カテゴリー「32nd America's Cup」の記事

2009年10月13日 (火)

ブラッド・バタワース、第33回アメリカスカップについて語る。

さて、挑戦艇「BOR 90」の改造に関し、BMWオラクルはエンジンを搭載するための大改造を行っていることを明らかにしました。

BMW Oracle Racing: BMW ORACLE Racing prepares for another round of testing

この挑戦艇の改造に関しては、一度現地を見に行ってから改めてアップしようと思います。

ということで、今日はもう一方の当事者である防衛者アリンギ側のコメントをお伝えしましょう。

少し前になりますが、9月28日にバレンシア・セーリングがアリンギ・スキッパー、ブラッド・バタワースにインタビューを行っていますので、ご紹介します。

Valencia Sailing: Brad Butterworth talks to Valencia Sailing about Alinghi and the 33rd America's Cup

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アリンギ スキッパー、ブラッド・バタワース Photo Copyright Unknown

このインタビューでバタワースは、防衛艇や開催地、計測方法にISAFとの秘密合意に至るまで、広範囲に渡って彼の意見を述べています。

防衛者であるアリンギが昨今の状況についてどう考えているのかを知る上で、非常に興味深い内容となっています。

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バレンシア・セーリング(以下VS): あなた方のカタマラン「アリンギ5」はイタリア、ジェノヴァでの海上テストを終え、今まさにラアス・アル・ハイマ(RAK)へ送られようとしています。海上テストの結果について教えていただけますか?

ブラッド・バタワース(以下BB): テストの結果、「アリンギ5」は全くもってエキサイティングで、とても速くて、走らせるのにワクワクするようなボートだとわかった。でも、オラクルと闘うまでには、まだ改良すべき点が沢山ある。来年2月オラクルに勝つために、これからRAKでボートのレベルアップを行うことにしている。

VS: ジェノヴァでのコンディションは如何でしたか?

BB: 様々なコンディション下でテストをすることが出来た。ときには風が強すぎるときもあったし、もちろん風がないときもあった。でも、全体的に言って良い風に恵まれたね。非常に速いスピードで走れたし、多くのことを学ぶことができた。だが、先も言ったとおり、まだまだやらなければならないことが沢山ある。

VS: "非常に速いスピード"と仰いましたが、どのレベルまで行ったのでしょうか?

BB: そうだな、20ノット台後半くらいは行ったかな。

VS: どこか壊れたことはありませんか?重大な構造的破損とか?

BB: まぁ想定範囲内だったね。もちろん時には壊れることもあったけど、最終的には余りに破損箇所が少なくてビックリしたくらいだ。確かにジェノヴァにいる間に何箇所か壊れたのは事実だし、その内のひとつはバックボーンフレーム近くが破損したものだった。とはいえ、重大な構造欠陥ではなかったけどね。我々は徹夜で修復し、念には念を入れてフレームの反対側にも同じ補修を行ったんだ。その結果、その後のセーリングを通じて、なんら問題は発生しなかったよ。

VS: 何名のクルーを搭乗させるか、決められましたか?

BB: いや、まだ決めてない。そういったことは、ボートを最適化するため出来るだけ多くのテストを行って追い込んで行きたいと思っている。残された時間は少ないが、最適化すべきことは山ほどある。とにかく時間がないから、変更したい部分のパーツも大至急作らなきゃならない。RAKでテストを開始するまで殆ど時間がないからね。

VS: ボートはいつ頃RAKに到着する予定ですか?

BB: はっきりしたことは判らないけど、多分10月初めだと思う。

VS: 直近のアリンギの予定はどうなっているんでしょうか?あなた自身も既にRAKにおられるのですか?

BB: 私はまだジェノヴァにいるが、来週ごろには現地入りするつもりだ。まずボートが着いたら色々とすることがあるが、それからできるだけ早くセーリングを開始したいと思っている。

VS: ということは、現地のインフラが整っていなければなりませんね。現地工事の進捗状況は如何ですか?

BB: 我々はもちろんラアス・アル・ハイマ首長国側も全力を尽くしている。すでに幾つかの建屋は完成しているし、トレーニング海域も決まっている。こういった準備はアリンギに対してだけでなく、両チームに対して行われている。「アメリカスカップ島」への準備が猛スピードで進められている様子をみると、RAK側が両チームをホストするため、如何に大金を注ぎ込んでいるかわかるよ。

VS: BMWオラクルに関しては如何ですか?オラクル側も調査チームを現地へ派遣したと伝えられていますが、現地の印象について何らかの連絡はありましたか?

BB: いや、まだ何の連絡もない。彼らのスタッフは依然現地に残っているが、きっと彼らも我々同様準備に梃子摺るだろう。彼らの本隊がいつ現地入りするのか、或いはどういった計画でいるのか、私にはわからないが、ともかく現地入りを急ぐよう促しているところだ。

VS: ということは、あなたの理解としては、オラクルも現地入りする意向であると?

BB: そうだなぁ、その質問は連中に聞いてくれよ。我々は彼らから何も聞いちゃいないんだ。彼らが来ないとも聞いていない。だから、その答えは彼らに聞くべきだな。開催地が発表されて既に2ヶ月が経つが、それに対する異論は一切届いてきていない(註:9月28日段階。その後10月1日にBMWオラクル側はNY州最高裁へRAKは開催地として不適格との訴えをおこした)。連中も我々の動向を日々追っかけているから、我々のボートが現地へ向かっていることは判っているはずだ。そうやって何もしないことがカップに勝利する手段だと思っているなら、それはただスケジュールを遅らせるだけで、何もいい事なんかありゃしないのにね。

VS: もう少し長い目で見てみるとどうなりますか?すべてうまく運んで再びアリンギが勝利した場合、第34回アメリカスカップはどうなりますか?

BB: 現段階では何も決まっていない。前回きちんとした計画を建てたにも関わらず、連中が仕掛けたゴタゴタの結果、折角19チームと築き上げた良好な関係は全てご破算となってしまった。今回のオラクルとの対決の後、どういうことになるか私にはわからない。次回に関しては完全に宙ぶらりんの状態で、今のところ何も決まっちゃいないんだ。

VS: アメリカスカップが法廷闘争の泥沼に陥っている間に、ルイヴィトンが「ルイヴィトン・ワールドシリーズ」を立ち上げると発表しました。アリンギは去る2月オークランドで開催された大会には参加しましたが、今回は何故不参加なのでしょうか?

BB: 何故なら、我々には他にやらなきゃならないことがあるからだ。防衛艇を完成するという仕事がね。仰るとおり我々は2月の「ルイヴィトン・パシフィックシリーズ」に参加したが、あれはチーム・ニュージーランドに提訴を取り下げさせるという目的があったんだ。あのレースは旧型のボートで行われたわけだが、私個人としてはもっと新しくてエキサイティングなボートでレースをしたいと思っている。あれはルイヴィトンのための大会であって、他の誰のためのものでもない。

VS: さて、第33回アメリカスカップを巡る状況に戻りますが、争点のひとつにBMWオラクルの挑戦艇に対する計測手順が挙げられます。SNGは本件に対する反論書を裁判所へ提出したところですが、オラクルのボートはきちんと計測されると思いますか?

BB: いや、私にはそう思えないね。連中の提出した船舶登録証を見ても、彼ら自身正確な寸法を把握していないか、或いはボートを計測することに興味がないとしか思えない。最終的に我々はきちんと 90 x 90 フィート以内に収まるよう押さえたが、連中のボートは 90 x 90 フィートですらないかもしれないね。彼らには計測ルールを吟味する充分な時間があったし、何をしなければいけなかったか判っているはずだ。とにかく、奴らのやりたいようにやればいいから、後はレースで決着を着けたらいいと思っている。

VS: 満載水線長(LWL)の計測に何故ラダーを含めたのですか?

BB: ボートの一部だからさ。

VS: マルチハルの場合、通常ラダーは水線長に含まれるものなのですか?

BB: いいかい、これはアメリカスカップであり、ラダーはボートの一部なんだ。ニューヨーク州最高裁がそう言ってるんだ。何かあるたびに我々は裁判所へお伺いをたてなきゃならない。しかも、アメリカのニューヨークの裁判所にね。その裁判所がラダーはボートの一部だと言ってるんだ。そのときから解釈が変わったのさ。だから、なんら問題があるとは思えないね。

VS: ニューヨーク州最高裁は、防衛者にはルールを自由に設定できる権利があると認めました。これがフェアかどうかを議論するつもりはありませんが、ISAFとアリンギとの間で交わされた合意について教えてください。何故この合意は秘密にされてきたのですか?

BB: それは、この合意がヨットクラブとISAFとの間で交わされた単なる商取引上の合意に過ぎなかったからさ。ISAFのルールを使うと言う合意であり、レースを誰に対しても公平に行うため、ISAFから人員を派遣してもらうという合意なんだ。この合意が6月に交わされた為「密約」なんて言われたけど、他の大会でもこんな合意書をいちいち公開したりしないだろ。全くナンセンスだね。

VS: それを何故この期に及んで公開することにしたのですか?

BB: 別にたいしたことではないからさ。アメリカ人が鬱陶しく絡んでくるから、公開しただけのことだよ。これであなたも見ることができ、みんなも内容を確認することができるというわけだ。実際過去ISAFと交わされてきた合意書より、ずっとましな内容になっている。ISAFとセーリングスポーツそのものにとっても、ずっと良い内容だよ。だから、この合意書に関しごちゃごちゃ言うのは馬鹿げた話に過ぎないよ。

VS: 公開された合意書は元々の内容ですか?それとも修正を経てあの形に落ち着いたのですか?

BB: あれは元々の内容で、BMWオラクルにとっても心地良くレースに参加できるよう配慮して作ったものだ。もう一度はっきり言っておくが、あの合意書はオリジナルから一度も修正されたことはない。

VS: その他に何か付け加えておくことはありませんか?

BB: いいかい、最終的に防衛艇と挑戦艇は対決しなければならない。そして、どっちが勝つにしろ、カップは勝者の物とならなければならない。もしレースの敗者が裁判所へ駆け込んで、レース結果を蒸し返すようなことをするとしたら、それは本当に馬鹿げたことだ。どっちが勝つにしろ、法廷闘争はこれで終わりにしなければならない。だから、2艇のボートは来年2月ラアス・アル・ハイマで対決しなければならないんだ。

(終わり)

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2007年7月 3日 (火)

第32回 アメリカズカップ Day7

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いま見直してみると、歴史に残るであろう本当に"物凄い"レースでした。
(少々長文になりますが、なにしろレースの内容が濃かったのでご容赦ください。)

15ノットの安定した風の下、プレスタートでは終始NZがアリンギの直後につけ、アリンギの動きを封じつつ、アリンギが上、NZが下で両艇ラインの中央付近よりイーブンなスタートとなりました。両艇の間隔は約20m。

スタート後は両艇スターボのまま、しばらくの間一進一退のドラッグレースが続きます。NZは少しずつ切り上がりアリンギとの間隔を詰めます。
レグ全体の1/4ほど来た所でアリンギはNZの影響を嫌ってタック。NZは2・3分(約20艇身)走った後アリンギを追ってタック。両艇の間隔約400mのまま今度はポートのレースが続きます。

レグの3/4を越えたあたりでアリンギがスターボへタック、コース中央へ返し最初のミーティング。この段階でNZのリードはほぼ1艇身、アリンギの前を切るには不充分のためリーバウを打ちます。アリンギはタックバック。この後2度タックマッチを行いますが、その度NZは少しずつリードを失います。
もはやアリンギの前を切ることも、下受けすることも不可能とみたNZは、アリンギを追い出した後ポートのレイラインへ向かい、アリンギもこれを追う形で両艇スターボ。

レイラインまで20艇身のところでNZタック、再びアリンギのリーバウに付きます。しかしレイラインまでの距離が短いため、アリンギはNZのバックウィンドを受けつつ堪え、両艇レイラインへ。

レイラインを2艇身程越えたところで先ずアリンギがタック。NZもアリンギのすぐ上でタック。両艇横一線でマークへ向けますが、アリンギが2度に渡って厳しくラフ。NZは殆ど風位を越えるほど追いやられます。こうして1stマークはアリンギ先行。リードは7秒(40m)。

続く風下航、両艇互いにカバーしながら3度のジャイブを重ね両艇スターボとなった後、NZはアリンギをブランケットに入れる絶妙の位置につけます。レイラインが近い為アリンギは逃げることもできず、NZに先行を許します。このままNZはリードを広げつつ左、アリンギは右ゲートを回航。NZのリードは14秒(120m)。

回航後アリンギは右へ、NZも10艇身程走った後右へ返します。
両艇ポートのままレグの1/4ほど来た所でアリンギがタック。

最初のミートでNZはアリンギの前を切れるかどうか微妙な距離でしたが、下受けしてアリンギをポートへ追いやります。NZもポートへ返し数分間両艇併走した後、再度アリンギがタック。NZには前を切れるだけのリードが無く、再びタッキングマッチ。この間にNZはまたも徐々にリードを失い、第1レグ同様3度ミートした後ポートのレイラインへ向かいます。アリンギもこれを追いますが、今回はNZの影響を受けないだけの充分な間隔がありました。そのまま両艇スターボで併走しながらレイラインへ。

レイラインを5-6艇身超えたところでNZがタック。アリンギの前を切るマージンが無いため、後ろを回ることを選択します。これに対しアリンギはクローズホールドから落として、NZに鼻先を向けます。NZはさらに大きくベアしアリンギをから逃げますが、この過程でNZはアリンギの進路を妨害したとして審判よりペナルティを受けます。

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こうしてNZは大回りを強いられた結果、3rdマークはアリンギが12秒(約80m)先行。
もはや勝負あったか?!

最後の風下航、アリンギはNZを確実にカバーしながら徐々にリードを拡げます。NZもペナルティターンの義務を抱えつつ、とりあえずアリンギを追いますが、一向にアリンギを捕まえることができません。風は急速に衰え、もはや勝敗は決したかにみえました。

しかし、ゴールまであとわずか10~20艇身の位置で最後のドラマが訪れます。

残り僅かとなりもはや逆転の可能性は薄いとみたか、まずNZがペナルティ履行のためジェノアを上げスピンを降ろす準備に入ります。

ところが、このとき風がなんと50度(!)も左に触れます。レース海面左から中央部を走っていたNZはコースを落として何とかスピン(ジェネーカ)を維持しますが、右海面のレイライン近くを走っていたアリンギはベアする余地が無く、スピンを維持できなくなります。アリンギは急遽ジェノアを準備しますが、作業中にスピンポールのマスト側エンドが吹っ飛んでしまいます。クルーはポールをトッピングリフトにぶら下げたまま放置し、至急ジェノアを上げますが、一方スピンはマストトップから大きく流れ(数日前のNZのよう)、回収にてこずる間にボートは完全に失速してしまいます。

このアリンギのトラブルの間に、無事ジェノアアップ・スピンダウンを終え今度はアビームとなったNZは、失速したアリンギを簡単に抜き去り、ゴールラインまであと2艇身の位置でペナルティターンに入ります。このときゴール付近の風は5~7ノットに落ちていました。

軽風の下、思うように動かない艇と格闘しながら必死にペナルティターンを行うNZに、トラブルを解消したアリンギが迫ります。ターンを追えNZが鼻先をラインに突っ込むのが早いか!風が振れ、アビームから今やほとんどクローズホールドとなって突っ込んでくるアリンギの鼻が届くのが早いか!勝負は正に紙一重!ほんの鼻の差!アリンギが早い!!僅か1秒差でアリンギが勝利をものにしました!!

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とにかく、あらゆる風域でアリンギとETNZはすばらしいレースを見せてくれました。
今回の両チームの戦いは、間違いなくアメリカズカップの歴史の中で長く語り継がれるものになるに違いありません。個人的にはどうしてもベルタレリやバタワースを好きになれないのですが、エドさんにはおめでとうと言ってあげたい気分です。

(写真はBYM News http://www.bymnews.com/ から引用させていただきました。)

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第32回 アメリカズカップ Day7 速報!

な、なんちゅうスゴイレースだったでしょう!

詳細はビデオを見直してみないとわからないんですが、1上をアリンギに取られたETNZがうまくブランケットに入れて下マークまでに逆転。

再び左海面をETNZ、右海面をアリンギがとりますが、タッキングマッチの末アリンギの前を横切れるだけのリードが無いと判断したNZは、上マーク直前で大きくディップしてアリンギの後ろを回ろうとします。これに対しアリンギはクローズのコースを維持せず大きくベア、NZに鼻先を向けます。NZはさらに大きくベアを強いられ逃げますが、ここで審判はNZがアリンギの進路を妨害したとしてペナルティ。そのままアリンギ先行で2上回航。

NZもアリンギの後ろにつきますが成すすべなく、ゴールを目前にしてペナルティ履行のためスピンを降ろしてジェノアアップ。もはや勝負あったと思ったときに、アリンギのスピンポールが壊れます。急遽スピンダウン、ジェノアアップしますが、完全に失速します。この間にNZはアリンギを抜き去りゴールライン直前でペナルティ履行に入ります。ジェノアをあげて徐々に加速してきたアリンギと、ペナルティターンを終えノロノロとラインに向かうNZ、どちらが先にラインを切るか!!
ほんの鼻の差!アリンギが早い!!1秒差でアリンギの勝利!
となりました。

これから出勤なので、詳細は後ほど・・・

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2007年7月 1日 (日)

第32回 アメリカズカップ Day6

今日はスタートからゴールまで全く目が離せない、本当に素晴らしいデッドヒートになりました。

まずはプレスタート、ETNZはアリンギの前をきわどくジャイブで横切って左へ。アリンギは抗議を出しますが審判の判定はクリア。

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そのままETNZはラインのほぼ真ん中から、アリンギは右へ回って本部船横から、両艇ほぼフルスピードの横一線でスタート。

そこからしばらくはスターボでのドラッグレース。ETNZは徐々に切り上げてアリンギに近づけていきます。レイラインが近づき両艇の高さの差が5mを切り始めたところで、アリンギは右へ追いやられるようにタック。2分(15艇身)ほど進んだところでNZもタック。今度はポートでしばらく並走します。今度もNZは徐々に高さを稼いでいきます。
スターボレイラインが近づいたところでまずアリンギがタック。既に4-5艇身分のリードを築いていたNZはアリンギに被せる形でタック、アリンギをポートへ追い返します。そのままNZはポートレイラインに進みマークへ。1stマークはNZが14秒(約60m)のリード。

マーク回航後、程なくしてアリンギがジャイブ。NZもすかさずカバー。アリンギは続けて数回のジャイブを打ちますが、NZもカバー。しかしアリンギは下マークに到達するまで厳しくNZを牽制しながらに追いすがり、ゲート到達時に両艇の差は約40mまで縮まります。NZは左、アリンギは右ゲートを回り、NZのリードは11秒。

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ゲート回航後アリンギは右へ、NZも左へ2分ほど走った後右へ返し、両艇ポートのまま右海面へ伸ばします。
レイラインまで3/4ほど来たところでまずアリンギがスターボへタック。この時点でNZのリードは70~80mありましたが、徐々に風が右にシフトし、両艇がミートするまでにはNZが安全にアリンギの前を横切れるほどのマージンは無くなっていました。
そこでNZはアリンギのリーバウでタック、アリンギはポートへ追い返されますが、5-6艇身走ったところで再びスターボへタック、NZもこれを受けタック。2度目のミートでもNZはリーバウを打ちアリンギを反対タックへ追い出しますが、その差は目に見えて小さくなっていました。
果たして3度目のミートでNZにはもはやアリンギを反対タックへ追いやるほどのリードはなく、逆にリーバウタック後アリンギに上を突破されてしまいます。
今度はアリンギがNZの上を抑える形でスターボのまま並走し、レイラインでアリンギがタック、影響受けないところまで進んでNZもタック。3rdマークではアリンギが16秒(約70m)のリード。

最後の風下航、アリンギは素晴らしいスピードを示し、徐々にNZを引き離します。レグの1/5付近でまずNZがジャイブ。アリンギもすぐカバー。続けて3度のジャイブをNZは仕掛け、アリンギは2度目までカバーしますが、3度目は放置。アリンギは左海面、NZは右海面へ分かれます。TV解説者いわく「バタワースは左海面の風が良いと読んだのだろう。」
アリンギの読みは当たりリードを伸ばしますが、完全に離れるリスクは犯さず、NZとの距離が700mほどになったところでジャイブ、両艇右海面へ。
その後NZは数度のジャイブを行い、アリンギも基本的にカバーしますが、ゴールまであと1/4ほどの位置でアリンギはジャイブミスをします。このチャンスにNZは良く追いすがり、なんとアリンギの1.5艇身(!)後ろに肉薄します。
これでゲームの主導権は再びNZに握られたかと思われた矢先、NZは早々にポートへジャイブ、右海面へ向けます。バタワースはこれを放置、再び両艇は左右に分かれます。
残された距離が短かったためか、NZのテリー・ハッチソンは早々に勝負に出ました。或いは彼は右の方が風があると見たのかもしれません(解説のピーター・アイスラーもバレンシアでは陸(=下マーク)に近づくにつれ、右海面の風が強くなる傾向があるとコメントしていました)。 が、結果的には裏目に出て、両艇がジャイブし再び接近したとき、アリンギのリードは100m以上になっていました。

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あとはこのままアリンギがNZをカバーしながらゴール。最終的なタイム差は28秒でした。

とにかく最後の最後までどちらのチームにもチャンスがあり、一つのタックやジャイブで天国と地獄を分ける、そんな大接戦でした。

さて、いよいよアリンギが王手をかけました。
明日も目が離せません!!

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2007年6月29日 (金)

第32回 アメリカズカップ Day5

14-15ノットの風の下、実に白熱したレースが展開されるやに見えましたが、勝負は意外な形でついてしまいました。

プリスタートでETNZは観覧船を巻き込む位置までアリンギを引っ張り、双方ジャイブして戻ったところでアリンギが上、ETNZが下でラインへ向けてスターボでアプローチ。

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ETNZはリーバウで厳しく攻め、ラインまで1-2艇身の位置でアリンギをポートへ追い出します。そのままETNZは左、アリンギは右へ。スタートはETNZが5秒リード。

スタート後7-8艇身進んだところでNZもタック、ポートへ返します。ここから一昨日と正反対で両艇ポートでレイラインまで一気に突っ込みます。若干アリンギの上り角度がよく両艇の高さは徐々に近づきますが、ETNZに影響を与えるほどでなく、そのままETNZがアリンギを抑え続けます。レイラインを充分超えたところでETNZがタック。影響のないところまで進んでアリンギもタック。スターボへ返しても一進一退のレースが続きますが、オーバーセールの分アリンギがロスし、1stマークはETNZが12秒(約40m)のリードで回航。

風下航でアリンギはETNZの約2艇身後ろにピタリとつけ、ETNZを牽制しつつ両艇ポートのまま白熱したレースが続きます。
ところがレグの1/4辺りに来たところで、またもETNZをトラブルが襲います。なんとスピンのリーチに小さな穴が開いてしまうのです。
ETNZは急遽スピンチェンジの準備に入ります。結局作業中に元のスピンはバースト。破れたスピンは放置して急いで2つ目のスピンを上げますが、きちんとセットできていなかったのか、スピンは大きく舞い上がり、マストトップから旗のように流れてしまいます。こうなっては如何ともしがたく、ETNZは2枚目のスピンも断念し、3枚目のスピンを準備。
ACCボートには2本しかハリヤードが無いため、放置していた1枚目のスピン(の残骸)を急いで回収。このハリヤードに3枚目のスピンを着けて急いでホイストしますが、今度はこれが完全にツイストしてしまい中々展開しません(この間2枚目のスピンも放置状態)。

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なんとか3枚目のスピンを展開する一方で2枚目のスピンの回収は断念、海に落とします(サポートボートが後に回収)。

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時間にして5分程のこのドタバタの間にアリンギは難なく前に出て、逆に150m程のリードを奪っていました。
下ゲートはアリンギが右、ETNZが左を回航し26秒差。

その後アリンギは一昨日同様非常に手堅いレース運びでこのリードを守りきり3勝目。一方ETNZも第2上で24秒差、ゴールラインではなんと19秒差(!)と、良く追い上げました。

とにかくETNZがトラブルに陥るまでは、正にテール・トゥ・ノーズのレースを展開していたので、今日はどんな素晴らしいレースになるのだろうとワクワクして観ていただけに、この結果には正直非常にがっかりしてしまいました。

LV杯を通じてほぼ完璧なレースを見せてきたETNZですが、ここ3レース連続してスピンミスを犯しています。ここへ来て少し悪い流れになってきた感じがします。

(写真はBYM News http://www.bymnews.com/ から引用させていただきました。)

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2007年6月28日 (木)

Day5 直前情報

本日発表の天気予報。

6月27日
スペイン中部に停滞している弱い低気圧の影響で、南よりの軽風が吹いている。
海陸風が午後を通じて強まり、はじめは南東の風9-12ノット。レース終了時にかけて14-18ノットへ上がる。
天候はおおむね晴れで、最高気温は29℃。

今日は風が少し強まりそうです。アリンギ有利??

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ETNZの抗議却下

5時間にわたる審議の結果、ETNZの抗議は却下されました。

公式ウェブサイトによれば、
「アリンギは検査の際SUI100に乗船してきた計測委員に、そのままノーコントロールで降ろすとセールを破損してしまう危険性があるため、マストにクルーを登らせてハリヤードをメインセールに取り付けさせて欲しいと要望し、計測委員も同意した。
こうしてクルーがマストトップに登ってハリヤードを取り付け、セールダウンに一切関与していないことを示すため手を広げた後ハリヤードのロックが外され、メインセールは無事デッキまで降りてきた。計測委員も一連の作業に満足した。」
と書いてあります。

でも、結局はクルーが登ってセールを降ろしているわけで、ルールの趣旨から考えるとどうなんでしょう?? まぁ、折角の接戦に水をさすことにならなかったのは幸いですが・・・

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2007年6月27日 (水)

チーム・ニュージーランド抗議提出

ちょっと気になる記事を公式ウェブサイトで見つけました。
どうやらETNZが抗議を出しているようです。

Emirates Team New Zealand files protest
The Jury for the 32nd America's Cup has received a protest from Emirates Team New Zealand. It was filed within the time limit.

The Jury will convene on Thursday at 11:00 to hear the protest, which refers to America's Cup Class Rule 31.6, which reads, "Mainsails shall be able to be lowered to the deck without the necessity of a crew member going aloft."

抜き打ちの計測として、レースコミッティはレース終了直後アリンギ、ETNZ両艇に海上でメインセールを降ろして見せるよう要求したようです。

これはアメリカズカップ・クラスルール31.6に「メインセールはクルーを(マストに)登らせないでもデッキまで降ろすことが出来ること」と規定されているためです。

これに対し、ETNZは問題なく降ろせたのですが、アリンギはマストにクルーを登らせて、ようやく降ろしたすことができたようです。

確かに今日US向け中継の最後でレースコミッティのピーター・レッジオが、(多分アリンギに対し)無線で「クルーを登らせないでメインセールを降ろしなさい」と話しかけている姿と
アリンギのマストに登っているクルーの姿が大きく映し出されていました。状況から見るとアリンギは明らかにクラスルールを守れていません。

この抗議に対する審議は現地時間の木曜日11:00から開催されるようです。
せっかく2勝2敗で緊迫しているマッチに水を差すようなことにならないことを祈るばかりです。

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第32回 アメリカズカップ Day4

今日は昨日とうって変わって、正統なマッチレースとなりました。

スタートでは昨日までと異なり初めてアリンギが上側をとりました。

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ほぼ横一線でしたが、アリンギがほぼフルスピードでスタートラインを切ったのに対し、ETNZはやや加速し遅れた感じでした。

その後両艇スターボのまま性能テストのようなスピードレースが延々と続きます。昨日同様局地的に風が変わるコンディションのため、その都度どちらかが上れたり落とされたりしますが、全般としてはほぼイーブン。レースは上側にいるアリンギがコントロールし、ポート・レイラインまで一気に引っ張ります。

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レイラインを充分超えたところでアリンギがタック。ETNZはアリンギの影響を避けるため5-6艇身行き過ぎてからタック。結局この差が1stマークでの差、20秒(約90m)になります。

ETNZはスピンをジャイブセットし、1stマーク回航後即左海面に向かいます。アリンギも昨日の失敗を繰り返さないため、即座にカバー。レグの1/4を過ぎたところで両艇ポートへジャイブ。このときETNZはスピンをフォアステーにからませて"提灯"にしてしまい若干ロスします。その後もETNZは数度のジャイブをかましますが、アリンギは基本的にカバーします。ゲートへポートでアプローチしてきたアリンギはジャイブロスを嫌い、デッドランまで落として無理やり右ゲートを回航。スターボで来たETNZは逆に遠い左ゲートを回航(34秒差)。今度は両艇が左右海面に分かれます。

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続く風上航では、左海面の風が若干強くETNZがやや挽回。20艇身ほど進んだところでアリンギがタック、両艇左海面へ。レグの中ほどでETNZがタック、最初のミートではアリンギが100mほどリードしていました。ここからタックマッチに入りますが、先行するアリンギがゲームをコントロール。100m差を維持したまま第2上マーク回航(25秒差)。

ETNZは再びスピンをジャイブセットし即ジャイブ。アリンギもすぐカバー。その後若干離れたときもありましたが、アリンギは基本的にETNZをカバーしながら進み、30秒(130m)差でゴール、シリーズを2-2のタイに戻しました。

今日のアリンギは最初に築いたリードを生かし、終始相手艇をカバーして逃げ切りました。
解説のピーター・アイスラーも、アリンギは基本に忠実な非常に良い仕事をしたと褒めていました。
個人的にはスタート直後の"上り比べ"が非常に見応えがありました。この風域では両艇の差は殆どなさそうです。

明日はお休み、第5戦は金曜日です。

(写真はBYM News http://www.bymnews.com/ から引用させていただきました。)

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第32回 アメリカズカップ Day3

いやはや2時間以上もスタートが延期されたため、レース開始が出勤時間と重なりライブで観ることが出来ませんでした。ようやく帰宅してレースの録画を観終わりました。

レース結果はみなさん既にご存知かと思いますが、レポートをアップして欲しいとのメッセージをいただきましたので、遅ればせながら・・・

スタートラインへのアプローチは今日もNZが上を取ります。比較的両艇が離れたスタートとなった前日までと異なり、今日は非常に接近。下側をアリンギにぴったりつけられたNZはたまらずスタート10秒前にポートへタックを返させられます。アリンギはそのままスピードをつけてほぼジャストスタート。NZはタックでスピードを失い、8秒遅れでノロノロとラインを横切ります。

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その後各々コースを維持しアリンギは左海面、NZは右海面へ。しかし右海面伸ばしたNZに終始上れる風が入ります。NZは見る見る挽回し、両艇がタックを返して最初にミートしたとき、NZは逆に100m以上のリードを奪っていました。
その後もNZは右海面を走り続けてリードを拡げ、1分23秒(距離にして400m近く)もの大差をつけて1stマークを回航します。

続く風下航で、大差をつけられているアリンギはNZと出来るだけ逆サイドを突くべく早め早めにジャイブをかけていきますが、NZはセオリー通りカバーしていきます。その間徐々に差を詰められますが、下ゲートに到達したときにはまだ200m以上のリードを保っていました。右海面が良いと読んだ両艇は右ゲートを狙います。

ここで信じられないようなトラブルがNZを襲います。
まずバウマンが折からのうねりで激しくピッチングするバウに足をすくわれ落水してしまいます。幸いすぐ艇上へ戻る事が出来ましたが、これでスピンダウンのリズムが狂ってしまいます。落水騒ぎでフォアデッキの準備が出来ていないところへ、通常よりかなり速いタイミングでスピン・ハリヤードをカット、スピン収納が全く間に合わず、デッキ上は大混乱になります。バーカーは大回りを余儀なくされず、艇を上に向けますが、ここで更に収納の間に合わなかったスピネーカーがジブリーダーに絡まってしまい、ジェノアを充分引き込めなくなってしまいます。

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結局このトラブルは次にタックするまで解消されず、その間まともに上れなかったNZはアリンギに100m差まで詰め寄られます。

その後再びアリンギは左海面、NZは右海面へ分かれます。ところが今度は左側に風がシフトし、次にミートしたときNZのリードはなくなっていました。その後両艇は絡み合いながら進んで行きますが、最後に絶妙のリーバウでNZを右海面へ追いやったアリンギが15秒(約50m)のリードを奪い、3rdマークを回航します。

最後の風下航で、まずNZがジャイブして左海面へ進みます。その後両艇ジャイブして左右を入れ替え、今度はNZが右海面、アリンギが左海面に大きく分かれます。
ここで風の女神は最後にNZに微笑みます。右に出たNZに良いパフが入り、フィニッシュ直前でアリンギを逆転、2勝目をあげました。

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とにかく順位の入れ替わること6度という、アメリカズカップ史上でもまれに見る大混戦でした。

(写真はBYM News http://www.bymnews.com/ から引用させていただきました。)

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