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2010年1月15日 (金)

アリンギ5、バレンシアでの帆走を開始!

さて、1月12・13日の両日シンガポールで行われた直接会談が決裂し、行方がわからなくなってしまった第33回アメリカスカップですが、その一方で防衛者アリンギと挑戦者BMWオラクルの双方は、開催地であるスペイン、バレンシアでの準備に余念がありません。

現地時間の1月15日(金)アリンギの防衛艇「アリンギ5」は、バレンシアでの帆走トレーニングを開始しました。

Alinghi: Alinghi 5 sails in Valencia for first time

上記アリンギの公式サイトによると、第33回アメリカスカップの防衛目指す「アリンギ5」にとって、バレンシアでの初セーリングとなったこの日、バレンシア州知事フランシスコ・カンプス、バレンシア市長リタ・バルベラも駆けつけ、対戦での健闘を祈りバレンシア州の州旗を贈りました。

Alinghi TVで公開された上記映像によると、駆けつけたメディアに対しアリンギ代表エルネスト・ベルタレリは、「ご覧の通り我々のチームもボートも、そして私もここにいます。我々はレースで闘う準備ができているんです。」と、2月8日からのアメリカスカップ開催に意欲を見せました。

その後、「アリンギ5」はバレンシア沖にて日暮れまで帆走を行いました。ウェーブピアーシングバウの効果で風下側のハルを海面に突き刺すように走る「アリンギ5」の姿を見ることができます。

シンガポールでの会談が決裂した後、ベルタレリはスイスのトリビューヌ・ドゥ・ジュネーブ紙に対し、「もはや我慢の限界だ。我々は、アメリカの法制度を盾にしたオラクルの脅迫には決して屈しない。我々は2月8日からレースを行い、海上での対決でケリをつける」と語っています。

Tribune de Genève: Bertarelli: «Alinghi sera au départ le 8 février»

一方のBMWオラクルですが、所属母体であるゴールデンゲート・ヨットクラブ(GGYC)のサイトに会長マーカス・ヤング名義の声明を発表し、1月14日付の当ブログでもお伝えしたブラッド・バタワースの談話に対して、「BMWオラクルのトム・イーマンとリチャード・スレイター、更にISAFのデイビッド・ケレットは合意書への署名を済ませていたのに、合意を取り下げたのはアリンギの方である。ついては、バタワースの談話を即時撤回するよう求める」としています。

GGYC: GGYC-SNG Letter re: Unreserved Apology Dated: Jan 15, 2010

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サンフランシスコ湾に面するゴールデンゲート・ヨットクラブのクラブハウス(2009年1月1日撮影 Photo Copyright: Kazenotayori)

ここ数日の情報を見ていると、アリンギのブラッド・バタワースとBMWオラクルのトム・イーマンは、どうやらレースを延期する方向で合意していたように思われます。恐らく合意の中には、レース数を増やす(3戦先勝か4戦先勝)ことも含まれていたでしょう。これは、バレンシア市の要望とも合致するものです。

しかし、最後の最後になって、エルネスト・ベルタレリがこれを認めず、バタワースが説得しているうちに、オラクル側はテーブルを立った・・・というのが真相のように思われます。

結局、カップの防衛者であるにもかかわらず、アメリカの法制度を巧みに操ったBMWオラクルによって、自身の意に反した形での第33回アメリカスカップ開催を強いられることになった(と考えている)ベルタレリとしては、たとえどんな内容であろうと、BMWオラクル側からの提案は受け入れられないということなのでしょう。

一方、BMWオラクルがこの期に及んで開催延期を企てる理由はただひとつ、現状では勝ち目がないと見ているとしか考えられません。

アリンギとオラクルは、双方のボートがベールを脱いだ時から、それぞれ偵察部隊を送り込み、相手のボートを徹底的に解剖しています。最初に使用艇を進水したのはオラクルの方でした。従って、アリンギはオラクルのボートを充分解析した上で、自艇の建造に入ることができました。つまり、ジャンケンの後出しみたいなものです。

その段階でオラクルは避けられないハンデを負ったことになります。実際オラクルのトリマラン「BOR 90」を入念に偵察したアリンギは、軽量ボートで対抗することを決意し、徹底的に軽量化を行ったカタマラン「アリンギ5」を建造しました。

これに対しオラクルも、左右アマの改造からハードウィングセイルの導入と矢継ぎ早に改良を加え、オラクルの発表によると新造時から約30%ボートスピードが改善されたとされています。

しかし、ここで思い出さねばならないのが、昨年7月10日付の当ブログでもご紹介したCクラスカタマランの大御所スティーブ・クラークが、セイル・ワールドの取材に対し語ったマルチハル艇における絶対条件、「必ず軽いボートが勝つ」です。

「アリンギ5」と「BOR 90」の両艇を見比べた時、どう見みても細いYビームにランナーを張り巡らしてプラットフォームを作り上げた「アリンギ5」の方が、軽く仕上がっているように見えます。

オラクルとしても、アリンギがカタマランを準備しているという情報を入手した段階であらゆる検討を行い、新たにウェーブピアーシング型のアマを新作し、ヴァカからセンターボードとラダーを撤去して接水抵抗を減らす等の改良を重ねたものの、軽量ボートである「アリンギ5」には追いつけないことが判明、より背の高いマストを導入した結果はディスマスト、結局最後に巨大ハードウィングセイルという未知のテクノロジーに手を出さざるを得なかったというのが真相なのかもしれません。基本設計の差から来る重量差を埋めるため、無理をしているのはオラクルの方とも言えます。

さて、アリンギはこのまま2月8日の開幕を目指し、一方オラクルは「3DL」の原産国問題を盾にアメリカの法制度を利用した開催延期を目指すと思われます。

BMWオラクルがこの期に及んで引き延ばしを謀っているのを見て、ベルタレリは逆に勝利を確信しているかもしれません。もし本当は現段階で「BOR 90」の方が速く、この引き延ばしがベルタレリに2月開催を決意させる為のBMWオラクルの罠だとしたら、それはとてつもない高等戦術といえます。

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