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2010年2月16日 (火)

次に目指すもの - BMWオラクルの発表

まず、2月14日に行われた第33回アメリカスカップ第2レースのハイライト映像がYouTubeへアップされたので、ご紹介します。

世紀のマルチハル対決は、それはそれで興味深い対戦でしたが、アメリカスカップの歴史、或いはセーリング界全体の流れから言うと、やはり本流とはなり得ないイレギュラーな存在であった気がします。見事にカップを勝ち取った「USA」も、残念ながら防衛に失敗した「アリンギ5」も、テクノロジーとして余りに突出しているため、終わってみると、まるで蜃気楼でも見ていたかのようです(中東ラアス・アル・ハイマで開催されていたら、本当にそう感じたことでしょう)。

というわけで、ブログ主とんべえの興味は既に次回大会に飛んでいます。

"正義"を振りかざしてカップを強引に奪い去っていったBMWオラクルは、一体どんな次回大会を目指すのか?

究極のハイテクマルチハルでのスピードレースを見てしまったセーリングファンに、一体どんな形の新しいボートを提案するのか?そのボートを使ったマッチレースはどうなるのか?

これに対し、BMWオラクルはカップ奪回から一夜明けたバレンシアで記者会見を行い、次回大会に関するヒントを明かしています。

まず記者会見の映像はこちらです。

Watch live streaming video from bmworacleracing at livestream.com

この会見の模様はバレンシアセーリングもレポートしていますが、この中でラッセル・クーツは、今回の大会で得られた教訓を生かし同じ過ちを繰り返さない為にも、全ての参加者との対話を進め速やかに事態の正常化を図りたいとする一方で、結論を急ぐことも避けたいと語ったとのことです。

Valencia Sailing: The future of the America's Cup according to the new Defender

会見の要点を列記してみます。

独立したレース運営:

全てのレースオフィシャル、アンパイア、計測委員、ジュリーメンバーは、防衛者から完全に独立した存在となる(具体的にどういった組織となるかは未定)。全ての競技者に対しフェアで公平なルールが採用される。

防衛者代表(チャレンジャー・オブ・レコード):

予想通り、マスカルツォーネ・ラティノの所属母体であるクルブ・ノーティコ・ディ・ローマ(Club Nautico di Roma)となることが発表された。(註: マスカルツォーネ代表ビンチェンツォ・オノラートは元々コスタスメラルダ・ヨットクラブのメンバーであったが、最近ローマへ移籍した。その理由についてオノラートは、昨日お伝えしたYouTube映像のなかで「コスタスメラルダの新会長とソリが合わないからだ」と答えている)。ラリー・エリソンはオノラートのことを「いい加減なことを言うような人物ではない」としている。

第34回アメリカスカップの日程、開催地:

クーツによれば、開催地について一切何も決まっていない。バレンシア(スペイン)を始め、カスカイス(ポルトガル)、サンディエゴ(米国)、サンフランシスコ(米国)等々、あらゆる選択肢がゼロから検討される。

その一方で、2003年のオークランドや現在のバレンシアのように、多くの参加チームのベースといったインフラを整備し得るだけのスペースがないことから、クーツは米国内での開催に関して余り前向きでなさそうだった。またクーツは、観客や参加チーム、さらにTV受けすることを考えると、軽風地域ではなく、フリーマントルのように良い風が入るか否かも重要な検討項目であると語った。

日程に関しても一切決まっていない。防衛者としては挑戦チームたちとの合意を目指す。

挑戦者選定シリーズと防衛者決定シリーズ:

挑戦者選定シリーズ(チャレンジャー・セレクション・シリーズ:CSS)に防衛者が期間限定で参加するというアリンギが前回提案したアイデアに対し、クーツは基本的に反対であると語った。クーツとしては、アメリカスカップの本戦で初めて防衛者と挑戦者が対面し、今回「USA」と「アリンギ5」が正にそうであったように、第1レースの最初10~15分までどっちが速いのか誰にもわからない方が良いと考えている。

一方クーツは、かつて行われていた防衛者決定シリーズを復活させるというアイデアも提示。もし他の米国ヨットクラブが興味を示せば、このアイデアは充分実現可能であるとした。

第34回アメリカスカップにおける使用艇:

クーツによれば、本件も何も決まっておらず、これからトップセーラーたちを巻き込んだ議論が始められる。数ヶ月前クーツは、マルチハルを次回大会で使用することは絶対ありえないと語っていたが、「USA」と「アリンギ5」の対決が予想以上に迫力あるものであった結果、マルチハルという選択肢もテーブルに乗せられる。

同時に建造艇数も重要な検討事項である。前回アリンギが主張した建造数を1艇に限定する案にクーツは否定的。クーツによれば、アメリカスカップのキャンペーンで最も大きな費用が掛かるのは全体の65%を占める人件費であり、2ボートキャンペーンの問題はボートの建造費自体ではなく、2ボートテストに際限なく時間が費やされることであるという。よって、2ボートテストに制限期間を設けることによって、コスト削減は可能であるとしている。

同時に2ボートキャンペーンを認めることにより、CSSに出場できない防衛者に対しても充分な練習機会を与えることができる。また、前述の如く防衛者決定シリーズを復活させることによっても、この問題を解決できるかもしれない。いずれにしろ、挑戦者・防衛者双方とも、同じ数のボートを保有できるようにする。

アリンギに対する提訴:

「3DL」の原産国問題に関する提訴は、アリンギに対しフェアなルールでの対決を保証させるために行われたものであり、対戦が無事終了した現在、提訴は取り下げるべきであると考えている。

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さて、クーツが披露した次回大会に関するこれらのアイデアを、皆さんどう思われますか?

私は、アリンギが2007年大会以降今回の大会までに提示してきた数々のアイデアの何れより、ずっと筋が通っていると思いますが、如何でしょう?

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コメント

解りやすく楽しい記事を読ませて頂いていつも感謝しております。
今回のアメリカスカップはとても楽しいものでした。
これまでの様なヨット界の中だけで通用する難解なルールや、モノハル艇での単調なレースとは違い、
マルチハルの迫力のあるスピード感に満ちた解りやすいレース展開は素人にも十分楽しめるものでした。
今回のアメリカスカップは正に『PARADIGM SHIFT』であったと私は思います。
昔に戻るのもそれはそれでいいかもしれませんが…
アメリカスカップの成り立ちがそうであったように、今後は今迄とは違った展開があっても私はいいと考えます。
マルチハルがぶつかり合ったり、横転して沈するようなレースがあってもいいのではないでしょうか?
モノハルでのレースは素人にとっては見るスポーツとしてはあまりにもつまらな過ぎます。
生意気な書き込みと思われるかもしれませんが、ご無礼を承知で述べさせていただきました事、お許し下さい。

投稿: は~ま | 2010年2月16日 (火) 09時19分

ゆうまでもなく、大賛成!!

う~むSF Bay Areaは無理かなあ。。無理そうだよなあ。。。Pier1からどこまで潰すか。。。
いっそアルカトラズ 笑
BayBridgeの完成予定は2014だし、CAは予算崩壊してるし。。。

大昔、故ブラッカラー(?)のころの予定コースが書いてある地図持ってますが。。

投稿: まなてぃ | 2010年2月16日 (火) 16時49分

おつかれさまです
オラクルの面子が乗艇するようすは、宇宙飛行士すら想像させるものでした
風(少しの)にのってあんなにスピードが出るなんて
という単純な喜びにセイリング界の未来を彷彿とさせるものがありました
このテクノロジーは海上、水上輸送の代替動力になりうる予感も
十分あったと思います。
しかしコンピューターを介した操船などは
言ってみれば船乗りの王者に求められることなのだろうか
帆を張りそこにある自然の恩恵を巧みに操るのが海の男であってほしい
とはいえ、このトライマラン本当にかっこいい!!ので
もう一回スケール縮小、技術濃縮の量産版みたいな形でも見てみたいというのも
あります。
色々言っても完全に方ハル一本で高速滑空するあの黒い化け物は
強烈すぎます
すいません個人的な感想でした。
こちらのブログがもたらしてくれた恩恵に感謝します。


投稿: daiichifukumaru | 2010年2月16日 (火) 19時22分

みなさま、お返事遅くなりゴメンナサイ。

いや、これからヨットレースはどっちへ進んでいくべきかを考えたとき、今回の大会は色々な問題提起をしてくれたと思います。

そして、我々も含めたファンひとりひとりが、こういった議論ができる土壌を作ってくれたようにも思います。

エリソンは、いろんな人の意見を出来るだけ聞きたいと言っていますから、その成り行きを楽しみにしておきたいと思います。

さらには、閉塞感漂う日本のヨット界にとっても、現状打破のヒントとなるアイデアが出てきたらいいのになぁ:::と、思ったりします。

さてさて、どうなることでしょう!

投稿: とんべえ | 2010年2月25日 (木) 05時33分

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