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2010年1月18日 (月)

"フェデラーのラケット" - ベルタレリとクーツの口論

アリンギのオーナー、エルネスト・ベルタレリとBMWオラクルのCEO、ラッセル・クーツのメディアを介した口論が続いています。

1月15日防衛艇「アリンギ5」の帆走を開始したアリンギは、週末も休日返上でテストを続行しました。

Alinghi: BMW Oracle chase boat 0 - Alinghi 1

1月17日にはラッセル・クーツ、ジェームス・スピットヒル、ジョン・コステキが乗り込んだBMWオラクルのチェイスボートが、「アリンギ5」の偵察に現れました。アリンギはこの「アリンギ5」とBMWオラクルのチェイスボートの"追いかけっこ"のことを公式サイトで採り上げ、半艇差で「アリンギ5」が勝ったと、はしゃいでいます。

また、同日の帆走シーンの動画もアップされていますが、海面からして非常に軽風と思われるコンディション下でも片ハルを上げ軽快に滑る「アリンギ5」の姿を確認することができます。

「アリンギ5」は本当に軽く仕上がっているようです。

さて、一方で先週シンガポールで決裂してしまったアリンギ・オラクル双方の会談に関する続報も入っています。

BMWオラクルの所属母体であるゴールデンゲート・ヨットクラブ(GGYC)が発表したステートメント、並びにラッセル・クーツがバレンシア・セーリングやセイル・ワールドに語ったところによると、シンガポールでの顛末は以下のとおりであったということです。

SailWorld.com: Gladwell's Line: Russell Coutts on the America's Cup bunny hunt

Valencia Sailing: Russell Coutts talks to Valencia Sailing

  • 会談初日1月12日の終わりごろ、会談内容に沿った合意書の草案はアリンギのハーミッシュ・ロスによって、PCを使いその場で作成され、オラクル側代表であるトム・イーマンらもサインすることに同意していた。
  • 夕食の直前になりアリンギ側代表(ブラッド・バタワースとハーミッシュ・ロス)は本部からの電話を受け、合意書にサインしないように指示された。
  • オラクル側はアリンギ側に対し翌朝10時まで猶予を与え、もし合意書にサインしないなら、セイルの原産国問題をニューヨーク州最高裁に提訴することを伝えた。
  • 翌朝遅れて現れたバタワースは、まだサインできないと答えた。そのため、オラクル側は提訴に踏み切ったが、一方で交渉は継続した。
  • 同日昼頃までに、再びハーミッシュ・ロスがPCを使って合意書の草案を修正した。
  • バタワースとロスがチーム本部と協議の為、退席した間に、オラクル側はこの修正合意書にサインした。
  • フライトの都合があった為、ISAFのデイビッド・ケレットも合意書にサインして去った。デイビッド・ティレットはサインせず、オラクル側代表と共に部屋へ残り、バタワースらの戻りを待った。
  • その後、ロスが戻ってきて、アリンギ本部よりサインしてはいけないと指示されたことを告げた。

やはり、交渉の当事者たちは基本的に合意に達していたにも関わらず、エルネスト・ベルタレリが難色を示したためご破算となったというのが真相のようです。

ベルタレリが合意を認めなかった理由に関しては、1月15日「アリンギ5」がバレンシアでの帆走を開始した際に、ベルタレリが報道陣に対し語ったコメントから窺い知ることができます。

TVNZ: Alinghi: Oracle will win if we can't use sails

Valencia Sailing: Alinghi 5 sails for the first time in Valencia

TVNZやバレンシア・セーリングによると、ベルタレリはオラクル側が再びニューヨーク州最高裁での提訴を持ち出したことに強い不快感を表しており、「ラッセル、そんなに法廷でアメリカスカップを勝ち取りたいなら、私に電話をすればいい。裁判所へカップを持って行ってやるから。」というクーツに向けたコメントを発しています。

その上で報道陣に対し、「3DL」のテクノロジーは元々スイスで編み出されたものであり、1995年以来アメリカスカップの防衛者・挑戦者双方が、その恩恵を享受してきたことを挙げ、もしアメリカの裁判システムがアリンギに対し「3DL」の使用を認めないなら、「ロジャー・フェデラーに対し、ラケットを使わないでタイトルを守れと言っているみたいなものだ」と、痛烈な皮肉を述べています。

また、何故3戦先勝方式(最大5戦)や4戦先勝方式(最大7戦)を受け入れないかに対し、「こんな形での対戦は一度限りであり、何レースで闘うかに関しては全く興味がない。それならば、いっそ(上物のウィスキーのように)凝縮されたほうがマシだ」ということです。

このベルタレリの発言に対しクーツも反撃しており、「原産国規定はアメリカスカップのDNAであり、"各国間の対戦"と規定した贈与証書の大原則でもある。我々は法廷でカップを勝ち取りたいのではなく、公平なルールの下、海上での対決で勝ち取りたいと考えているだけだ。フェデラーだって、違法なラケットをウィンブルドンで使ったりしない。」と述べています。

この「3DL」の原産国問題に関しクーツは、「アリンギが原産国問題をクリアしたセイルを製造可能なことは判っている。(3DLではなく)3DIセイルであればスイスでも製造可能だからだ。私がアリンギに居たとき、3DI工法を使ったセイルをスイスで製造したことがあり、もう一度その手法をとれば良いはずだ。」としています。

そして、シンガポールでの会談が決裂したことに関連し、「私がアリンギを去る前は、何事も皆で集まり協議して決定した。そして、一旦決定したことは覆さなかった。今回のシンガポールでの一件や、最近の一連の行動を見ていると、今や彼らは全く異なったやり方をしているようだ」と語りました。

セイルワールドのグラドエル記者によると、交渉は依然続けられているとのことですが、ベルタレリの言動を見る限り、双方が合意に至ることは非常に難しそうに思われます。

ニュージーランドの英雄であったラッセル・クーツが、バタワースらと共にアリンギへ加入した経緯については、下記の斉藤愛子さんのレポートで詳しく解説されています。

斉藤愛子のSailing News: クーツの誕生日はノーレース

いつも資金集めに悩まされていたクーツが、ベルタレリの豊富な資金力を得て作り上げた理想のチーム、それがアリンギだったのです。しかし、いつしか二人は、これ程にまで、いがみ合う間柄になってしまいました。二人が和解する日は、まだまだ遠そうです。

さて、裁判所命令どおり2月8日開幕の可能性が高まる中、クーツはチーム関係者全員が参加したミーティングを行い、残された日程で何を行うかを協議すると共に、全員が目標に向かって全力を尽くすことを誓い合ったということです。

一方、BMWオラクルの挑戦艇「BOR 90」にソフトセイル用マストが立てられた件に関し、デザインコーディネータ、イアン・バーンズがチームブログへ寄せたコメントによれば、「BOR 90」へ幾つかの構造変更が加えられたため荷重測定が必要となり、その為にソフトセイル用のマストを使用したということでした。荷重測定の結果は特に問題なく、ソフトセイル用のマストは既に撤去されました。

BMW ORACLE Racing Blog: A clean bill of health

バーンズのコメント:「そして次はウィングセイルだ。明日には全て元通りってわけだ。」

「(火曜日に帆走を開始するかを問われ)その予定だ。でも、あわてるつもりはない。正しく順序だって準備をすることが、今の目標なんだ。ボートスピードの勝負となりそうだから、全てを完璧に仕上げておかなければならないからね。」

ということで、ソフトセイル用マストを立てたのは、何らかの問題があったからではありませんでした。あぁ良かった~

さて、いよいよハードウィングの登場です。世紀の対決へ向け、目が離せなくなってきました!

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