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2010年2月 9日 (火)

初日のレース中止からみえてきたもの

初日のレース中止から一夜明けて、様々な情報がウェブ上で配信されてきました。

まず、アメリカスカップの公式サイトの情報から。

33rd America's Cup: Wait 'til Wednesday. Race 1 remains on hold.

これによると、当初レース・コミッティは充分レースを行えるレベルまで風が上がると見ていました。しかし、4時間に渡り海上で待機したにも関わらず、20マイル離れた本部船と上マークとの間で風速・風向とも全く異なるという状況は解消されず、ノーレースの判断を下したということです。

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鏡のような海面  Photo Copyright: Gilles Martin-Raget/BMW ORACLE Racing

ハロルド・ベネット(レース委員長): 「出港時に期待していたようなコンディションとならず、レースをスタートできなくで残念だよ。恥ずかしいことに、丁度風のない所へ行ってしまったようだ。レース中止の決定に対し、両チームから特にクレームは出ていない。決定の前に両チームの気象チーム、そして選手たちとも連絡を取り合ったが、どちらも異論はなかったよ。状況が好転する気配がなかったから、他の選択肢はなかった。こういうこともあるよ。でも、これがヨットレースだ。次のチャンスを待つしかないね」

エルネスト・ベルタレリ(アリンギ代表兼ヘルムス):「レース海面へ向かうため、夜中から出艇準備にとりかかったのは初めてだったよ。出艇までの2時間は特別なものだった。今日はレースができると信じてたけど、10時ごろから気象チームが可能性は低そうだと言い出した。振り出した雨が海陸風の成長を妨げたんだ。でも、防衛艇と挑戦艇が並んで走れたのは良かったよ」

「アリンギ5」出艇および帰港の模様  Copyright: Alinghi TV

クリス・ベッドフォード(BMWオラクル気象担当):「スタート地点には時折南よりのいいパフが入っていた。一方午後になると、西よりの風が岸の方から入りだした。その段階で上マークでは14ノットまで上がっていた。だから、レース海面へむけて風が吹き込んでくる気配はあったんだけど、結局この2つの風がケンカしてしまって、20マイルのコース全体をカバーするには至らなかったんだ。レース委員会は良い判断をしたと思うよ」

20マイルという距離でのコース設定が如何に難しいかは、現地で取材をされている西村一広さんが詳細に解説されています。

西村一広 風の旅人Sailing Diary: 2月9日 第33回アメリカスカップ第1レース 延期

なんだか、20マイルでイーブンなコース設定をすることは、絶望的にすら思えて来ます。

これに対し、今回ユーロスポーツのTV放送で解説者を務めているポール・ケイヤードも、「そもそも(日照時間が短く海陸風が成長し難い)冬のヨーロッパでアメリカスカップを開催するなんて、夏のスイスでスキーのワールドカップを開催するのと同じような話だ」と語っています。

Sail World.com: Paul Cayard - No wind, no sailing and a let down

そんな状況であるにも関わらず、アリンギはとにかくスタートしたがっていたようです。

NZ Herald: Alinghi sails circles around Oracle

APが伝えたこの記事によると、4時間の海上待機の間、アリンギはジェノアを上げ、BMWオラクルの「USA」の周りをグルグルと帆走し、このようなコンディション下でも充分レース可能であることをアピールしていたということです。

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アピールする「アリンギ5」  Photo Copyright: Gilles Martin-Raget/BMW ORACLE Racing

この記事の中でベルタレリは以下のように語っています。

「我々はレースしたかったんだ。ここまで散々待たされてきたから、もうこれ以上は待てないんだ。だから、我々が何をしたがっているのか連中に見せるため走ってやったんだ。」

さらに、軽量化のため乗船を断念したラリー・エリソンを指し、ベルタレリはこう続けました。

「彼がボートに乗ろうとしないのは残念だよ。自分で実際にボート乗って勝たない限り、ヨット乗りにとって、アメリカスカップに勝利したとはいえないからね」

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ベース帰着後インタビューに応えるベルタレリ  Photo Copyright: Carlo Borlenghi/Alinghi

軽風スペシャル「アリンギ5」を擁するアリンギにとっては、強く安定した風の下でレースを行うより、少々不安定でも風の弱いコンディションで闘いたいというのが本音でしょう。

そこで懸念されていたのが、レース委員長であるハロルド・ベネットに対する、アリンギとその母体ソシエテ・ノーティーク・ドゥ・ジュネーブ(SNG)のプレッシャーでした。

既に当ブログでもお伝えしたとおり、アリンギとSNGが一方的に決めた風速15ノット波高1メートルの上限設定に対し、本大会のインターナショナル・ジュリー(IJ)は、その規定を却下、スタートの判断はレース委員会に委ねるという裁定を下しています。

この裁定に対し、アリンギとSNGは安全確保を理由に、これら上限設定をレース公示にそのまま残すと共に、声明の中で本大会のレース委員会のことを「SNGのレース委員会」と呼び、スタートの可否に関しては防衛者側の意思が尊重されるべきであるとのプレッシャーをベネットにかけてきました。

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コミッティボート上のベネット(中央)  Photo Copyright: Gilles Martin-Raget/BMW ORACLE Racing

これに対しベネットは、風速・波高制限に対する明確なコメントを避け、あくまで自らの判断でレース運営を行うと発言していました。今回のレース中止を見る限り、ベネットは防衛者側のプレッシャーに屈することなく、常識的なレース運営を意図していることが証明されたと考えてもよいでしょう。

さて、セーリング・アナーキーのACフォーラムに寄せられた情報によると、アメリカスカップポートに詰め掛けた一般のファンの大半はアリンギを応援しているということです。

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詰め掛けたアリンギサポーター  Photo Copyright: Luca Butto'/Alinghi

一方、BMWオラクルのベースにはルイヴィトンのブルーノ・トルブレを始め、著名ジャーナリスト、前回大会のアメリカスカップ挑戦者委員会のメンバー、他の挑戦者チーム等、過去のアメリカスカップにおいてキーパーソンとなった面々が集まっているということです。

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「USA」の出艇を見守る人々 Photo Copyright: Guilain GRENIER/BMW ORACLE Racing

これにはBMWオラクルのホスピタリティが充実していることもあるでしょうが、セーリング界の関係者が基本的にどちらを支持しているかを表しているとも言えそうです。

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BMWオラクルの充実したホスピタリティ  Photo Copyright: Guilain GRENIER/BMW ORACLE Racing

西村さんもレポートされていましたが、確かに美味しそうな朝食です。ちなみにセーリング・アナーキーによれば、午後は本場のパエリアが振舞われたそうです。

最後に2つおまけです。

先日当ブログでもお伝えしたレーザー風検出器「レーサーズ・エッジ」の映像がBMWオラクルのYouTubeチャンネルにアップされています。

結構デカイですね。

それから、もうひとつ。America's Cup Viewというブログで、AIS(自動船舶識別装置)のGPSデータをトラックするサイトを使って、今回のアメリカスカップの動向を追っかけるアイデアが紹介されていました。

MarineTraffic.comのライブマップで、バレンシア辺りを拡大すると、コミッティボート(RACE COMMITEE)やラリー・エリソンの超豪華クルーザー「RISING SUN」、さらにエルネスト・ベルタレリの豪華クルーザー「VAVA」の現在位置や軌跡をトラックすることができます。

これで、レース海域や観覧フリートの位置を確認可能です。明日はこれも見ながらレースを楽しみましょう!

レース直前情報に関しては、また追ってアップしたいと思います。

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追記です。

BMWオラクルの公式ブログ、並びにサンディエゴの地元紙サンディエゴ・ユニオントリビューンが伝えるところによると、2月9日バレンシアは25ノットオーバーの強風が吹き荒れ、アリンギ、BMWオラクルとも出艇を取りやめたということです。

The San Diego Union Tribune: Strong wind keeps America's Cup boats off water

ユニオントリビューンによれば、この強い北西風は弱まりながらも若干残り、明日はセーリングに適した風となると見られる一方で、チョッピーな波が残ることも予想され、もしこれが「最大1メートル」としたレース公示の波高制限を超えた場合、再びレースが中止される可能性があるとしています。

明日もハロルド・ベネットの手腕が試されることになりそうです。

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