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2010年1月14日 (木)

カップよ、何処へ行き給ふや - 交渉決裂、9度目の法廷対決へ!

1月12日付の当ブログでもお伝えした、シンガポールでのアリンギ・BMWオラクルの会談は、2日目となる1月13日も交渉が続けられましたが、結局合意に至ることができず決裂してしまいました。

その結果、BMWオラクルは、アリンギの防衛艇「アリンギ5」のセイルが贈与証書に定められた使用艇の原産国規定に違反するとして、再びニューヨーク州最高裁判所へ提訴、第33回アメリカスカップは実に9度目となる法廷での対決へ向かうこととなりました。

Telegraph.co.uk: America's Cup meeting falls apart as furious BMW Oracle head back to the courts

この事態に対し、アリンギはチームの公式サイトへ声明を発表し、「アリンギ5」のセイルはスイス製であることを重ねて主張すると共に、今回のBMWオラクルの行動はアリンギを法廷で失格にしようとする企みであると、激しく非難しています。

Alinghi: BMW Oracle seeks to disqualify Alinghi and to win the America's Cup in court

この声明の中でアリンギのスキッパー ブラッド・バタワースは、「法廷闘争の結果、BMWオラクルは他の18チームを排除し、アメリカスカップへの挑戦権を獲得したのに加え、今度はカップを法廷で勝ち取ろうとしている。今回の提訴は、2日目の交渉を進めようとしていた我々にとって大きな驚きであり、著しく信頼を損ねるものである。彼らはレースで闘う準備が出来ていないことは明らかだ。」と述べています。

一方のBMWオラクルも、チームの所属母体であるゴールデンゲート・ヨットクラブ(GGYC)の公式サイトに声明を発表すると共に、同1月13日チームのCEOであるラッセル・クーツがバレンシアにおいて記者会見を行い、アリンギ側の対応を厳しく非難しています。

GGYC: GGYC Statement Singapore Talks Dated: Jan 13, 2010

GGYC: Third Statement on Constructed in Country

クーツの記者会見の詳細は、地元バレンシア・セーリングが伝えています。

Valencia Sailing: Russell Coutts press conference - Valencia - 13 January 2009

この記者会見の中でクーツは、「交渉2日目の段階で、合意書の草案はアリンギの代表者(ブラッド・バタワースとハーミッシュ・ロス)によって、ほぼ書き上げられおり、双方の代表者は文書にサインする直前まできていた。にも関わらず、ジュネーブ側の意向により、突如撤回されてしまった。」と、アリンギのオーナー、エルネスト・ベルタレリの介入により交渉が決裂したことを暗に示唆しました。

バレンシア・セーリングによると、この合意しかけていた文書の内容に関しクーツは一切言及しなかったということですが、BMWオラクルの提案によりレース日程の延期が盛り込まれていたと見られています。

これに対しクーツは、もし時間が与えられるなら、両チームとも更に開発を進めることができるであろうとしながらも、オラクル側が準備不足であるというウワサは否定し、来週にも「BOR 90」はバレンシアでの帆走を開始すると答えました。

また、アリンギが使用しているセイルの原産国問題に関し、何故ISAFが指名したジュリーに判断を委ねず、ニューヨーク州最高裁判所へ提訴したのかを尋ねられたクーツは、「使用艇の停泊地等、贈与証書に直接規定されていない部分はジュリーに判断を委ねることができるが、原産国問題は贈与証書に明記されている要件である為、ニューヨーク州最高裁の判断を仰がねばならない」と説明しました。

アリンギが「アリンギ5」のセイルはスイス製であると再三主張していることに対しては、「3DLを製造できるのは、世界中でネバダとスリランカの2箇所しかなく、スイスに存在しないことは明らかだ。もちろん"原産国"に関し、例えばセイルにセイルナンバーを貼りつけた場所が原産国だというような解釈をアリンギが持っているなら別だが。」と、クーツは述べました。

なお、この記者会見の数時間前、エルネスト・ベルタレリとバレンシア市長リタ・バルベラの交渉も決裂していたことが、バレンシア市により発表されたそうです。バルベラによると、ベルタレリはバレンシア市と共催で第33回アメリカスカップを開催することを望まず、あくまで"プライベートな"レガッタとして開催したいと考えているということです。

これら状況から、シンガポールで双方の代表者が協議する一方で、遠く離れたバレンシアにおいてアリンギのトップが全く異なる交渉を行っていては、まとまる物もまとまらないといった雰囲気が、記者会見場に漂っていたとバレンシア・セーリングは伝えています。

さて、これに対し、アリンギは以下のブラッド・バタワースの談話を追加で発表しています。

Alinghi: For the Record: Singapore - Brad Butterworth

「我々は現地時間1月12日の朝9時から夜8時まで、BMWオラクルの代表者と協議を行い、多くの点で合意したが、まだ摺りあわせを行わなければならない問題が幾つか残っていた為、翌朝協議を再開することで合意した。

我々はISAFの代表であるデイビッド・ケレット、さらにISAFが第33回アメリカスカップのジュリー議長として指名したデイビッド・ティレットと、翌日残件を協議する充分な時間を取るまでは、邪魔になりかねないメディアを排除することでも合意していた。我々は共に夕食をとりながらも協議を続け、こういった内容の紳士協定に合意して初日の交渉を終えたんだ。

翌日9時半ティレット同席の元、協議を再開したとき、BMWオラクル代表のトム・イーマンは、我々が寝ている間にニューヨーク州最高裁に提訴したこと、そして、その事実をプレス発表したことを告げてきた。

その段階で、両者の関係は非常に気まずいものとなった。この騙まし討ちにも関わらず、ISAFの代表者が、とにかく合意内容を我々のチームの本部へ伝えるべきだと促したから、それに従った。

こうして会議は終わり、ISAFの関係者は空港から去っていった。そして午後となり、最初BMWオラクルはこの合意にサインするつもりだと聞かされていた。しかし、私がバレンシアのチーム関係者と協議をしている間に、オラクルは合意を取り下げてしまった。」

こうなると、言った言わないの世界ですが、BMWオラクルの提訴がバタワースの言うとおり、ニューヨーク時間の1月12日昼、即ちシンガポール時間の深夜に行われたのは事実です。

ともかく、開幕日まであと1ヶ月を切った段階での交渉決裂となりました。今後どういったスケジュールで裁判が行われるのか、現段階では明らかになっていませんが、これにより2月8日の開幕はほぼ不可能となったのではないでしょうか?

この2年半に渡り、アリンギとオラクルは何度も何度も交渉のテーブルに着きましたが、一度たりともまともな合意に至った例がありません。

1月8日付の当ブログでも書きましたが、やはりエルネスト・ベルタレリとラリー・エリソンが相容れるということは、未来永劫ないのかもしれません。

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