーは、ソフトセイルとハードウィングの違いに関して、荷重が異なる為トリムも異なる、もちろん見かけも全然違う為、単純に比較できない。しかし、ヒールアングル、ラダーアングル、ボートスピードを見ながらトリムすることには変わりなく、今までと異なる"道具"を使って結果を出すだけ。世界最大のウィングでのセーリングはエキサイティングで、素晴らしいオモチャだと語っています。

さて、ここで登場するマグナス・クラークですが、彼は2007年のCクラスカタマラン世界選手権において、当ブログで何度も登場しているスティーブ・クラーク/ダンカン・マクレーン(元チーム・デニスコナー 現アリンギ)組の「コギト」を破り世界チャンピオンとなった「アルファ」のクルーです。アリンギが大御所「コギト」のメンバーを招聘するなら、オラクルはそれを破った「アルファ」のメンバーを雇い入れるという図式になっているわけです。

アメリカスカップ史上初となるマルチハル同士の対決に際し、アリンギ/BMWオラクル双方ともCクラスカタマランの第一人者たちをチームの招聘しています。このCクラスとはどんなクラスなのか、改めて見直す必要がありそうですね。

ちなみに「アルファ」と「コギト」の対決シーンがYouTubeにアップされていましたので、ご参考まで。

さて、すっかり放置状態であったACクラスによるマッチレースサーキットの第1戦、ルイヴィトン・トロフィ・ニース・コートダジュールですが、11月22日決勝が行われ、イタリアのアズーラがエミレーツ・チーム・ニュージーランドを破り優勝しています。

Louis Vuitton Trophy WSTA: Azzurra scores 2-0 shut out of Emirates Team New Zealand

ジョーフライのオーナーが、フランチェスコ・ブルーニをヘルムスに据え新たに結成したアズーラが、初めてとなるACボートのイベントで強豪チーム・ニュージーランドを破る快挙を達成しました。ブルーニは今年2月のルイヴィトン・パシフィックシリーズにも、バスコ・バスコットをスキッパーとするダミアーニイタリアのヘルムスとして出場していましたが、その時は結果を出せませんでした。特にACボートのようなビッグボートの場合、好成績を収めるにはチームの総合力が重要ということでしょう。

しかし、11月13日のセーリング・アナーキーのトップページでも「Looks Good, But...」と評されていた通り、アリンギとオラクルのハイテクボートを見てしまうと、ACボートが如何にも旧態依然としたオールドボートに見えてしまいます。(まるでJボートを見ているかの如き気分です)

ちなみに出場していたはずのラリー・エリソンとラッセル・クーツも、11月20日にはサンディエゴに居ました。ということで、チームにとっても、もはやどうでも良いシリーズとなっているのかもしれません・・・

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コメント

いつも良い仕事されてますね。
日本ではこのような情報がほとんどありません。いつも食い入るように拝見させていただいてます。コギトの映像まで見られるなんて!

ところで、おっしゃるようにあのハイテク満載の怪物マルチハルヨットが(正式かどうかは議論があるでしょうが)AC杯を争いつつあるのを見るにつけ、トラディッショナルなモノハルにでにAC杯を戻そうという動きは時代錯誤のようにも感じられます。
個人的な思い入れなんですが、アメリカスカップは一般人にはまったく手の届かないようなとてつもない世界を期待しています。トリマラン対カタマランのマッチレースだけでもものすごく浮世離れしてますよね。シート駆動用のエンジンまで搭載してさらにハードセイルですよ。
私はアリンギとBORがレーススタートのカウントダウン中でとてつもないサークリングをしているのを見たくてしょうがありません。そう思いませんか?

投稿: | 2009年11月23日 (月) 09時23分

そのまんまのマルチハルだとマッチの面白さや肉弾戦がみれるか?という点だけですね。
マッチに向いた新機軸のマルチハルが欲しい所です

個人的にはオフショアロングのフリーとレースのほうが向いていそうな気がします。VOLVOなんかはOPEN 60とかモノハルじゃなくてマルチハルだと、なんかあっても不沈にしやすいし、心置きなく吹っ飛ばせるんでいいんじゃないでしょうかねえ。

投稿: まなてぃ | 2009年11月23日 (月) 20時08分

どうもこんにちは。

コメントありがとうございます。

でも、私は決してプロではありませんし、趣味でやっていますので、時々変なことも書くとは思いますが、どうかご容赦ください。

私も全く同感で、折角ですからアリンギとオラクルには手に汗握る接近戦をみせて欲しいと思います。

贈与証書に記された「1本マストなら最大水線長90フィート」という規定以外存在せず、従来の"クラスルール"の縛りもなくなった今回のアメリカスカップは、いわば「なんでもあり」のレースですから、間違いなく人々に語り継がれる対戦となるでしょう。

本当に楽しみです。

投稿: とんべえ | 2009年11月26日 (木) 06時27分

まなてぃさん、いつもコメントありがとうございます。

エド・ベアードのインタビューのまだ翻訳できていない部分で、「本来マルチハルはフリーでの最高速を狙ったボートで、アップウィンドやランニングは得意ではない。でも、今回の対戦の場合、これら不得意な角度での帆走性も確保しなければならない」という発言をしています。

よって、アリンギ・オラクル双方とも単なるスピードレースではなく、それなりにマッチレースでの使用を念頭に入れたデザインを採用しているとは思います。

でも、あのカッ飛び映像をみると、一体どんなマッチになるのか想像し難いですよね・・・

投稿: とんべえ | 2009年11月26日 (木) 06時35分

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