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2013年7月11日 (木)

イアン・マレーの安全提言は却下! ルナロッサはレースに復帰。

第34回アメリカズカップのレース運営組織:アメリカズカップ・レースマネジメント(ACRM)の合意の下、国際セーリング連盟(ISAF)が指名した国際ジュリーの裁定が下されました。

結論は、「ACRMのレガッタ・ディレクターであるイアン・マレーが、大会公示(Regatta Notice) 第189号で出場各チームに指示した安全のためのAC72クラスルールの変更は無効」というものです。

以下が今回の国際ジュリーの判定文書の全文です。

ここには、エミレーツ・チームニュージーランドとルナロッサがイアン・マレーの安全提言、及び大会公示第189号に対し不服を申し立てた経緯、オラクルやアルテミス、さらに米国沿岸警備隊(日本の海上保安庁に当たる)といった関係者への事情聴取結果、さらには本裁定の根拠となる「贈与証書」から第34回アメリカズカップの大会議定書(プロトコル)の関連条項まで延々と記載されていますが、肝心なのは22ページ目の数行だけです。

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DECISION AND ORDERS

186. Regatta Notice 189 has the effect of changing the Class Rule and is therefore not in accordance with Protocol Article 4.3(k). The Regatta Director is ordered to withdraw RN 189.

裁定 及び 指示

186. 大会公示 第189号はクラスルールを変更する効力を持っており、大会議定書 第4.3条K項に違反する。従ってレガッタ・ディレクタは大会公示 第189号を取り下げること。

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大会議定書 第4.3条K項には、「ACRMは大会議定書に沿った規則を発行することができるが、それら規則は同じく議定書の13条に規定された文書の内容まで変更できない」と書いてあります。議定書 第13条については、あとで述べるとして、では大会公示 第189号に何が書いてあるかというと・・・

「アルテミスの転覆事故を受けた是正処置の一環として、米国沿岸警備隊に(例の37か条からなる安全提言を含む)競技安全化計画を提出した。(法令順守を規定した)大会議定書 第16条と(大会運営の規則書を定義した)大会議定書 第13.2条に従い、AC72のクラスルールを変更する」とされています。

この際なので、第34回アメリカズカップの大会議定書もアップしておきます。興味のある方は第4.3条K項と第16条、第13.2条をご参照ください。

ちなみに第13.2条には"第13.1条を見ろ"と書いてあり、第13.1条には、この大会議定書より「贈与証書」が優先されると書いてあります。アメリカズカップの憲法である「贈与証書」については、2009年8月10日付の当ブログに詳しく記しているので、興味のある方はそちらもどうぞ。

とまぁ、ここまできて何が問題かというと、要はクラスルールの変更が問題なのです。ということで、今度はAC72のクラスルールを見てみましょう。

問題は、クラスルールの第4条にあります。

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4. AMENDMENTS

The AC72 Class Rule may be amended at any time by unanimous consent of Competitors still competing and the Regatta Director, except that:

(a) at any time the Measurement Committee, with the approval of the Regatta Director, may amend the AC72 Class Rule with respect to media requirements; and

(b) prior to March 1, 2011, the Measurement Committee, with the approval of the Regatta Director and a majority of the Competitors, may amend the AC72 Class Rule in any respect.

4. 修正

AC72クラスルールは、以下の場合を除き、参加中の競技者およびレガッタ・ディレクタによる全会一致の合意がなければ修正できない。

(a) レガッタ・ディレクタの許可の下、計測委員会はメディア関連のAC72クラスルールを修正できる。

(b) 2011年3月1日までは、レガッタ・ディレクタと過半数の競技者の許可の下、計測委員会はAC72クラスルールのいかなる項目も修正できる。

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ということで、いかにレガッタ・ディレクタといえども、全参加チームの合意がなければ、クラスルールの変更はできないことになっているのでした。今回チーム・ニュージーランドとルナロッサは、正にこの点を突いてきたのです。

今回の裁定の結果、クラスルール変更を伴うラダーエレベータの面積や深さ、対称形といった安全規定は撤回され、ルナロッサはめでたくレースに復帰となりました。

で、これからどうなるかというと、2つの懸念が指摘されています。

1. 沿岸警備隊の許可が撤回されないか?

そもそもイアン・マレーはアルテミスの転覆事故を受け、上記ラダーエレベータの安全規定を含む37か条の安全提言を米国沿岸警備隊に提出し、大会開催の許可を得ていました。今回その安全提言の一部が撤回されることになるので、これに対し沿岸警備隊がどう判断するか、現時点では不明です。最悪大会の中止を命令される可能性もないとはいえません。

2. "不安全な"ラダーエレベータの復活

今回の裁定を受け、ラッセル・クーツはオラクルも安全規定に捉われない新しいラダーエレベータを装備すると同時に、ルールを巡るドロドロした争いが復活するだろうと facebook 上でコメントしています。

今回は久し振りに長文となってしまいました。

アリンギとオラクルの法廷闘争以来、こういったゴタゴタになると俄然ノリノリになるブログ主とんべえでした。

ようやくアメリカズカップらしくなってきたと思いません?

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JSAFアメリカズカップ委員会は日本のアメリカズカップ再挑戦へ向けて活動しています。

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