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2010年2月17日 (水)

第2レースのスタートは紙一重だった - ハロルド・ベネット

カップが終わって、ちょっと放心状態のブログ主とんべえです。

終わってみると呆気なかったですが、でもBMWオラクルの「USA」は本当に度肝を抜かれるボートでした。とんべえが見たのは「USA」がまだ「BOR 90」と呼ばれ、サンディエゴでテストを繰り返していたころですが、それでもあのハードウィングセイルは一目見ただけでホントに圧倒されます。なにしろ20階建てビル並のデカさですから・・・

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Copyright: BMW ORACLE Racing

自分で見たから(しかも挑戦艇だけ)いう訳ではありませんが、でも、あのデカさ、言い換えれば、あの常識外れのバカバカしさを見なければ、今回のカップの本質は理解できないんじゃないかと思います。20階建ビルが時速50~60kmで走ってくるというと、そのバカバカしさが伝わるでしょうか。 多分それが今回のレースの本質だったんでしょう。

こんなバカげた対戦は2度と行われないでしょう。その意味で、今回現地で本当に対戦を目にした人は本当に幸せです。これから「USA」と「アリンギ5」がどうなるのか一切伝わってきませんが、是非とも人々の目に触れる形で残して欲しいと思います。

話は少し前後しますが、カップ奪回に対するアメリカの反応を少しお伝えしておきます。

下記は一夜明けた2月15日付の全国紙「USA TODAY」とサンディエゴの地元紙「San Diego Union Tribune」のスポーツ欄です。

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15年ぶりにカップがアメリカに戻ってくるということで、さぞ現地は熱狂しているかというと、実はTVニュースでもほんの少し触れられただけ。新聞も一面はおろか、スポーツ面の、しかも隅っこに小さく載っているだけです。バンクーバー・オリンピック、更にはNASCARのデイトナ500の陰に完全に隠れてしまった感じです。

今回アリンギ・オラクル両チームのセーリングメンバーを見渡しても、アメリカ人セーラーはジョン・コステキただ一人(ラリー・エリソンは別として)。アメリカのセーリング界も停滞気味で、カップへの興味もすっかり薄れてしまったようです。デニス・コナーがカップを奪回し、レーガン大統領にホワイトハウスへ招待されたあの熱狂は、遠い昔なのでしょうか?

さて、このところアリンギ批判を強めているかのごとき当ブログですが、またアリンギ側のいやな話が伝わってきました。

ニュージーランド・ヘラルド紙が伝えるところによると、去る2月14日に行われた第33回アメリカスカップの第2レースにおいて、6時間に渡る延期の末、レースをスタートしようとしていたレース委員長ハロルド・ベネットは、レースをさせまいとするソシエテ・ノーティーク・ドゥ・ジュネーブ(SNG:アリンギの所属母体)の妨害を受け、もう少しのところで「PM4:30以降はスタートしない」という規定に引っかかるところであったそうです。

NZ Herald: How a NZ official stared down Alinghi team

この記事によると、4時間に渡る海上待機の後、ようやくレースを開催できる風が吹いてきたため、ベネットはPM4:00にAP旗を降ろすようコミッティに指示しました。しかし、ベネット以外全てSNGのメンバーで構成されているコミッティは、ハロルドの指示を拒否したのだそうです。SNGがレースのスタートを拒んだ理由は、「アリンギ5」にとって不利となる波が海面に残っていたからと考えられています。

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Photo Copyright: Guilain Grenier/BMW ORACLE Racing

ベネットは友人に宛てたEメールで以下のように語っています。

「レース委員長に対し、スタートを取り止めさせようとするような非常識な行動がコミッティボート上で繰り広げられるなんて、私はこれまで見たことがない」

窮地に追い込まれたベネットは、コミッティボートに乗り合わせていたBMWオラクルのトム・イーマンに助けを求め、またアンパイアの資格を持っている人物がサポートボートに乗っていたため、その助けも受けて最終的にタイムリミット5分前というギリギリのタイミングでレースをスタートするのに成功したということです。

当時の予報によれば、次のレース予定日であった2月16日(火)以降現地バレンシアは荒れ模様となることが予想されていたため、もしこの日にレースが行われなかった場合、再び何日もレースが延期になる可能性があったのだそうです。

これに対しベネットは以下のように続けています。

「もし、あの日レースをスタートできていなかったとしたら、次のレースにはSNGの連中を陸上に残し、スペインにいる私の友人達を連れて行かなきゃならなかっただろうね」

確かに映像を見ていても、波にあおられピッチングする「アリンギ5」の姿は苦しそうでした。だから、この波ではやりたくなかったのか、或いは単に一日でも長くタイトルホルダーで居たかったのか・・・

タイトルを失った途端、王者アリンギを非難するかのごとき行動は、決して本意ではありませんが、でもやっぱり何だかなぁ~と思います。(アリンギファンのみなさん、ゴメンナサイ!)

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コメント

くびきから解放されたせいか後から色々出てきますね 残念なことです
まあ思いは既に次ですがo(`▽´)o
あの2艇はどこに展示されるんでしょうねぇ 持って帰るにしても結構かかるだろうし

投稿: まなてぃ | 2010年2月17日 (水) 14時25分

とんべえさん
お疲れ様でした。
大変お世話になりました。

このようなモンスターヨットが走る姿を見てみたかったと思いますが、
もうそんな機会は訪れないかもしれませんね。

『公平な独立したレースコミッティー』を強調していたのは、この事だったんですね。
ベネットが仕切っていなければ、ヨットレース界全体が疑われる存在になっていたかもしれません。

投稿: Yasu | 2010年2月17日 (水) 16時55分

こんにちは、どんべえさん、興味深いおはなし、写真、楽しみました、お疲れさまでした。

投稿: アメリカスカップ好き者 | 2010年2月17日 (水) 18時37分

楽しい情報をいつもありがとうございます、毎回読んで唸らされます。
日本だけでなくアメリカでもマスコミはノーマークなんですか?
ちょっと前までなら考えられなかったですよね。
日本はともかく米国までも…

今回の船は本当に素晴らしいものでした。
大きさ・そして速さ…
F1で走るフェラーリは、その気になれば同じものを手に入れる事が出来ます。
そしてF1で培われた技術は市販車にも反映されて行きます。
F1を見た大人が子供が…そこに憧れて、成功の証として同じものを手に入れる夢を描くからこそ、人々は注目するのだと思います。
そこにお金も集まり技術革新等の進歩があるのでしょうね。
老人のお達者倶楽部となってしまった日本のヨット界…
カッコいい!
私もそうなりたい!
憧れる!
そういう世代がなぜ育たなかったのか?
その責任はとりもなおさずこれまでヨット界を背負っていた人々の責任だと思います。
ラリー・エルソンの夢は叶いました。
彼がカップを手に入れたかったのも、過去のカップ保持者のカッコいい姿がありそれに憧れたからだと思います。
もしこの先もヨット界が集束していくような事があれば、とりもなおさずそれはわれわれ世代の責任だと思います。
ヨット界にいない私がこんな事を云うのは生意気ですが、今回のレースはこれまでのどのレースよりも興奮したものですから…

投稿: は~ま | 2010年2月18日 (木) 03時16分

とんべぇさん 大変お疲れ様でした。
きっと睡眠不足の中情報をアップし続けて頂けたのだなと思います。
改めてこの場を借りてお礼申し上げます。
さて、70mものマストのボートがカッとぶ姿を生で見れたらさぞかし興奮するのだろうなと私も思いました。
思い出せば、17、8年前でしょうか、ニッポンカップを葉山沖でACボートを使って開催された事を思い出しました。
私がアメリカズカップに魅了されたのも、やはり現物を見たからなのかと思います。
34回カップがどの様に開催されるか興味深々ですが、たくさんの目に触れる大会になることを願います。
個人的には、パース沖位のうねりの中での戦いが一番臨場感があるような気がしますが、みなさんどうお思いでしょうか?
次回カップまで皆で夢を語ろうー!

投稿: 海カエル | 2010年2月18日 (木) 07時35分

いつも情報有難うございます。
なかなか20階建てビルも想像しづらいですが、
今日本にはイギリスの豪華客船「クイーンメリー2」が寄航しています。
海面からの高さ63メートルで、横浜ベイブリッジや東京レインボーブリッジ
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100219-OYT1T01176.htmはくぐれないとか(笑
横浜では大桟橋ではなく、大黒埠頭です(笑
BMW+ORACLEはこれよりほんのちょっとだけ小さいんですね!
ちなみにベイブリッジは海面からの高さ56m、レインボーブリッジは52mだそうです、
レインボーブリッジは、QE2がくぐれるよう作ったとの事なので、
それよりもでかいんですね。
ハンバーガーも車もヨットもアメリカンサイズですね。

投稿: k | 2010年2月19日 (金) 10時57分

みなさま、お返事遅くなり、本当にゴメンナサイ。

まなてぃさん
そうなんですよ、一体あの2艇はどうなるんでしょう?
特にのウィングセールは扱いが難しそうですから、あのままの形で保存することは容易でないと思います。でも、なんとか目に見える形で残して欲しいですね。

Yasuさん
いや、本当にこんなことが本部船上で起きていたなんて、驚くというか、あきれるというか。結果的にアリンギは、自分達が元々意図していたことを自ら証明してしまったような形ですね。今回を教訓に将来に向けたルール整備を期待したいと思います。


は~まさん
正におっしゃるとおりだと思います。本当に日本のヨット界はお達者クラブ状態ですから・・・ 今回クーツやエリソンは結構いい事をサンディエゴで言っていました。即ち、若い世代の目の前で、豪快なレースを展開し、セーリングの素晴らしさを伝えたいと。

その意味では、サンフランシスコというのは確かに良い選択肢かもしれません。カップを私物化することばかり考えていたベルタレリと違い、やっぱりクーツの考え方はしっかりしていると思います。


海カエルさん
いや、ホントの迫力って現物を見てこそ伝わるもので、中々活字や写真だけでは難しいですよね。セーリングの醍醐味をどう伝えていくかを考えると、やっぱり風と波があって迫力あるシーンを提供できる開催地が不可欠と思います。

その意味で、確かにパースは素晴らしかったですよね。でも、折角アメリカへ持ち帰ったのですから、きっとアメリカ人も自国で開催したいのだと思います。アメリカのヨット界も余り芳しくありませんから。いっそハワイなんかどうでしょう?

Kさん
西村一広さんも書いておられましたが、サンディエゴの国際会議場の陰から出てくる姿をみると、正にゴジラ登場!という感じでしたhappy01 まぁ、アメリカ人って結構大雑把で適当な人が多いですが、その代わり、日本人には想像も付かないようなスケールのでかいことを平気でやったりしますよね。月に行くぞ!なんて、実際にやってしまう人種ですから・・・

投稿: とんべえ | 2010年2月25日 (木) 05時55分

とんべいさん

今までこのサイトの存在に気づかすにいたのでさっそくお気に入りに登録しました。日本のヨット界はさびしい限りで情報も乏しく悲しく思っています。
特にカタマラン乗りの私にとって今回のようなレースはわくわくしています。 今回のレースで驚いたのが公式サイトのビデオで見るとあの巨大な船で片ハルで走り続けていることです、とくべいさん教えてくださいほんとにあんなに片ハル浮いたままなのですか? ディンギのように人間がバランスをとれない巨大船であんなことが可能なのでしょうか?? ハードセールに特別な仕掛けがある??? ヒールアングルが一定しているところをみると何かありそうな気がするのですか・・・ 

投稿: J-117 | 2010年4月 2日 (金) 02時52分

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