カテゴリー「Oracle Team USA」の記事

2015年4月27日 (月)

アメリカズカップは嵐の中

ACEAが突然提案したレース艇の小型化と、それに反対するルナロッサの撤退、さらに続くゴタゴタについては、3月28日4月4日4月6日4月21日の当ブログでお伝えしたとおりです。

このゴタゴタの発端となったレース艇の小型化、およびウワサされる日本チームについてのヒントが、4月19日付のニューヨーク・タイムズ紙(電子版)に掲載されています。

The New York Times: Familiar Shoals for America's Cup: A Spat Over Rules

この記事は、様々な関係者のインタビューを通じ今回の騒動を検証しており、中々興味深い内容となっています。

まず最初に、2003年、2007年と2度に渡りカップに勝利したアリンギ(スイス)のオーナー、エルネスト・ベルタレリが、今回の騒動について語っています。

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アリンギのオーナー、エルネスト・ベルタレリ © Guido Trombetta / Alinghi

「世界中のみなさんに理解しておいてほしいのは、私がアメリカズカップに出るのを止めたのは、ルナロッサが撤退したのは、そしてニュージーランドがチーム存続の危機にあるのは、全てオラクルの連中がスポーツマンらしからぬ行動をとるからなんだ。スポーツというものは、独立した審判の下、公平なルールがつくられて初めて成立するものなのだから」

えーっと、2007年大会からの2年半に渡るゴタゴタを覚えている人からすると、この発言は殆どジョークですが、ともかくスイスの大富豪ベルタレリさんは、今回突然AC62のクラスルールが破棄されたことにより、友人であるプラダのパトリッツィオ・ベルテッリが2600万ドルをどぶに捨てることになったと語っています。

一方、かつてルナロッサのヘルムスを務めたこともあるオラクルのジェームス・スピットヒルは、ベルテッリを気遣いながらも、今回の変更は必要なものであったと主張しています。

「僕らはアメリカズカップの将来を真剣に考えなければならない。前回、前々回の大会では、大型のマルチハル艇が如何に迫力あるものかが証明されたけど、あれをずっと続けるわけには行かない。僕らは新しいチームを呼び込まなければならない。そのためには、今ここでボートの仕様を固めなければならないんだ」

ベン・エインズリも「今回の変更は必要であった」「参加チームの多数決で承認されたことにより、その手順についても問題はなかった」とコメントしています。ただし、アメリカズカップの憲法『贈与証書』によれば、『ルール変更は防衛者(オラクル)と挑戦者代表(ルナロッサ)との相互の同意が必要』とされているのを、今大会のプロトコルにおいて『参加チームの多数決で変更可能』とルナロッサ自身が変更していたことは皮肉であるとも語っています。

今回のルナロッサの撤退について、ラッセル・クーツは以下のように語っています。

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ラッセル・クーツ © Gilles Martin-Raget / ACEA

「そりゃ、もちろんルナロッサには居てほしいよ。だが、ボートを小型化することによって、間違いなく新しいチームが参入してくることになる。私にいえるのは、日本からのチームがやって来るということだ。そして、そのチームのオーナーが誰かがわかったとき、それがルナロッサより大きいのか、それとも小さいのかということが議論の的になるだろうさ」

また、今回のボートの小型化に関し、クーツはラリー・エリソンの意向でもあることを語っています。エリソンは以前のように自らヨットに乗り込むことはなくなりましたが、クーツによれば、依然深く関与しており、AC45改によるフォイリング映像を送った直後、エリソンから電話があったということです。

「彼(エリソン)は依然イベントの方針決定に深く関与している。彼に動画のリンクを送ったら、数分も経たずに電話がかかってきて『これでアメリカズカップをやればいいじゃないか』と言われたんだ。私も全く同じ意見だったけどね」

クーツによると、前回2013年の大会ではどのチームも1億ドル以上の資金をつぎ込んでいたのが、今回のボートの小型化により3000万ドルまで圧縮できるとしています。

振り返ってみると、アリンギが開催した2007年大会では11の挑戦チームがありましたが、前回大会で最後まで残った挑戦チームは3チームのみ。

そのため、今回ACEAのCEOという肩書きをもつクーツとしては、とにかく参加チームを増やしたいということなのでしょう。しかし、最初に名乗りをあげたオーストラリアのハミルトン島ヨットクラブに続いて、今回のルナロッサと挑戦者が次々と撤退し、今大会も現在挑戦チームは4チームだけ。

さらに、非課税というインセンティブに乗ってバミューダ開催を決めた結果、アメリカのセーリング界からは白けた目でみられ、また、自国政府に投資効果を疑問視されはじめたチーム・ニュージーランドも存亡の危機ある・・・という状況です。

ニューヨーク・タイムズも『アメリカズカップは嵐の真っ只中にあり、最後にどれだけの有力チームが残っているかは疑問である』という言葉で記事を締めくくっています。

前途多難ですが、是非頑張ってほしいものです。

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2015年4月23日 (木)

Japan to launch team to challenge Oracle!

英国の Independent 紙 (電子版) が日本の挑戦について伝えています。

The Independent: Japan to launch team to challenge Oracle

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© Gilles Martin-Raget / ACEA

この記事の要点をお伝えすると

  • チームのヘッド(スキッパー)は日本人。
  • 元チーム・ニュージーランドのディーン・バーカーも加入。
  • メインスポンサーはソフトバンク。
  • 挑戦の母体となるヨットクラブは関西ヨットクラブ。
  • ボートの開発には、防衛者であるオラクルの支援を受ける。
  • 挑戦の調印式にはラッセル・クーツに加え、孫正義氏、ラリー・エリソンも出席。
  • 5月にポーツマスで予定されているイベントに、この新生日本チームが出場するかどうかは不明。

Is this the real life?

Is this just fantasy?

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2015年4月21日 (火)

みなさん、バミューダでお会いしましょう by ACEA

アメリカズカップの大会運営組織であるアメリカズカップ・イベントオーソリティ(ACEA)は米国時間の4月17日、2017年に予定されている第35回アメリカズカップに関連する全レースを、バミューダで開催することに参加全チームが合意したと発表しました。

ACEA: Competitors agree format for 2017 racing

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バミューダの大会会場の予想図 © ACEA

ACEAの発表によれば、ラウンドロビン(総当り戦) x 2回による予選レースの全てをバミューダで行うことでに全チームが合意したということです。

ところがところが、この予選レースはニュージーランドのオークランドで実施すると、今年の2月に発表されていたのです。

この発表を受け、ニュージーランドのキー首相は「全レースがバミューダで開催されるなら、これ以上チーム・ニュージーランドへ血税をつぎ込むことはできない」と発言。すなわち、政府の支援は終わり(we're at the end of the road.)と。

New Zealand Herald: End of the road for funding - Key

これで立場が危うくなったのがチーム・ニュージーランド。

チームのフェイスブックページに「今回の決定にチーム・ニュージーランドは決して合意していない」というコメントを慌ててアップ。しかし、もし政府の支援という大きな柱を失うことになれば、チームの存続自体が危うくなります。引き続きオークランドでのレース開催実現に向け努力するとしていますが、果たしてどうなることか?

一方のACEAですが、突然のルール変更でルナロッサを失ったばかり。これでさらにチーム・ニュージーランドを失うとなると、参加チームは一気に減ってしまいます。何が何でも参加チームを増やさねばなりません。

いまやアメリカズカップ名物となったゴタゴタ。この行方や如何に?

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2015年4月 6日 (月)

こんなものは絶対にアメリカズカップではない: ブルーノ・トルブレ

さて、前回お伝えしたルナロッサ(プラダ)のアメリカズカップ撤退に対し、同じく長年に渡りアメリカズカップを支援してきながら、昨年関係を解消したルイヴィトンのブルーノ・トルブレが、現在のカップの保持者であり、また次回35回大会の防衛者であるゴールデンゲート・ヨットクラブ(GGYC)、並びにオラクル・チームUSAを厳しく批判しています。

Bruno Troublé: This is definitely NOT the America's Cup

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一番左がブルーノ・トルブレ。 一人置いてラッセル・クーツ © Gilles Martin-Raget / ACEA

以下にトルブレの発言の全文を掲載します。皆さんはどう思われますか?

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私は今、アメリカズカップを巡る熱い論争から離れ、ヴェネツィアにおいてある自分のボートでセレニッシマの春を楽しんでいる。魑魅魍魎たちがアメリカズカップに良かれと、あれこれ画策しているようだが、その結果、カップは死につつある。過去2年間に行われたことは、間違いだらけなのだ。

 

ゴールデンゲート・ヨットクラブと彼らのセーリングチームであるオラクル・チームUSAは、ヨット乗りとしては素晴らしいが、神話を守るという点では全くダメだ。何十年もかけて培われ、またそれゆえルイヴィトンが30年にも渡って関係を継続してきたアメリカズカップのスタイルやエレガンスさというものを、彼らは抹殺してしまった。

 

彼らはハイレベルなパートナーたちを落胆させ、カップの地位を失墜させてしまった。彼らはカップを特別な存在にしてきた素晴らしい先人たちの伝説まで裏切ってしまった。そして、今彼らは、セーリング界と全然関係のないスタイルや人々を対象としたワンデザイン・カタマランによる競争を導入しようとしている。

今あるのは、日焼け止めとフライドポテトの臭いがする安っぽいビーチイベントだ。

こんなもんは絶対にアメリカズカップではない。

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2015年4月 4日 (土)

プラダの退場とルイヴィトンの怒り

米国時間の4月2日、ついにルナロッサ(イタリア)が第35回アメリカズカップ挑戦からの撤退を表明しました。

Luna Rossa: Team Luna Rossa Challenge announces its withdrawal from the 35th America's Cup

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© ACEA / Luna Rossa

ルナロッサ・チャレンジは、プラダの総帥であるパトリッツィオ・ベルテッリが第30回アメリカズカップに挑戦する為1999年に設立したチームであり、アメリカズカップへの挑戦者決定戦を主催してきたルイヴィトンとともに、長年に渡ってアメリカズカップの世界に欠かせない存在でした。

しかし、去る3月25日に第35回アメリカズカップの大会運営組織であるアメリカズカップ・イベント・オーソリティ(ACEA)が、レース使用艇のルールを大幅に変更すること発表。ルナロッサはそれをに反発。最終的に大会からの撤退を表明する事態となりました。

今回ルナロッサの公式サイトで発表された声明文の要旨は、以下の通りです。

  • ACEAによる挑戦チームと防衛チームの多数決により、昨年参加チームの全会一致で決定されたクラスルールが覆されてしまった。
  • 今回のルール変更は実質的に使用艇のワンデザイン化を企てるものであり、19世紀から続くアメリカズカップの伝統に全く反するものである。
  • これはコスト削減を口実に、ボートデザインに対する防衛者側のアドバンテージを増すものでもある。
  • ルナロッサとしても、現行クラスルール中でコストを削減する提案を防衛者側に度々行ってきたが、今回の決定によりそれらも全て廃棄されることとなる。

この決定により、6月にカリアリで予定されていたアメリカズカップ・ワールドシリーズの第1戦もキャンセルされることとなりました。

これに対し、同じく長年アメリカズカップを支援しながら、昨年関係を解消したルイヴィトンのブルーノ・トルブレが防衛者であるオラクルを批判するコメントを出していますが、それについてはこちらをご覧下さい

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2015年3月28日 (土)

突然のルール変更

米国時間の3月25日、第35回アメリカズカップの大会運営組織 America's Cup Event Autority (ACEA) は、参戦コストの削減の為、レース使用艇を小型化するルール変更を発表しました。

ACEA: Significant cost saving measures planned for 2017 America's Cup

前回34回大会で使用された全長72フィートのAC72については、そのボートサイズからコントロールが難しく、導入を主導したラッセル・クーツ自身も「少し大きくしすぎた」と発言していたほどです。そのため、35回大会では全長62フィートのAC62の使用が決まっていました。それを今回さらに小型化するというものです。

今回の変更について、ACEA の広報責任者であるハーヴェイ・シラーは以下のように述べています。

「過去数ヶ月にわたるAC45改での検証の結果、ボートを小型化しても、アメリカズカップに相応しい迫力や技術開発、スポーツ性を維持しつつ、コストを大幅に削減できることが明らかになった」

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AC45改を使用したフォイリングテスト © ORACLE TEAM USA / Photo Balazs Gardi

ACEA によれば、技術革新とフォイリング時間の増加により、小型化したボートでもAC72と同等のスピードが得られるということです。

この変更に対し、ベン・エインズリ・レーシング(イギリス)のベン・エインズリ、チーム・フランスのフランク・カマス、アルテミス(スウェーデン)のイアン・パーシーが、それぞれ歓迎の意を表しています。

ボートの小型化により建造費や開発費の削減は可能です。さらに搭乗するクルーの人数も減る為、トータルでは大幅なコスト削減効果が期待できるでしょう。

しかし、今回の発表にルナロッサ(イタリア)とチーム・ニュージーランドは反発しています。

特に挑戦者代表であるルナロッサは強硬に反発しており、翌日以下のステートメントを発表しました。

Luna Rossa: Statement regarding the proposal of boat change for the 35th America's Cup

  • ルナロッサは今回のルール変更に断固として反対である。
  • クラスルール変更には全チームの合意が必要という大原則が守られないなら、ルナロッサは35回大会から撤退する。

今回の変更により使用艇は62フィートから48フィートへ変更されるといわれています。しかし、これでは元々"練習用"だったAC45と大差なくなってしまいます。さらに40フィート台のボートを使用するサーキットなら、他にもウジャウジャあります。ヨットレースの最高峰たるアメリカズカップのプレステージ性を考えたとき、それで良いのか?という疑問が残ります。それとも、この変更には何か別の意味があるのか?

いずれにしろ、またぞろアメリカズカップの世界がゴタゴタし始めました!(ゴタゴタしだすと俄然元気付く当ブログ(笑))

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2014年11月28日 (金)

なぜラリー・エリソンはアメリカズカップにこだわるのか?(2)

先日お伝えしたオラクルチームUSAのオーナー、ラリー・エリソン氏とアメリカズカップの関わりについてストーリーの続きです。

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© ACEA/Photo Gilles Martin-Raget
Business Insider: Why Oracle Founder Larry Ellison NEEDS To Have The World's Greatest Competitive Team

爆弾低気圧の直撃を辛くも乗り切り、1998年のシドニー・ホバートレースを制したラリー・エリソンですが、当初はアメリカズカップに興味がなかったと言われています。

その彼がアメリカズカップに挑戦することになったきっかけについて、斉藤愛子さんが詳しくレポートされています。

斉藤愛子のSailing News: アメリカスカップ2003年情報 #1 ==あれから半年==

1995年サンディエゴで開催された第29回アメリカズカップにおいて、ラッセル・クーツ率いるチーム・ニュージーランドはデニス・コナーを破り、初めてカップをニュージーランドへもたらします。国民的英雄となったクーツは、2000年の第30回大会でも圧倒的強さを見せカップを防衛しますが、その直後チームの主要メンバーと共にスイスの大富豪エルネスト・ベルタレリ率いるアリンギへ電撃移籍してしまいます。

この衝撃的ニュースを<さよなら>のクルーから聞いたエリソンは、「それなら俺も」と自らのシンジゲートを立ち上げたのでした。BMWとジョイントし、BMWオラクルレーシングを設立したエリソンでしたが、2003年の第31回大会、2007年の第32回大会とも挑戦者決定戦(ルイヴィトンカップ)で敗退します。

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© Kazenotayori

一方、アリンギに移籍したクーツは2003年の第31回大会でも圧倒的強さを見せ、母国ニュージーランドからカップを奪い去ります。しかし、その後運営方針を巡りオーナーのベルタレリと対立、結局アリンギを去ります。そして、第32回大会終了と同時にオラクルへ移籍、エリソン&クーツの最強タッグが誕生したのでした。

その後のルールを巡るアリンギとの法廷闘争、そしてモンスターヨット同士の対決となった第33回大会については、2007年から続く当ブログで詳しく記したとおりです。

かぜのたより アメリカズカップ編: 33rd America's Cup (カテゴリー)

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© Jose Jordán/America's Cup Management

まぁ、今振り返ってみると全く先の見えない法廷での争いと、その結果生まれたルール無用の(厳密には19世紀の文書に則った)モンスターボート同士の対決と、かなりエキサイティングな第33回大会ではありました。それまでの"ヨット"というものの概念を完全に覆す怪鳥<USA17>をクーツと共に作り上げたエリソンは、アリンギとの一騎打ちを制し、遂にカップを手に入れるのでした。

エリソンにとっても、この第33回大会と<USA17>は特別な存在であるようで、現在もオラクル本社前に飾られ、また「オラクル・オープンワールド」のコンベンション会場へ引っ張り出されるなどしています。

さて、こうしてアメリカズカップに勝利したエリソンですが、この第33回大会だけで2億ドル(240億円)、さらに昨年の第34回大会には1億5千ドル(180億円)を投じたといわれており、その大半はオラクルからではなく、彼の自己資金から捻出されたともいわれています。

アメリカズカップの憲法である「贈与証書」の規定によると、現在のカップの所有者はエリソン個人でも、「オラクル・チームUSA」でもなく、彼らが所属するゴールデンゲート・ヨットクラブ(GGYC)ということになります。

GGYCには5名の委員からなる「アメリカズカップ委員会」が組織されており、エリソンとクーツもメンバーとして名を連ねています。よって、実質的には彼ら2人がアメリカズカップの行く末を決められる立場にあるといってよいでしょう。

そして、昨年開催された第34回大会において、彼らが伝統的なソフトセイルとモノハル艇を捨て、ウィングセイルとフォイリングカタマランによるダイナミックなスポーツへとアメリカズカップを変貌させたことはご存知のとおりです。

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©ACEA/Photo Gilles Martin-Raget

エリソンは一体どこをめざしているのか?

この疑問に対し、昨年サンフランシスコの自宅 (桂離宮を模したあの和風大豪邸) でCBSのニュースキャスター、チャーリー・ローズのインタビューを受けたエリソンは、以下のように答えています。

CBS News: Oracle CEO Ellison on America's Cup racing: "It has to be a little bit risky"

「我々はいかにして若者に受け入れられるスポーツになれるかを、他のスポーツと競い合っているところなんだ。セーリングをもっとエキサイティングで現代に合ったスポーツにしなければならない。いつまでも1851年のままというわけにはいかないからね」

----  新しいボートに対して『あれはもうアメリカズカップではない』『やりすぎだ』という批判がありますが?

「オリンピックにプロが出場することにだって批判はある。人は変化が嫌いなんだ。スケボーをオリンピック種目へ加えることにも多くの批判がある」

---- でもそれは別の話ですよね。これは単なる変更というレベルの話ではなくて、それまでの考え方を根本から変えてしまうような大変革です。

「例えばスノボを入れたことも、オリンピックにとって大変革だったといえるだろう。我々はスポーツを時代に合わせていかなければならないんだ」

---- でも、それはカネがかかると同時に危険でもあります。バート・シンプソンの事故はあなたにとって心の痛手となりませんでしたか?

「我々はアメリカズカップをエクストリームでエキサイティングなスポーツにすると決めた。だが、決してセーラーが怪我をするほど本当に危ないスポーツにするつもりはなかった。セーリングの世界は小さい。彼の死は家族が死んだのと同じで、決して忘れられるものではない」

---- この事故が起きたとき『やりすぎた』とは思いませんでしたか?

「それは私も考えた。だが、今は正しい選択をしたと思っている。セーリングを (一部金持ちのスポーツから) 広く経済的にも受け入れられるものにするには、もっと速くて先進的なボートが必要なんだ。テレビで観ても面白くて、若者の間でもっと人気が出るようなスポーツにならなければならない。そのためには、見ている人が少しハラハラするくらいの方がいいんだ」

--- あなたはもうアメリカズカップに勝利したではないですか。なぜラリー・エリソンほどの人物が『よっしゃ勝ったぞ!また最速のボートと最高のセーラーを揃えて何度でも勝ってやるぞ!』というような行動をとるのですか?

「おかしなことなんだが、2回続けて負けた後、私の性格的に負けているうちはやめられないことに気づいた。そして今度は勝った後、性格的に勝ってるうちはやめられないことに気づいたんだ。まるでワナにハマったようなもんだよ。私はタバコを吸わない代わりに、ヨットにハマってるんだ」

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エリソンとクーツがアメリカズカップのスタイルを全く変えてしまったことに、批判があるのは事実です。しかし、このインタビューからはセーリングの将来を憂い、変えていかなければならないという彼の強い信念が感じられます。

確かに昨年サンフランシスコでAC72によるバトルを観たとき、ブログ主とんべえも「こりゃスゲェ!」という衝撃を受けると同時に、ヨットレースが全く新しい次元に入ったことを実感しました。

セーリング人口がどんどん高齢化しているなか、次世代にこのスポーツの面白さを如何にして伝えるか、この命題に対するひとつの回答であることは間違いありません。

今年の9月ラリー・エリソンは長年勤めてきたオラクルのCEOを辞め、CTOに退きました。これによって空いた時間で、彼はこれまで以上にアメリカズカップに深く関わるであろうともウワサされています。これから彼とクーツがアメリカズカップの未来、そしてセーリングの未来に対しどのようなビジョンを示して行くか、今後も注視していきたいと思います。

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2014年11月20日 (木)

2017年アメリカズカップ開催地はバミューダに決定!そして第6の挑戦者は・・・

AP通信によると、アメリカズカップの大会運営組織アメリカズカップ・イベントオーソリティ(ACEA)は、2017年に予定されている次回大会の開催地にバミューダを選んだということです。

AP Source: Bermuda to Host 2017 America's Cup

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© ACEA

ACEAは現地時間の12月2日ニューヨークにおいて正式な記者会見を予定しているため、APの取材に対しラリー・エリソンとラッセル・クーツ、さらにサンディエゴ、バミューダ双方の関係者も、現時点では一切のコメントを拒否しています。

APの解説によると、バミューダの税制優遇が決め手となった一方で、多くの挑戦者チーム、特にバミューダの選択がチームの資金源であるニュージーランド政府や大口スポンサーにとって余りメリットのないチーム・ニュージーランドには、大きな打撃になるだろうとしています。

なお、APの取材に対しラッセル・クーツは、近く発表される第6の挑戦チームはアジアからの参戦になるであろうことを示唆しています。

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© ACEA / Photo Gilles Martin-Raget

この中に加わるのは?

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2014年11月16日 (日)

なぜラリー・エリソンはアメリカズカップにこだわるのか? (1)

2017年に開催される第35回アメリカズカップの行方を占う上で重要なカギを握っているのは、言うまでもなくオラクルチームUSAのオーナーであるラリー・エリソン氏です。

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© ACEA / PHOTO ABNER KINGMAN

IT企業オラクルの創立者であり、世界有数の億万長者であるラリー・エリソン。その彼が何故アメリカズカップにこだわるのか、興味深い記事が掲載されていたのでご紹介しましょう。

Business Insider: Why Oracle Founder Larry Ellison NEEDS To Have The World's Greatest Competitive Team

Royal Gazette: Ellison's key role in America's Cup decision

2014年版のフォーブス世界長者番付において、総資産494億ドル(5兆7000億円)で第5位にランキングされるラリー・エリソンがセーリングに出会ったのは、1966年カリフォルニア大学でセーリングクラスを受講した22歳のときでした。

すっかりセーリングの虜となったエリソンは、25歳のとき34フィートのレーシングスループ艇を購入します。

彼はセーリングの魅力についてこう語っています。

「誰にも邪魔されず、ただ風のまま旅をする。そんなセーリングの魅力にとりつかれてしまったんだよ」

その後、1977年にオラクルの前身であるSDL(Software Development Laboratories)を設立するなど超多忙となり、最初のヨットは程なく手放してしまいますが、彼のセーリングにかける情熱が失われることはありませんでした。

90年代に入り、エリソンは78フィートのヨット<さよなら>を購入し、高いレベルでのレース活動を開始します。ビジネス同様ここでも彼は素晴らしいリーダーシップとセーリングスキルをみせ、マキシクラスの世界チャンピオンに5度輝きます。

しかし、同時に厳しくつらい事態にも遭遇します。1998年オーストラリアで開催されたシドニー・ホバートレースに、エリソンは自ら<さよなら>のスキッパーとして参加します。

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© Youtube / CYCATV

シドニーをスタートし、タスマニアのホバートまでの630ノーティカルマイル(約1200km)を帆走するこのレースは、元々荒れることで有名でしたが、特に1998年のレースは爆弾低気圧の直撃を受け、最大風速は70ノットにも達し、参加114艇中5艇が船体放棄、66艇がリタイア。わずか44艇が完走する一方で55名がヘリで救助され、死者行方不明6名を出すという最悪のレースとなりました。

このレースでエリソンの<さよなら>は優勝を飾りますが、彼はレースに勝ったのではなく、ただ単に最初の生存者になったに過ぎないと、のちに語っています。

Courier Mail: Larry Ellison says 'never again' to Hobart race

「いつもあれは私の人生を変えた経験だったと思うんだ」

「素晴らしい天候の下、シドニーのハーバーを出発したあと、空は徐々に暗くなると共に風は激しくなっていった。そして12時間後には、当時の大会記録保持者が24時間で到達した地点を、我々は遥かに超えていた」

「つまり、大会記録の倍を超えるスピードで進んでいたんだ。こりゃスゴイぞ。でも一体どうなってるんだ?と思ったのを覚えているよ」

「<さよなら>は21ノット以上のスピードが出ていた。でも私は『そんなはずはない』と言い続けてたんだ。そのときはまだ普通の嵐で、その先に何が待っているか、我々には全くわかっていなかった」

70ノットの風と波にもみくちゃにされた後、風は俄かにおさまります。そのとき彼は「助かった!」と思いますが、じきにそれは間違いであると思い知らされるのです。

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© Youtube / CYCATV

そうです。彼らは爆弾低気圧の"目"に入ったのでした。

「<さよなら>には2台のノートPCを搭載していたんだが、その画面上に映し出される低気圧の中心のほんの右側に小さな"+"マークが表示されていた。実はそれが我々だったんだ。」

「我々は『助かった!』と思っていたが、実はまだ半分に過ぎなかったんだ」

そのときの海の状況は非常に恐ろしいものであったとエリソンは語っています。

「とにかく全てが普通じゃなかった。風の音はそれまで聞いたことがないほど、ものすごくカン高いものだった。空も異常なら波も異常。何もかもが異常だった」

この九死に一生をえるような経験にも関わらず、彼はセーリングへの情熱を保ち続けます。

<<つづく>>

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2014年11月 8日 (土)

It's all about money.

アメリカズカップの大会オーガナイザであるアメリカズカップ・イベントオーソリティ(ACEA)は、現地時間の2014年11月5日、来年から開始されるプレイベント「アメリカズカップ・ワールドシリーズ」の開催地のひとつとして、英領バミューダ諸島が選ばれたことを発表しました。

35th America's Cup: Bermuda to hold America's Cup World Series event in 2015

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Copyright: ACEA

アメリカズカップ・ワールドシリーズ (ACWS) は、2017年に開催される次回アメリカズカップの予選をかねたイベントで、AC45を使用して世界を転戦しながらポイントを競うサーキットシリーズです。

ACEAは2015年からこのACWSを開催するとしていましたが、これまで具体的な開催地や日程は一切発表されていませんでした。今回の発表はその第一号であり、2015年の10月16~18日にバミューダでACWSを開催するということです。

次回アメリカズカップ本戦の開催地を巡り、サンディエゴとバミューダが激しく争っていることは、11月2日付の当ブログでもお伝えしたとおりです。このまま本戦もバミューダで開催されるのか、それともサンディエゴからさらなる譲歩を引き出すための駆け引きなのか、現時点ではわかりません。

ヒートアップする誘致合戦ついて、サンディエゴの地元紙サンディエゴ・ユニオントリビューンは、「大会運営側だけでなく参加する全チームに対し、一切課税しないというインセンティブをバミューダ政府は提示している」と報道しています。

Royal Gazette (バミューダの地元紙): Tension mounts in America's Cup battle

ま、カリフォルニアの税金が高いのは事実ですし、一方バミューダは元々タックス・ヘイブンですからね。

今回の開催地選びに際し、ACEA は各候補地に最大限のインセンティブを求めており、サンディエゴに対しては「10,000泊分のホテルを無料で提供しろ」と要求していたことが明らかになっています。

San Diego Union Tribune: America's Cup wants 10K free hotel rooms

というわけで、12月に予定されている開催地の発表へ向け、カネを巡る駆け引きが水面下で続くことでしょう。

アメリカズカップにはマネーゲームの一面があるのは今に始まったことではありませんが、今回の件に対しユニオントリビューン紙も「It is all about money. (すべてはカネ次第)」と皮肉っています。

そんなカネの話はさておいて、どちらが良いかについてはネット上でも様々な意見がみられます。

サンディエゴ:

  • ○過去に3度アメリカズカップを開催した実績がある。
  • ○多数の観客が世界から集まっても対応できるインフラやサービスが既に存在。
  • ○北米の巨大市場内にあり、大きな経済効果と大衆アピールを期待できる。
  • ×高税率。税制インセンティブも約束されない(らしい)。
  • ×風は弱く、レース海域も狭い。

バミューダ:

  • ○税制インセンティブあり。政府は非課税を約束。
  • ○良い風が吹き、レース海域も広い。ダイナミックなフォイリングを期待できる。
  • ○ヨーロッパからの参加チームが多く、TV放映上有利 (母国との時差小)。
  • ×インフラのキャパに不安あり。
  • ×巨大市場から隔離されており、経済効果も限定的。

さて、どちらが良いでしょう?

ちなみに先日当ブログでサンディエゴの映像をご紹介しましたが、かつてサンディエゴの住人であったブログ主とんべえ (現在は他州在住です) として、一方だけに肩入れしているように映るのも心苦しいので 、バミューダの映像もご紹介します。

いやぁ、サンディエゴに負けず劣らず、綺麗なところですねぇ。

しっかしドローンってすごい!(← え、そこに食いつく!?)

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