カテゴリー「Louis Vuitton World Series」の記事

2009年11月 7日 (土)

Have a nice weekend! - アメリカスカップの未来はこの週末に懸かっている

昨日アップした「BOR 90」のオンボード映像で「まだジブをあげていない」とコメントしましたが、画面を拡大してみたら、ちゃんと上がっていました。ゴメンナサイ。謹んで訂正させていただきます。

さて、米国時間の11月6日(金)ニューヨーク州最高裁判所で開かれたソシエテ・ノーティーク・ドゥ・ジュネーブ(SNG)とゴールデンゲート・ヨットクラブ(GGYC)による口頭弁論は結論を持ち越し、この週末の間当事者同士で協議を行って、その結果を月曜日法廷に報告することとなりました。

MercuryNews.com: America's Cup feud could be nearing end

昨日もお伝えしたように、口頭弁論の様子は傍聴席にいたセーリングアナーキーのメンバーが、下記サイトへ文字情報でライブ中継してくれていました。

Sailing Anarchy: NYSC Hearing GGYC/SNG, 091106

このライブ中継から垣間見る法廷でのやり取りが、結構面白いものだったので、ちょっとご紹介しましょう。

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SNG弁護士 バリー・オストレイガー(以下BO): 開催地問題がどう決着しようが、SNGは来年2月にレースを行う意向だ。

NY州最高裁 コーンライヒ判事(以下JK); オーストラリアを開催地とした場合、今からでも準備が間に合うか?

BO:輸送面に関しては、1週間で解決可能。

GGYC弁護士 デイビッド・ボイズ(以下DB): オーストラリア東海岸は2,500マイルにも及び、現地調査に時間が必要。

JK: オーストラリアなら双方合意可能か?

DB: 単にオーストラリア東海岸では範囲が広すぎる。

BO: 贈与証書はSNGに開催地選択権を認めている。挑戦者には贈与証書に準拠した開催地を拒否する権利はない。贈与証書の認めるSNGの開催地決定権は、6ヶ月前に開催地提示を求めたカーン判事の裁判所命令を超越する。そもそもカーン命令は”SNGが選ぶ如何なる場所”としていた。

JK: 贈与証書に準拠するのが原則。

BO: 贈与証書に準拠するなら開催地は南半球。GGYCもそれは判っていたはず。SNGは多くの時間と金をRAKに注ぎ込んできた。これではSNGがカードゲームの犠牲者。バレンシアは贈与証書に違反するが、もしそれが裁判所の命令であるなら、バレンシアでレースをする。SNGのボートがRAKに到着するのを待って、開催地の件を持ち出してきたGGYCのやり口は汚い。オーストラリアはセーリングに適している。GGYCのボートはサンディエゴにあり、SNGのボートはRAKにある。開催日の迫った今、ボートの輸送が問題となりつつある。

JK: カーン判事が命令を下した段階ではバレンシアは贈与証書に準拠していた。しかし、今は準拠していない。単にGGYCは待っていたわけでなく、SNGも贈与証書の要件を理解した上で、ボートを送るべきと法廷は考える。GGYCが現地に調査員を派遣したことが、RAKでの開催に合意するというサインと見られたのも事実。

DB: 4月7日付の裁判所命令に対し控訴していないということは、SNGはバレンシアか、南半球(ただし6ヶ月前に提示が必要)での開催に合意したということ。

(セーリングアナーキー・レポーターのコメント: デイビッド・ボイズの弁論絶好調!)

JK: なぜGGYCは開催地に対する異議申し立てを待ったのか?なぜRAKと発表された8月6日直後に異議申し立てをしなかったのか?

DB: GGYCは記者会見で一度だけRAKでも良いと述べたが、それ以外は一貫してノーと言い続けてきた。その他の文書等でも、バレンシア以外(の北半球)は受け入れられないと一貫して主張してきた。SNGはそのことを認識していたはず。SNGは6ヶ月前という締め切り直前までRAKの発表を引き延ばした。発表がない限り、解決の方策もない。GGYCはRAKが受け入れ可能か否か誠意を持って検討した。SNGはGGYCの意見に一切耳を傾けず、開催地を決定した。SNGはGGYCが異議を唱えると判っていた。GGYCは偽りを言っていない。今回召集された陪審員の意見を踏まえ、今やSNGは来年2月バレンシアで巨大マルチハル対決を開催しても、安全的に問題ないと言い出している。

(ラッセル・クーツもトム・イーマンと共に出廷。プレス席にも多数の報道陣。ただしブラッド・バタワースは見当たらず。)

JK: 6ヶ月まえに開催地を提示することは重要か?前回のアメリカスカップでは、開催地は主催者(防衛者)により提示されたが、事情が変わったのか?

(コーンライヒ判事とボイズ弁護士とのやり取りは順調。ボイズは開催地問題に関し非常に良い説明をしている。コーンライヒ判事はボイズの受け答えに興味を示し、時間を割き質問するも、的確な回答を得ている。とってもいいカンジ!)

DB: カーン判事の命令を読み解くと、もし6ヶ月前の提示がないなら、開催地はバレンシアでなければならず、それ以外の場所であれば6ヶ月前に提示されなければならない。過去アメリカスカップの歴史において、開催前6ヶ月を過ぎてから開催地が決定されたことはない。ニュージーランドの巨大モノハル「KZ-1」とデニス・コナーのカタマラン版「スターズ&ストライプス」が対決した1988年大会でも10ヶ月前に提示されていた。開催地の提示期間に関する規定は贈与証書にない。従って、理屈から言うと1週間前に提示しても構わない。しかし、そんなことをしたらメチャクチャになる。SNGの行動は、開催地の提示を2ヶ月前、1ヶ月前、2週間前と遅らそうとしている疑いがある。準備期間が如何に重要かは、以前証人が証言したとおり。準備期間が限られている以上、今回SNGが提示した2,500マイルに及ぶオーストラリア東海岸という提案は、もっと範囲を狭めるべき。証人の証言を求める。

BO: 証人を立てることには反対。反論に準備が必要。後日証人を立てる。

JK: 誰がオーストラリアのどの街を開催地として選ぶにせよ、大会開催に問題はないか?GGYCは候補地をどう調査するか?

DB: ベースを建設したり、ワークパーミットを取ったり等に時間が掛かる。設備やサポートスタッフも問題。今日今すぐ設備の建築を始めることは出来ない。資材類やスタッフに対する許認可も必要。オーストラリアでの開催は可能かもしれない。しかし、単にスイッチを入れるのとは訳が違う。残り90日では無理。RAKを調査しなければならなかった理由は、RAKが贈与証書に準拠しておらず、もしRAKで開催するなら我々の合意が必要だったから。2月にレースをすると言っておきながら、期限目一杯まで開催地の発表を引き延ばしたのはSNG。

JK: もし新たな開催地を選ぶなら、SNGには時間が必要だったはず。

DB: 先週の裁判所命令から8日間、開催地に関し何の発表もなかった。今となってはレースまで8/100日。SNGはGGYCに告げるだけでなく、既に南半球の開催地選定作業に入っている。SNGは裁判所の命令を座して待っているわけではない。6ヶ月前の通達義務を遵守するには、その通り6ヶ月前に通達するか、バレンシアとするかしかない。もしSNGが南半球を選択するなら、6ヶ月前に掲示板へ提示していなければならない。よって、今となってはバレンシアしかない。もしバレンシアに異議があるなら、6ヶ月前に通告する必要があった。しかし、これらを規定した裁判所命令に誰も異議申し立てをしていない。SNGはGGYCの意向に関わらずRAKを選んだ。GGYCがRAKの選択に対し異論を表明したのは、開催地提示の翌日である。

(オーストラリア開催の提案は、開催地選定問題にクセ球を投げる結果となった。コーンライヒ判事は、これまでの経緯を無視して、ボイズ弁護士に何故オーストラリアではいけないのか説明させている。判事がどちらの立場に立つのか今のところ全く不明。)

BO: (BMWオラクルの)トム・イーマンは3・4度に渡り「SNGによって選ばれる如何なる場所」というのは正しいと言う認識を示した。そして、RAKへ挑戦艇を出荷すると称して米国沿岸警備隊から船舶証明証を取得。だからSNGも「アリンギ5」をRAKへ出荷した。裁判所命令は贈与証書と矛盾。しかし、もしそれが命令とあらば、バレンシアでレースする。

DB: 今我々が知りたいのは、どこでレースが開催されるかだ。

BO: 贈与証書に準拠し、セーリングが3番目に人気のある場所(オーストラリア)で、国際標準の大会を開催可能だ。GGYCが提出した船舶登録証はRAKへ挑戦艇を出荷することが前提で交付。GGYCも調査隊をRAKへ派遣した。ラリー・エリソンは大富豪。オーストラリアもイベント開催に積極的。何百ものレガッタが当地では開催されている。施設も完備。GGYCにとっても充分すぎるほど準備ができている。贈与証書は防衛者の優位を認めている。

(コーンライヒ判事は再びオストレイガー弁護士と討議。判事は頬杖をつき、薄ら笑いを浮かべ、イライラした様子。オストレイガーの口述を遮り、なぜ挑戦艇を中東へ送ろうとしたか問い詰める。ついに判事は完全に口を塞いでいる!オストレイガーの口述に不快の模様。椅子を前後に揺らし、どこかへ行ってしまいたいかのごとく。)

JK: 私はここで判決を下すことをやめます。両弁護士はこっちへ来なさい。

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文字実況から読み取れる具体的なやり取りはここまでです。ちょっとのつもりが、長文になってしまいました。

しかし、まったくアメリカの弁護士さんって、「ああ言えばこう言う」というタイプの典型です。ま、それが優秀な弁護士ってことですが・・・

さて、議論が平行線で一向に埒が明かないことに業を煮やしたコーンライヒ判事は、なんとか両者を合意に持ち込むため、双方の弁護士を自分の前に呼び、暫く協議します。その後両弁護士は双方の陣営へ戻り、SNG、GGYCの関係者と協議を行います

そして、コーンライヒ判事は、SNG代表としてルシアン・マスメジャン(SNG法務顧問(弁護士))を、GGYC代表としてラッセル・クーツ(BMWオラクルCEO)を自室へ呼び、三者で協議を行います。その結果、この週末を掛けSNGとGGYCはニューヨークで協議を行い、結果を週明け月曜日に改めてコーンライヒ判事へ報告することで合意しました。

というわけで、長々と続いた双方弁護士の不毛な議論の結果、この週末当事者同士が腹を割って話し合い、結果を法廷に報告することになりました。

最初っからそうすればよいのですが、そうは行かないのが世の常です。結局これまで法廷で争うことしかできなかったアリンギとオラクルですが、スケジュール的にのっぴきならない所まで来て、ようやく直接対話の席に着いたといえるでしょう。

また、コーンライヒ判事の求めによって陪審を設置することとなり、SNGはグラハム・マッケンジー(ニュージーランド:ISAF評議員)を、GGYCはブライアン・ウィリス(イギリス:第32回アメリカスカップ審判委員長、元ISAF競技規則委員)を指名したことは以前お伝えしたとおりです。この二人は第三の陪審員として、デイビッド・ティレット(オーストラリア:ISAF競技規則委員長)を指名しました。

この三名による”賢人会議”も同じくこの週末協議を行い、競技艇の計測方法やルールの制定方法に関する意見をコーンライヒ判事に提出することとなっています。

今回のコーンライヒ判事の判断に対し、SNG/アリンギ側、GGYC/BMWオラクル側双方とも、歓迎の意を表しています。

Alinghi: Defender Alinghi open to discussions for 33rd America’s Cup in February 2010

GGYC: Statement on Venue hearing

また、この結果、ラッセル・クーツは今日からニースで始まっているルイヴィトン・トロフィへ遅れて参加することになり、BMWオラクルのヘルムスは、代わってギャビン・ブレディが務めることになりました。

さて、週明けの月曜、一体どんな話が飛び出してくるでしょうか?

両弁護士の言動を見る限り、単にオーストラリア東海岸とした今回のアリンギの提案では、合意に至らないように思います。となると、やはりバレンシアでしょうか?しかし、軽風仕様の防衛艇を建造したアリンギは、バレンシアを頑なに拒否しています。

何れにしろ、コーンライヒ判事が今週末でケリをつけようとしていることだけは確かです。

さぁ、ニューヨークでの会談に期待しましょう!

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2009年11月 4日 (水)

一夜明けて - 「BOR 90」ディスマスト続報

さて、昨日のセンセーショナルな"事故"から一夜明けた現地の状況です。

「BOR 90」がサンディエゴ ポイント・ロマ沖でマストを折り、3時間を掛けてチームベースへ曳航されたことは、地元TV局 FOX 5 のニュースでも取り上げられました。その模様は以下の通りです。

FOX 5 San Diego: America's Cup sailboat's $10M mast snaps

レポーターのジェニファー・ミューサによると、「BOR 90」には8名のクルーが乗り込み、サンディエゴの沖合い30マイルを完璧なコンディション下で帆走していたところ、200フィートのマストが突然折れたということです。

インタビューに対しヘルムを取っていたジェームス・スピットヒルは「チームにとってちょっとした挫折だけど、必ず立ち直れると信じているよ」と答えています。

さらにミューサは「チームは出来るだけ早く帆走テストを再開したいとしています。」「スペアのマストは2本ありますが、その内のひとつを使用するのか、或いは今日折れたマストを修復して使用するのかについて、チームから正式なコメントはありません。」とレポートしています。

一方、BMWオラクルの公式ブログに一夜明けたチームの状況が紹介されています。

BMW ORACLE Racing Blog: The day after: Resilient

BMW ORACLE Racing Blog: Fresh says: We're moving ahead'

これらのブログによると、まず朝9:00 チームの全員がベース内のセイルロフトに集合し、今後の進め方についてミーティングを行ったそうです。さらに元々昨日折れたマストを使用したテストは今週一杯で終了し、来週からは「新しいリグ・プラットフォーム」でのテストを予定であったという注目すべきコメントが書かれています。よって、このディスマストによるロスは数日分に過ぎないというのです。

さて、この「新しいリグ・プラットフォーム」とは一体どんなリグシステムなのか、果たして遂にウィングの登場でしょうか?! こりゃ、今週末もベース見物に行かなければならなくなりました。

さて、一方BMWオラクルは、今月7日からニースで開催されるルイヴィトン・トロフィのラインアップを公式サイトで発表しています。

BMW ORACLE Racing: BMW ORACLE Racing gears up for Louis Vuitton Trophy.

これによると、今年2月のルイヴィトン・パシフィックシリーズ同様、ラッセル・クーツ自身がヘルムを取り、ハーミッシュ・ペッパーがタクティシャンに入ります。また、2月同様、早福和彦選手の名がリザーブとして入っています。

2月のときも、現地入り早々負傷した他チームのバウマンの交代として駆りだされた早福さんでした。今回も頑張ってください!

BMWオラクル出場ラインアップ

Alberto 'Albi' Barovier (ITA) - Mid Bow

Gavin Brady (NZL) - Afterguard

Russell Coutts (NZL) - BMW ORACLE Racing skipper and CEO

Cameron Dunn (NZL) - Traveller

Larry Ellison (USA) - Afterguard

Shannon Falcone (ANT) - Mast

Daniel Fong (NZL) - Trimmer

Jamie Gale (NZL) - Pit

Michele Ivaldi (ITA) - Afterguard

Jono MacBeth (NZL) - Runner

Brian MacInnes (CAN) - Grinder

Hamish Pepper (NZL) - Tactician

Rob Salthouse (NZL) - Trimmer

Alan Smith (NZL) - Bow

Joe Spooner (NZL) - Grinder

Andrew Taylor (NZL) - Grinder

Paul Westlake (AUS) - Trimmer

Hamish Willcox (NZL) - Strategist / Meteo

Kazuhiko 'Fuku' Sofuku (JPN) - Spare

Andrew Palfrey (AUS) - Coach / Chase boat

Joel Rewa-Morgan (NZL) - Physio

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2009年10月22日 (木)

ルイヴィトン・トロフィーの公式サイトオープン

Louis_vuitton_trophy_logo

ルイヴィトンとワールド・セーリング・チーム・アソシエーション(WSTA)によるACボートを使用したマッチレースサーキット「ルイヴィトン・トロフィー」の公式サイトがオープンしました。

Luis Vuitton Trophy & WSTA Official Website

先に当ブログでもお伝えしたとおり、この「ルイヴィトン・トロフィー」はルイヴィトンとチーム・ニュージーランドやBMWオラクルが中核となって結成されたワールド・セーリング・チーム・アソシエーションが共催する形で立ち上げられた新しいマッチレース・サーキットです。

公式サイトのオープンに合わせ、ルイヴィトンのブルーノ・トルブレとWSTAの連名で新たなプレスリリースが配信されています。

Luis Vuitton Trophy: Preparations Gather Pace for Luis Vuitton Trophy - Nice

概要は前回お伝えした内容とほぼ同じですが、アリンギからチーム・ジャーマニーへ移籍していたヨッヘン・シューマンが新たにスキッパーとしてK-チャレンジと合流することになったため、チームの名称が「オール・フォー・ワン(ALL4ONE)」に変わっています。

また、使用されるAC艇にも変更があり、BMWオラクルのUSA-76に代わってオール・フォー・ワンのFRA-93が使用されることになりました。その他のボートはマスカルツォーネのITA-90 & 99、そしてオリジンのGBR-75で変更ありません。(恐らくオラクルがUSA-76の準備に人手を割きたくなかったのでしょう。その結果 GBR-75 だけが IACCバージョン4 となりましたので、性能調整が必要ですね。)

しかし、本家アメリカスカップが超ハイテクマルチハルで動き出した今、先日お伝えしたブラッド・バタワースの言葉のように、本シリーズに対して今ひとつ気持ちが盛り上がらないというのがブログ主とんべえの本音です・・・

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おまけ

少し前に XSRacing で紹介されていた「クルージングボートでの正しいフレンチトーストの作り方」です。

ノリノリです。

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2009年10月13日 (火)

ブラッド・バタワース、第33回アメリカスカップについて語る。

さて、挑戦艇「BOR 90」の改造に関し、BMWオラクルはエンジンを搭載するための大改造を行っていることを明らかにしました。

BMW Oracle Racing: BMW ORACLE Racing prepares for another round of testing

この挑戦艇の改造に関しては、一度現地を見に行ってから改めてアップしようと思います。

ということで、今日はもう一方の当事者である防衛者アリンギ側のコメントをお伝えしましょう。

少し前になりますが、9月28日にバレンシア・セーリングがアリンギ・スキッパー、ブラッド・バタワースにインタビューを行っていますので、ご紹介します。

Valencia Sailing: Brad Butterworth talks to Valencia Sailing about Alinghi and the 33rd America's Cup

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アリンギ スキッパー、ブラッド・バタワース Photo Copyright Unknown

このインタビューでバタワースは、防衛艇や開催地、計測方法にISAFとの秘密合意に至るまで、広範囲に渡って彼の意見を述べています。

防衛者であるアリンギが昨今の状況についてどう考えているのかを知る上で、非常に興味深い内容となっています。

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バレンシア・セーリング(以下VS): あなた方のカタマラン「アリンギ5」はイタリア、ジェノヴァでの海上テストを終え、今まさにラアス・アル・ハイマ(RAK)へ送られようとしています。海上テストの結果について教えていただけますか?

ブラッド・バタワース(以下BB): テストの結果、「アリンギ5」は全くもってエキサイティングで、とても速くて、走らせるのにワクワクするようなボートだとわかった。でも、オラクルと闘うまでには、まだ改良すべき点が沢山ある。来年2月オラクルに勝つために、これからRAKでボートのレベルアップを行うことにしている。

VS: ジェノヴァでのコンディションは如何でしたか?

BB: 様々なコンディション下でテストをすることが出来た。ときには風が強すぎるときもあったし、もちろん風がないときもあった。でも、全体的に言って良い風に恵まれたね。非常に速いスピードで走れたし、多くのことを学ぶことができた。だが、先も言ったとおり、まだまだやらなければならないことが沢山ある。

VS: "非常に速いスピード"と仰いましたが、どのレベルまで行ったのでしょうか?

BB: そうだな、20ノット台後半くらいは行ったかな。

VS: どこか壊れたことはありませんか?重大な構造的破損とか?

BB: まぁ想定範囲内だったね。もちろん時には壊れることもあったけど、最終的には余りに破損箇所が少なくてビックリしたくらいだ。確かにジェノヴァにいる間に何箇所か壊れたのは事実だし、その内のひとつはバックボーンフレーム近くが破損したものだった。とはいえ、重大な構造欠陥ではなかったけどね。我々は徹夜で修復し、念には念を入れてフレームの反対側にも同じ補修を行ったんだ。その結果、その後のセーリングを通じて、なんら問題は発生しなかったよ。

VS: 何名のクルーを搭乗させるか、決められましたか?

BB: いや、まだ決めてない。そういったことは、ボートを最適化するため出来るだけ多くのテストを行って追い込んで行きたいと思っている。残された時間は少ないが、最適化すべきことは山ほどある。とにかく時間がないから、変更したい部分のパーツも大至急作らなきゃならない。RAKでテストを開始するまで殆ど時間がないからね。

VS: ボートはいつ頃RAKに到着する予定ですか?

BB: はっきりしたことは判らないけど、多分10月初めだと思う。

VS: 直近のアリンギの予定はどうなっているんでしょうか?あなた自身も既にRAKにおられるのですか?

BB: 私はまだジェノヴァにいるが、来週ごろには現地入りするつもりだ。まずボートが着いたら色々とすることがあるが、それからできるだけ早くセーリングを開始したいと思っている。

VS: ということは、現地のインフラが整っていなければなりませんね。現地工事の進捗状況は如何ですか?

BB: 我々はもちろんラアス・アル・ハイマ首長国側も全力を尽くしている。すでに幾つかの建屋は完成しているし、トレーニング海域も決まっている。こういった準備はアリンギに対してだけでなく、両チームに対して行われている。「アメリカスカップ島」への準備が猛スピードで進められている様子をみると、RAK側が両チームをホストするため、如何に大金を注ぎ込んでいるかわかるよ。

VS: BMWオラクルに関しては如何ですか?オラクル側も調査チームを現地へ派遣したと伝えられていますが、現地の印象について何らかの連絡はありましたか?

BB: いや、まだ何の連絡もない。彼らのスタッフは依然現地に残っているが、きっと彼らも我々同様準備に梃子摺るだろう。彼らの本隊がいつ現地入りするのか、或いはどういった計画でいるのか、私にはわからないが、ともかく現地入りを急ぐよう促しているところだ。

VS: ということは、あなたの理解としては、オラクルも現地入りする意向であると?

BB: そうだなぁ、その質問は連中に聞いてくれよ。我々は彼らから何も聞いちゃいないんだ。彼らが来ないとも聞いていない。だから、その答えは彼らに聞くべきだな。開催地が発表されて既に2ヶ月が経つが、それに対する異論は一切届いてきていない(註:9月28日段階。その後10月1日にBMWオラクル側はNY州最高裁へRAKは開催地として不適格との訴えをおこした)。連中も我々の動向を日々追っかけているから、我々のボートが現地へ向かっていることは判っているはずだ。そうやって何もしないことがカップに勝利する手段だと思っているなら、それはただスケジュールを遅らせるだけで、何もいい事なんかありゃしないのにね。

VS: もう少し長い目で見てみるとどうなりますか?すべてうまく運んで再びアリンギが勝利した場合、第34回アメリカスカップはどうなりますか?

BB: 現段階では何も決まっていない。前回きちんとした計画を建てたにも関わらず、連中が仕掛けたゴタゴタの結果、折角19チームと築き上げた良好な関係は全てご破算となってしまった。今回のオラクルとの対決の後、どういうことになるか私にはわからない。次回に関しては完全に宙ぶらりんの状態で、今のところ何も決まっちゃいないんだ。

VS: アメリカスカップが法廷闘争の泥沼に陥っている間に、ルイヴィトンが「ルイヴィトン・ワールドシリーズ」を立ち上げると発表しました。アリンギは去る2月オークランドで開催された大会には参加しましたが、今回は何故不参加なのでしょうか?

BB: 何故なら、我々には他にやらなきゃならないことがあるからだ。防衛艇を完成するという仕事がね。仰るとおり我々は2月の「ルイヴィトン・パシフィックシリーズ」に参加したが、あれはチーム・ニュージーランドに提訴を取り下げさせるという目的があったんだ。あのレースは旧型のボートで行われたわけだが、私個人としてはもっと新しくてエキサイティングなボートでレースをしたいと思っている。あれはルイヴィトンのための大会であって、他の誰のためのものでもない。

VS: さて、第33回アメリカスカップを巡る状況に戻りますが、争点のひとつにBMWオラクルの挑戦艇に対する計測手順が挙げられます。SNGは本件に対する反論書を裁判所へ提出したところですが、オラクルのボートはきちんと計測されると思いますか?

BB: いや、私にはそう思えないね。連中の提出した船舶登録証を見ても、彼ら自身正確な寸法を把握していないか、或いはボートを計測することに興味がないとしか思えない。最終的に我々はきちんと 90 x 90 フィート以内に収まるよう押さえたが、連中のボートは 90 x 90 フィートですらないかもしれないね。彼らには計測ルールを吟味する充分な時間があったし、何をしなければいけなかったか判っているはずだ。とにかく、奴らのやりたいようにやればいいから、後はレースで決着を着けたらいいと思っている。

VS: 満載水線長(LWL)の計測に何故ラダーを含めたのですか?

BB: ボートの一部だからさ。

VS: マルチハルの場合、通常ラダーは水線長に含まれるものなのですか?

BB: いいかい、これはアメリカスカップであり、ラダーはボートの一部なんだ。ニューヨーク州最高裁がそう言ってるんだ。何かあるたびに我々は裁判所へお伺いをたてなきゃならない。しかも、アメリカのニューヨークの裁判所にね。その裁判所がラダーはボートの一部だと言ってるんだ。そのときから解釈が変わったのさ。だから、なんら問題があるとは思えないね。

VS: ニューヨーク州最高裁は、防衛者にはルールを自由に設定できる権利があると認めました。これがフェアかどうかを議論するつもりはありませんが、ISAFとアリンギとの間で交わされた合意について教えてください。何故この合意は秘密にされてきたのですか?

BB: それは、この合意がヨットクラブとISAFとの間で交わされた単なる商取引上の合意に過ぎなかったからさ。ISAFのルールを使うと言う合意であり、レースを誰に対しても公平に行うため、ISAFから人員を派遣してもらうという合意なんだ。この合意が6月に交わされた為「密約」なんて言われたけど、他の大会でもこんな合意書をいちいち公開したりしないだろ。全くナンセンスだね。

VS: それを何故この期に及んで公開することにしたのですか?

BB: 別にたいしたことではないからさ。アメリカ人が鬱陶しく絡んでくるから、公開しただけのことだよ。これであなたも見ることができ、みんなも内容を確認することができるというわけだ。実際過去ISAFと交わされてきた合意書より、ずっとましな内容になっている。ISAFとセーリングスポーツそのものにとっても、ずっと良い内容だよ。だから、この合意書に関しごちゃごちゃ言うのは馬鹿げた話に過ぎないよ。

VS: 公開された合意書は元々の内容ですか?それとも修正を経てあの形に落ち着いたのですか?

BB: あれは元々の内容で、BMWオラクルにとっても心地良くレースに参加できるよう配慮して作ったものだ。もう一度はっきり言っておくが、あの合意書はオリジナルから一度も修正されたことはない。

VS: その他に何か付け加えておくことはありませんか?

BB: いいかい、最終的に防衛艇と挑戦艇は対決しなければならない。そして、どっちが勝つにしろ、カップは勝者の物とならなければならない。もしレースの敗者が裁判所へ駆け込んで、レース結果を蒸し返すようなことをするとしたら、それは本当に馬鹿げたことだ。どっちが勝つにしろ、法廷闘争はこれで終わりにしなければならない。だから、2艇のボートは来年2月ラアス・アル・ハイマで対決しなければならないんだ。

(終わり)

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2009年10月10日 (土)

8チームが参加 - ルイヴィトン・ワールドシリーズ第1戦

ルイヴィトンのブルーノ・トルブレとチーム・ニュージーランドのグランド・ダルトンが中心となって、ACボートを使用したサーキット「ルイヴィトン・ワールドシリーズ」を立ち上げることは、先日お伝えしたとおりです。

その第1戦となるフランス・ニースでの大会は11月7~22日に開催される予定ですが、開催1ヶ月前となる10月6日、同シリーズの中核となるワールド・セーリングチーム・アソシエーション(WSTA)とルイヴィトンは、新たにイギリスのチーム・オリジンとイタリアのアズーラが同シリーズに参加することになったと発表しました。

Sail World: Louis Vuitton Trophy Nice - Two more entries announced

イギリスの誇るオリンピックゴールドメダリスト、ベン・エインズリーを擁するチーム・オリジンは、今年2月にオークランドで開催されたルイヴィトン・パシフィック・シリーズに参加したにも関わらず、当初この新しいシリーズへの参加には消極的と伝えられていました。しかし、チーム代表のサー・キース・ミルズによると、最終的にアメリカスカップ参戦を目指しているチームの将来を考えた結果、一転してWSTAに共同出資者として参画することとしたとしています。

もう一方の参加者は、イタリアのヨットクラブ・コスタ・スメラルダ(YCCS)によって新たに結成されたアズーラです。アズーラという名前は、元々アメリカが初めてカップを失った1983年ニューポートでの大会に同クラブから出場したチームが有していた由緒ある名前です。

同クラブのメンバーでもあり、ジョーフライのオーナーでもあるジョバンニ・マスペロは、当初バスコ・バスコットをリーダーとした新チームを結成し、ジョーフライとして同シリーズに参戦する意向と伝えられていました。しかし、YCCS会長リカルド・ボナデオとの協議を経て、新たにフランチェスコ・ブルーニをヘルムスとしたチームを結成し、イタリアから初めてアメリカスカップに挑戦した由緒ある「アズーラ」の名前を冠して参戦することとしたとのことです。

Sail World: Azzurra going to the Louis Vuitton Trophy in Nice

ジョーフライがアズーラとして参戦することになった結果、第1戦は以下の8チームで争われることになりました。

  1. アズーラ(イタリア)
  2. BMWオラクルレーシング(アメリカ)
  3. エミレーツ・チームニュージーランド(ニュージーランド)
  4. K-チャレンジ(フランス)
  5. スウェディッシュチャレンジ・アルテミス(スウェーデン)
  6. シナジー・ルシアン・セーリングチーム(ロシア)
  7. チームオリジン(イギリス)
  8. チーム・フレンチスピリット(フランス)

ちょっと気になるのは、当初参加を表明していたマスカルツォーネ・ラティノの名前がなくなっていることです。ビンセンツォ親分、どうしちゃったんスか?

とはいえ、大会で使用される予定であったマスカルツォーネのACボートは、当初の予定通り準備が進められているようです。

Valencia Sailing: Mascalzone Latino launches 1st boat for LV Series

一方、マスカルの2艇と並び、もう一方のペアとして使用される予定であったデサフィオ・エスパニョールの2艇(ESP-88、ESP-97)ですが、何らかの理由により使用出来なくなったようです(デサフィオは経営危機がウワサされて久しい)。その為、急遽チームオリジンの所有するACボート GBR-75 が使用されることになりました。

このGBR-75は以前当ブログでもお伝えしたとおり、当時ラッセル・クーツに率いられていたアリンギが、2003年の第31回アメリカスカップにおいて古巣ニュージーランドからカップを奪取するため建造した2艇のACボート(SUI-64、SUI-75)の内のひとつです。斉藤愛子さんのレポートによれば、SUI-75はチーム・ニュージーランドが導入した新技術「Hula(Hull Apendage)」の効果を検証するため建造されたボートであるとされています。結局SUI-75は本番レースに使用されることなく、2007年大会終了直後チームオリジンへ売却されていました。

よってGBR-75は、セール等各部がバージョンアップされているとはいえ、基本設計はACクラスとして第4世代であるバージョン4になります。その為、このGBR-75とペアを組むボートとして、BMWオラクルの所有するバージョン4のAC艇、USA-76が急遽使用されることになったとのことです。

The Independent: Britain's America's Cup challenge team step up involvement

なお大会の名称は、ルイヴィトン・ワールドシリーズからルイヴィトン・トロフィ・イン・ニースに変更されています。ISAFとワールドマッチレースツアーに配慮した結果、”ワールド”の名称を外したのかもしれません。

さて、ルイヴィトンが仕掛けた本サーキットが、どのような形で世界のセーリングファンに受け入れられるか、また来年2月に開催される”本家”アメリカスカップとどう絡んでくるか、注目されます。

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