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2010年1月23日 (土)

勝敗の分かれ目は8ノット

まず最初にお恥ずかしい訂正です。

え~、一昨日アップしました1月21日付記事のタイトルに使用した「合間見える」は誤字で、正式には「相見える」であるとのご指摘をKJさんから頂戴しました。全くご指摘の通りで、お恥ずかしい限りです。謹んで訂正させていただきます。もし何か間違いがありましたら、これからも遠慮なくご指摘いただけると幸いです。しかし、「合間見える」なんて、まるで剣道か柔道の対戦みたいでしたね

さて、その1月21日付当ブログでご紹介したアリンギのメディアデーの様子が、アリンギTVにアップされました。

この中でアリンギのオーナー、エルネスト・ベルタレリは以下のように語っています。

「最初にアリンギは現地での帆走テストを既に5日間も行ったことに触れたい。アルプスを越え、ジェノバ、アラブ首長国連邦を経てバレンシアと移動し、ここバレンシアではテントが吹き飛ばされそうになりながらも、絶えず的確な判断で対処してきた。これがアリンギの強みだ。私も最善の選択をしている。ボートは素晴らしく速く、私自身セーリングを毎瞬楽しんでいる。対戦が本当に楽しみだ。」

「アリンギは既に準備が出来ている。2月8日からの対戦は裁判所により義務付けられたものであり、ボートもチームも私も8日にはレースコースでBMWオラクルを待ち受けている。」

「BMWオラクルは挑戦者セレクション・シリーズを逃れ、カップへの挑戦権を手に入れた上に、今度は防衛者まで失格にしようとしている。今回のセイルの原産国問題は、全くバカげた話だ。ノースセールの3DLは1995年以来、防衛者、挑戦者双方で使用されている。さらに3DLの技術はスイスで編み出されたものであり、これは世界中の特許局でも確認可能だ。」

「マルチハルの経験に乏しいGGYC(ゴールデンゲート・ヨットクラブ:BMWオラクルの所属母体)は、トリマランで我々に挑戦するため、フランスのボートをコピーし対戦しようとしている。恐らく彼らはマルチハル艇でのレガッタを開催したことも無く、またマルチハルのレース艇を所有したことのあるメンバーすらいない。自分たちはフランス製のボートを使用しながら、我々のセイルがスイス製ではないなどという法外なことを言い出すとは、思いも寄らなかった。」

エルネスト・ベルタレリは、元々スイス・レマン湖において防衛艇「アリンギ5」のベースともなったカタマラン「ル・ブラック」でレース活動を行っていた経験があるので、マルチハルでの対戦に相当な自信をもっているようです。

さて、同日引き続き行われたBMWオラクルのメディアデーの様子も、Yachting World誌によってアップされていますので、こちらもご紹介しましょう。

Yachting World: Coutts Speaks Out

上記サイトでは、クーツが報道陣に対しぶちまけたコメントを音声で聞くことができますが、ちょっと長いので割愛させてもらって、ここでは同じくYachting World誌がYouTubeにアップした、ラッセル・クーツによるウィングセイルに関する技術解説の模様をご紹介させていただきます。

この中でクーツは以下のように語っています。

「ウィングに使用されているフィルムは航空機用のフィルムであり、フレームにかぶせた後、熱をかけてシュリンクさせる。」

「ウィングの構造的アドバンテージのひとつは、各部ごとにサポートできる点だ。ソフトセイルの場合、コーナー間でテンションをかけ全体を支えねばならないが、ウィングは各部分ごとに支持すればよい。」

「フラップごとに角度調整が可能であり、セイルに掛かる力点(CE)を瞬時にしてシフトすることができる。例えば軽風下では、トップのフラップにもキャンバーをつけ、ヒーリングフォースを上方へシフトさせ、強風下では下部のフラップにキャンバーをつける一方で、トップのフラップを開くことによって、ヒーリングフォースを下方へシフトさせるということが可能だ。」

「ウィングセイルの揚力効率はソフトセイルの2~3倍も良く、ずっと小さいセイルエリアでも同等の揚力を得ることができる。」

「(ウィングセイルは扱いにくいのではという質問に対し)ウィングのテクノロジーは新しいものではなく、恐らく1930年代からあったもので、しかもその頃から余り変わっていない。ウィングの利点はセイルシェイプやセイルにかかる力を、かなり正確に再現できることだ。ソフトセイルは形が変わりやすいため、シェイプを再現するのがずっと困難なのだ。言い換えると、ウィングなら適正な揚力分布を作ることができるともいえる。逆に言うと、如何にして各フラップの角度を状況に合わせ最適化するかが、我々にとって大きなチャレンジでもある。」

つまり、ハードウィングセイルはソフトセイルとシェイプもトリム方法も全く異なるため、様々なコンディションに合わせた最適化を行うには、もう少し時間が欲しいというのが、クーツの本音なのかもしれません。

このウィングセイルを搭載したBMWオラクルの挑戦艇「USA」のパフォーマンスに関して、同じくYachting World誌のブログコーナーに「風速6~8ノットのコンディション下、25ノット以上で帆走していた」とのレポートが映像付で紹介されています。

Yachting World: Tracking the Tri

それでは、BMWオラクルは現時点で対決したらどうなると考えているのでしょうか?

これに関し興味深いYouTune映像が、セーリング・アナーキーのACフォーラムで紹介されていました。

これは、BMWオラクル・セーリングチームの一員であるマックス・シレーナに対するインタビューです。全てイタリア語のため良くわかりませんが、要点は以下のとおりのようです(当ブログの読者でイタリア語がわかる方がおられましたら、是非アドバイスください!)

  • 勝敗は2月8日の朝にわかる。
  • そのとき、もし風速が8ノット以下であればアリンギが勝ち、8ノット以上であればBMWオラクルが勝つ。
  • 軽風下であれば、アリンギ5のほうが速い。
  • ダウンウィンドでは、USAの方が僅かに速いだろう。
  • 恐らく接戦となり、イチ上では両艇接近しているであろう。

対戦まで2週間余りとなったこの段階でも、依然両者の法廷闘争は続けられており、BMWオラクルが提訴したセイルの原産国問題に対する反論書が、昨日1月22日アリンギ側からニューヨーク州最高裁へ提出されたところです。

従って、2月8日に対戦が行われるのか否かすら依然定かではありませんが、もし本当に勝敗の分かれ目が8ノットであるならば、あとは風の神様の裁定を待つしかないかもしれません。

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コメント

いつも更新を心待ちにしているイタリア在住セイラーですが
内容はだいたいカバーできていると思います。

後は

誰がイタリア人が乗るのか?  
マテオと答えていた


セーラーというよりは技術者、宇宙飛行士にちかい?

この技術進歩は船を化け物にしているが結局
どちらの船も未知数の能力だしどうなるかは終わる
まで判らないのがレガータだしセーラーの仕事のセ
オリーともいえる
法廷や報道に対して
それぞれの解釈があるだろうと思うが
今に始まった勝負じゃなく3年もやってきたんだか
ら海で決着を着けたいと

的なことを発言しているようです。          

投稿: daiichifukumaru | 2010年1月25日 (月) 21時33分

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