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2010年1月 9日 (土)

【速報】 第33回アメリカスカップ 修正レース公示・帆走指示書発表!

現在のアメリカスカップ保持者であり、アリンギの所属母体であるスイスのヨットクラブ、ソシエテ・ノーティーク・ドゥ・ジュネーブ(SNG)は、ヨーロッパ時間の1月8日夜、第33回アメリカスカップの帆走指示書、並びにレース公示(修正版)を発表しました。

なお、これら文書の内容は、来る1月12日ISAFが本大会のジュリー委員長として指名したデイビッド・ティレット同席の下、シンガポールにおいて開催されるアリンギ・BMWオラクル双方の会談において協議されるため、現段階では何れも草案(draft)とされています。

Alinghi: SNG publishes draft 33rd America's Cup Sailing Instructions

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それでは、まずレース公示の修正版から見ていきましょう。

2009年11月11日付の当ブログでもお伝えしましたが、これはまだアリンギ・BMWオラクル双方が開催地を巡り法廷で争っていた昨年11月10日「バレンシアで開催すると仮定して」アリンギ側が発表したレース公示の修正版です。

その後、ニューヨーク州最高裁判所が、ISAFの強い関与の下、防衛者・挑戦者双方が協議を行い全てを決定するように求めた判決を出しました。今回の修正版には、この判決に伴い12月15日シドニーのおいて開催されたアリンギ・BMWオラクルの会談の結果が反映されています。(修正点は赤文字で記載)

1ページ: 11月10日版ではマッチレース規則であるRRS(セーリング競技規則)付則Cを適用せず、代わりに付則Q(アンパイア付フリートレース規則)を適用するとされていました。今回修正版では付則Qの適用を取りやめ、付則Cに若干の修正を加え適用することになっています。

6ページ: 2007年7月11日に提出された挑戦状に従い、挑戦者側は「USA」を挑戦艇として使用しなければならないとする一方で、防衛者側は第1レースのスタートまでに防衛艇を決定すればよいと記されています。これは贈与証書の規定通りです。(註: BMWオラクル側は上記挑戦状において、挑戦艇の名称を「USA」としていました。従って「BOR 90」は対戦の際「USA」に改称されることになっています。)

7ページ: レース日程に関し、これも贈与証書どおり2戦先勝方式(最大3戦)とし、各レースの間には1日のインターバルを開けることが規定されています。第1レースは2月8日(月)、第2レースは2月10日(水)、第3レース(必要な場合)は2月12日(金)であり、2月15~25日が予備日として宛てられています。レースがキャンセル或いは延期された場合、上記規定どおり隔日でずれていくことになります。

8ページ: 懸案の風速・波高の制限に関し、風速15ノット以上・波高1メートル以上の場合レースを行わないという点は変更なしですが、風速に関し今回新たに「海上60メートルの位置で」という文言が追加されています。防衛艇・挑戦艇ともマスト長約60メートルと伝えられていますので、ほぼマストトップの位置で15ノット以上吹いている場合は、レースは行われません。

8ページ: 挑戦艇「USA」の計測に関し、当初は満載水線長、最大幅が「90フィートであること」とされていましたが、「90フィートを超えないこと」と修正されています(喫水に関しても同様)。これも裁判における争点のひとつであり、BMWオラクルの主張が認められる結果となっています。

10ページ: レースコースに関しても、贈与証書のとおりとなっています(これに関しては帆走指示書の方で述べます)。

11ページ: レース艇の係留地に関し、11月10日版では「ダルセナかバレンシア港湾内」とされていたのに対し、今回「ダルセナに限定する」と修正されています。これは、バレンシア商業港内に独自のベースを設営しているBMWオラクルの動きをけん制していると思われます。新たな火種となりそうです。

11ページ: 無線機器の使用制限が緩和され、GPS・テレメーターの搭載やオンボード・コミュニケーションシステム(音声・データ)の使用が認められました。これらには放送用機器も含まれています。

14ページ: ライフジャケットや馬蹄型ブイ等、安全備品の搭載が新たに求められることになりました。モンスターマルチハル同士の対決に当たり、安全面でも配慮したということでしょう。

つづいて、帆走指示書を見てみましょう。

1ページ: レース公示と重複していますが、今回防衛者と挑戦者が相互合意に達しなかった為、贈与証書の規定に従い、防衛者側のルール・帆走規則に則ってレースを行うことが改めて明記されています。

4ページ: 放送機器、テレメーターはホスト局によって1月28日までにレース艇へ搭載されると記されているので、何らかの放送があることを期待しましょう!

6ページ: 予告信号は10:00(なお、レース公示には「8:00以前と16:30以降に予告信号は発せられない」と規定されています)。 また長時間に渡りスタートが順延された場合は、予告信号の15分前に安全無線を使用して、レース委員会からレース艇へレース開始の事前通達がされます。

6ページ: 第33回アメリカスカップ用の公式クラス旗が、1月28日までに制定されるということです。どんなデザインになるか楽しみですね。

6ページ: 予告信号までにコンパスコースが本部船上で提示され、準備信号後のコース変更はありません。またコース短縮も一切ありません。

7ページ: 贈与証書には、第1・3レースの第1レグは「20ノーティカルマイルの風上航」、第2レースの第1レグは「最初の一辺は風上航」と規定されています。その為、先行艇が第1マークを回航する前に25度以上の風向がシフトし、振れ戻しがないと判断された場合は、レース委員会の判断によりレースは中止されます。

7ページ: 次レグのコース変更は無いとされています。6ページ目の記述と合わせると、準備信号後はゴールまで、コース変更もコース短縮も一切ないという解釈になります。

8ページ: タイムリミットは7時間。これも贈与証書どおりです。

8ページ: プロテストに関し、どちらかの艇が2勝した後でも、規定時間内であれば再審の申請ができるとしています。これにより、RRS 66は変更されます。

13~18ページ: レースコース図が記載されています。贈与証書の規定どおり、第1・3レースは片道20マイルの上下コース。第2レースは一辺13マイルの正三角形で、第1レグが風上航となります。

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以上が、第33回アメリカスカップのレース公示(修正版)、並びに帆走指示書です。これらの内容に関しては、1月12日ジュリー議長デイビッド・ティレット立会いの下、アリンギとBMWオラクルの間で改めて協議されることになっています。

思い返してみると、アメリカスカップが法廷闘争の泥沼に陥った理由は、2007年前回大会終了直後に発表された次回大会の議定書(プロトコル)の中で、アリンギ側がジュリー団の選任/解任権を独占しようとしたことに端を発します。

2年半に渡る法廷での争いを経て、結局ルールはISAFの関与の下、策定管理されることとなり、ラッセル・クーツが主張してきた通り、ルール作りの透明性が確保される結果となりました。

近代スポーツの発展した21世紀において、これは正しい方向性といえますが、一方で19世紀に制定された贈与証書を盾にニューヨーク・ヨットクラブが130年に渡ってカップを防衛してきたことも事実であり、アリンギがいうように、もはやアメリカスカップは以前と同じアメリカスカップでなくなってしまったのかもしれません。そもそもアメリカスカップの成立の方が、ISAFの成立よりずっと古いのですから・・・

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